北九州市とJESCOを取材しました(除染廃棄物の件)

 下山後、小倉に戻り、北九州市環境局をたずねました(6月12日)。市が、JESCOによる除染廃棄物処理の可能性をどうとらえているか探るためです。現れた森氏は、がれき事件の時にも会った職員で(こちらは忘れていた)、私が北九州市をこきおろしたことを覚えていました。そういえば、あの時期、山本サンはあちこちの自治体で職員を怒りまくっていたっけ…ま、気にしないでね。

 彼は、「あの記事を読んで、北九州市に除染廃棄物が来るというのは飛躍しすぎ。そういうことはありません。それが北九州市の答えです」と断言。ふ~ん、それって、内部で検討した上での、正式な組織決定かい?「いえ、検討の必要もありません」

 もちろん、その答えをそのまま受け止めるわけにはゆきません。なぜって、北九州市はもともと企業城下町、国に従うクセがあり、「市民より産業振興」を優先させてきた実績があるから。がれき焼却だってそうだったし、今も、「環境未来都市」の看板をあげて、有害物質処理事業を集積させている。また、カネミ油症事件を経験しながら、国内最大のPCB処理を行い、さらにその処理期限延長を受け入れてしまったんだから。

 その上、情報収集能力が低い。市が、PCB処理延長のことを知ったのは、環境省から正式を要請を受けた昨年10月25日で、その後、あわててヒアリングだの調査を行ったといいますが、たしか2012年には検討が始まっていたのよね。今回のJESCOの関連法改正も、3月には報道されていたのに、彼らは5月末の新聞報道の時に初めて知ったそうです。

中間貯蔵、国の特殊会社が運営 法改正で県外最終処分明記 – 47News (2014年3月26日)共同通信

東京電力福島第1原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設をめぐり、政府は26日、国の特殊会社「日本環境安全事業」(JESCO)の関連法を改正し、同社が施設の運営を担当、汚染廃棄物を30年以内に福島県外で最終処分すると明記する方針を固めた。福島側の中間貯蔵施設受け入れを前提に、今国会中にも改正案を提出する。石原環境相と根本復興相は27日、福島市で佐藤県知事らと会談し、福島側の見直し要請に応じて新たに作成した建設計画を提示する予定。中間貯蔵施設をめぐっては、双葉、大熊2町など候補地では不信感が強く、福島県は県外最終処分の法制化を要求していた

 この記事にも、最も肝心なことーー「誰が」「どこで」「どうやって」土地を手当するかーーが書かれていません。これは、土地の確保は絶対秘密で、水面下で進められているという意味です。でも、JESCOが関係する以上、「最終処分場」は東京、大阪、北九州…で書いたとおり、少なくともJESCO五事業所、あるいはその関連業者の息のかかった地域にやってくることになるでしょう。

 この後、響灘のJESCO事務所へ出かけ、企業側の本音を確かめました。最初にPCB処理の短いビデオを見せられましたが、「化学処理」だけと思っていたのに、最後の段階でやはり加熱処理していました。PCB汚染廃棄物となると、ドラム缶もろとも1400°のプラズマ溶融で処理されており、金属化合物を含む排ガスが出てくるのはまちがいありませんが、それらの測定は義務化されておらず、汚染排ガスは出しっぱなし・・・これじゃあ、湾を隔てた小倉市内の空気が怪しいはず。私もこの日、猛烈な眠気と喉痛に襲われました。

 で、JESCOはどう答えたか。「私どもは国の特殊会社ですから、法律が改正されたらそのとおりに事業を行います」。つまり、響灘で除染廃棄物を処理しろと言われれば、やる、という意味。北九州市と正反対の答えなわけです。ちなみに、PCBの処理延長についても、「市にはずいぶん前から伝えていましたよ」というので、「市は去年の10月に初めて知った、と言ってたわよ」というと、一瞬の沈黙の後、「・・・正式には伝えなかったかも」だって。…怪しい。行政抜きで外堀が埋められているような感じです。ほかの地域でも、現況を確認し、公害事業の監視役に市民を入れるよう求めてください。2014.6.15

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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