木くず処理、四億円はどこへ消えた

 前記事の訂正とつづき。まず、前記事で引用したNHK滋賀県のニュースの最初にある「…滋賀県は高島市から撤去された木くずが、前橋市にある産業廃棄物の処理施設に搬出されたことを示す文書を初めて公開しました」を、まちがって「産廃事業者の情報を公開した」と取ってしまいました。実際は、事業者名と所在地は非公開のままでした。お詫びして訂正します。NHKは滋賀県と、前橋市に配慮したようです。それは下の記事も同じで、「事業者名は非公開」とは書いていない。

汚染木くず:前橋で処理 既に市外業者に売却 滋賀県公表 /群馬
毎日新聞 2015年09月17日 地方版 http://mainichi.jp/area/gunma/news/20150917ddlk10040168000c.html
 東京電力福島第1原発事故で放射性セシウムに汚染され、滋賀県に不法投棄されていた木くずが、前橋市の産業廃棄物処理施設に運ばれ破砕処理されて
いた
ことが16日分かった。滋賀県が、県情報公開審査会の答申を受けて初めて公表した。前橋市によると、木くずは既に市外の業者に売却されたという。滋賀県は最終処分地については明らかにしていない

 汚染された木くずを巡っては、滋賀県高島市の琵琶湖岸の河川敷に放置されているのが2013年9月に発覚。東電から損害賠償金を受け取るために福島県の製材業者から木くずを引き取り、約310立方メートル分を許可なく捨てたとして、東京都の男性が廃棄物処理法違反罪で執行猶予付き有罪判決を受け
た。
放置された木くずは14年2月までに男性が高島市から撤去したが、滋賀県は搬出先を明らかにしてこなかった。前橋市の産廃処理施設で破砕処理したことも市側に12月まで知らせていなかった。(中略)滋賀県の住民が、木くずの搬出先の産廃事業者に事業許可を出した自治体名を公開するよう請求。県情報公開審査会が今年8月に公開するよう答申したことを受け、県が16日、前橋市だと明らかにした。【石川勝義】

 市民は「自治体名」の開示だけを求めたのだから事業者名も所在地も非公開でいい、というわけです。一方、市民は「全容を明らかにしたい」と言っていて、単に自治体名だけを求めたとは思えないから、どこかでごまかされたのかも。情報公開は市民が「事実」に近づくための大事な手続き。ハウツーを知ってだまされないようにしないと、国がすすめている「汚染の拡散」を止められません。
 一方、木くずを持ち込まれた前橋市の方も、同じように「業者保護」を最優先。

汚染木くず、前橋で処理 滋賀から持ち込み
2015年9月17日18時41http://www.chunichi.co.jp/s/article/2015091701001560.html
 滋賀県高島市の河川敷に放射性セシウムに汚染された木くずが不法投棄された事件で、前橋市は17日、東京のコンサルタント会社が2013年末から
昨年2月の間、河川敷から撤去した木くず約310立方メートルを前橋市内の産業廃棄物中間処理業者に持ち込み、処理されたと発表した。処理された木くずは市外の業者に売却されたが、市は「風評被害につながる」として売却先を明らかにしなかった。市は昨年12月に滋賀県からの情報提供を受けて業者を立ち入り検査したが、違法性はなく、施設内の空間放射線量も問題はなかったという。市は「業者間で適正に処理されたと認識している」と話した

 前橋市は「群馬県前橋市|木くずのリサイクルに、ご協力ください。」と呼びかけているほど木くずリサイクルに熱心。その指導の下で、汚染木くずが濃度の低いものと混ぜ合わされ、粉砕されて、リサイクル商品(木材チップなど)として売却されたのでしょう。その結果が「違法性もなく、線量も低かった」となるのは当たり前。住民の安全よりも業者と事業を優先するというのはすでに放射脳。
 腹が立つのは、有罪判決を受けたコンサル社長が、たかだか100万円の罰金を払って、東電から得た「賠償金」約4億円(の利益)は没収もされなかったということです。その4億円がどこに流れて、どこに消えたのか、メディアは追っていない。

東電、コンサルに4億円支払いか 汚染木くず処理、賠償金

2014/04/04 12:17
  http://www.47news.jp/CN/201404/CN2014040401001464.html
滋賀県高島市の河川敷に放射性セシウムに汚染された木くずが大量に不法投棄された問題で、関与した東京のコンサルタント会社社長に、東京電力が処理費用などとして賠償金計約4億円を支払ったとみられることが4日、県警捜査関係者への取材で分かった。別の関係者によると、木くずは福島県本宮市の製材業者が排出。コンサル社長は、この業者から木くずの処理と東電に対する賠償請求手続きの代行を請け負っていた。東電によると、賠償金は、申請書類をもとに支払いの適否を判断するが、広報担当者は「個別の案件については回答できない」と話している。【共同通信】

 たかだか一社の木くずに処理費四億円? この巨額の賠償金は異常で、とても合理的とは考えられません。なので、根底には「汚染の全国拡散」に向けた、政府・東電・産業界の共同謀議があったのでは、というのが山本の考えです。そして、有罪判決を出した大津地裁もそのことを指摘していました。

汚染木くずを不法投棄、コンサル社長に有罪判決 大津地裁
2014.12.2 http://www.sankei.com/west/news/141202/wst1412020056-n1.html
 
 滋賀県高島市の琵琶湖近くの河川敷に放射性物質に汚染された木くずが不法投棄された事件で、廃棄物処理法違反罪などに問われたコンサルタント会社
社長、田中良拓被告(42)=東京都中野区=の判決公判が2日、大津地裁で開かれた。赤坂宏一裁判官は懲役1年6月、保護観察付き執行猶予3年、罰金100万円(求刑懲役2年、罰金100万円)を言い渡した。赤坂裁判官は、判決理由で「放射性物質を各地に拡散させて利益を得ており、復興事業への不信を招いた」と指摘。その上で「反省の気持ちが弱い。保護観察下で社会貢献活動をさせ、被害回復に努めさせるべきだ」とした。判決によると、田中被告は昨年3~4月、福島県内から東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された木くず約310立方メートルを持ち込み、別の業者に委託して高島市安曇川町の河川敷に捨てた。
検察側は公判で、田中被告が、放射性物質に汚染された木くずを処理すると福島県の製材業者に持ちかけ、東電から処理費用約4億円を受領しながら除染作業せ
ず、約1億円の利益を上げたと批判。また、現在も関東や九州の自己所有の土地などに木くずを放置しているとも指摘していた。

 判決文は見てないけど、そこにはもちろん「共同謀議」「意図的汚染拡散」とは書いてないでしょう。でも、滋賀県の木くず事件はたまたま問題化しただけで(環境保護に敏感な人々がいた、という意味です)、おそらく氷山の一角。汚染はこうして人為的にも拡大されており、行政はそれを止めるどころか情報を隠蔽し続けていることを知り、各地で観察と監視を強めなければ。
鎌倉は朝から大雨警報、津波注意報が出ていましたが、ようやく雨が止みました。2015.9.18

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/