北九州市の漁協長射殺事件、その背後は

 年も押し迫って起きた北九州市の漁協長射殺事件。
 実はこの方、北九州市のがれき受け入れの際、さる市民団体が「漁協が反対しているから、大丈夫(がれき受け入れはできない」と宣伝されていた人でした。「漁協の反対」とは、つまり「漁業権」を売らないということ。漁業権は、小さな事業でも数億~数十億が飛び交う、利権のもとです。でも、北九州市はその後、すんなりがれきうけいれを実行。で、調べてみると、漁協は反対などしていませんでした。また、さる市民団体は、この漁協との接触を抑えていたという事実がありました…ウラで話がついていたわけです。これこそ北九州市の特徴。


<漁協組合長射殺>背後から上半身に3発 強い殺意で襲撃か

毎日新聞 12月21日(土)15時1分配信
上野さんが倒れていた現場付近を調べる捜査員=北九州市若松区で2013年12月20日午前11時5分、本社ヘリから
 北九州市で市漁業協同組合長の上野忠義さん(70)が射殺された事件で、上野さんが背後から銃撃されていたことが、捜査関係者への取材で分かった。上半身を中心に少なくとも3発撃たれており、福岡県警捜査本部は、襲撃犯が強い殺意を持って後ろから銃撃したとみて、暴力団の関与を念頭に調べている。
【暴力団関係者の犯行?】組合長は過去に2度発砲被害 兄は組員の射殺犠牲
 事件は20日午前7時55分ごろ、北九州市若松区畠田2の路上で発生。上野さんは自宅から約80メートル離れたゴミ集積所にゴミを出した直後に襲われた。胸部や左腕を撃たれていたという。直後に軽自動車が走り去るのが目撃されている。上野さんは1997年と2007年に自宅や親族宅が複数回銃撃され、98年には元脇之浦漁協組合長の実兄(当時70歳)が指定暴力団工藤会(本部・北九州市)系組長らに射殺されている。県警は上野さんを保護対象者にはしていなかったが、上野さん宅周辺をパトロールしていた。
 付近の住民によると、事件当日も午前5時と7時ごろにパトカーが上野さん宅周辺を見回っていたという。こうした状況から、捜査本部は、犯人が県警の警戒状況と上野さんの行動を熟知した上で待ち伏せしていた可能性が高いとみている。福岡県内では暴力団の関与が疑われる民間人への襲撃事件が続発している。11年11月には北九州市で建設会社役員の男性が撃たれて死亡。昨年1月には中間市の路上で、別の建設会社社長の男性が撃たれて重傷を負った、

 とにかく暴力団抗争事件が多い土地柄。警察車両が上野氏宅を毎日、何回かパトロールしていたのは、実兄の梶原国弘(当時脇之浦漁協組合長)が射殺された事件があったから。

 「…98年には元脇之浦漁協組合長の実兄(当時70歳)が、指定暴力団工藤会(本部・北九州市)系組長らに射殺される事件も起きた。組長らは無期懲役刑などが確定しており、裁判で動機について「港湾事業への介入を被害者に断られたことへの報復だった」と認定されている」
http://news.cybozu.net/news/national/20131221k0000m040125000c.html

 資料を読んでないので、この判決が妥当だったかどうかは知りませんが、「『~報復だった』と認定されている」とは、刑事事件としてはかなり違和感があります。それに、組長らが無期懲役となった以上、組が解散しない限り、いつ「お礼参り」が起きても不思議ではありません。事実、上野氏一家は何回も脅迫に遭っていたのに、警察は彼らを保護対象とせず、事件後ようやく、福岡県警は140人態勢の捜査本部を設置、26日には工藤組を捜査しています。
 マスコミもあまり背景を掘り下げたくないようですが、この射殺事件の裏には、公共事業に伴う巨額の漁業補償がからんでいるのは間違いありません。たとえば、2012年、反がれき問題の裏側ではこういう↓事業が進められていました。

北九州市、環境・エネ産業用地を新たに45ヘクタール整備-14年度末から分譲
掲載日 2012年07月30日 06時00分 
http://www.nikkan.co.jp/dennavi/news/nkx0520120730qtkh.html
 北九州市は環境・エネルギー分野に特化した産業用地を、2014年度末から分譲する。同市若松区の響灘臨海工業団地内約45ヘクタールを13年度中に整備する。同工業団地はすでに「グリーンエネルギーポートひびき」として、風力発電事業者向けに分譲を進めているが、残り4区画(約20ヘクタール)となっている。7月からスタートした再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度を機に、受け皿を拡大する。


 


整備するのはエヌエスウインドパワーひびき(北九州市若松区)の風力発電機が並ぶ、響灘臨海工業団地東地区。同地区には今秋、国内最大級のビオトープ(野生生物が生活する空間)が開業する。また将来は船舶を接岸できる岸壁を整備する計画もある。
分譲価格は一平方メートル当たり2万円超を予定。隣接するひびきコンテナターミナルを利用すれば、大型資材の搬入出や製品輸出も可能な点を訴求して、誘致を進める。風力発電以外の再生可能エネルギー産業の進出も受け付ける。響灘地区は玄界灘に面し、コンテナターミナルも持つ好立地を生かして風力発電産業の誘致に力を入れている。同地区の平均風速は地上50メートルで毎秒6・6メートルと、同発電に適している。すでに新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)とJパワーによる国内初の洋上風況観測タワーが設置されており、10月から実証研究が予定されるなど市内外から注目を集めている。

 この響灘臨海工業団地の写真はこちら↓

http://www.kigyorichi.pref.fukuoka.lg.jp/estates/2

 このサイトで、北橋北九州市長はこう述べています。
 
 

 平成23年12月には、「グリーンアジア国際戦略総合特区」と「北九州市環境未来都市」にダブル選定されました。「環境とアジア」が経済を牽引する活気ある緑の産業都市を目指し、アジアの活力を取り込みながら「緑の成長戦略」を積極的に推進していきます。
 北九州市は、多様な立地ニーズに応えられる産業用地と充実した各種立地優遇制度を用意し、企業の皆さまの進出を全力で支援するとともに、進出後も従業員や家族の皆さまに喜ばれるまちづくりに取り組んでいきます。

 どうでしょう。がれき受け入れは、巨大な公共事業とバーターだったことが浮かびあがってきませんか? 
 ちなみに、グリーンアジア国際戦略総合特区とは、総合特区法にもとづく国策事業地域。さまざまな規制緩和と優遇税制、補助金で、企業をテコ入れする地域のこと。また、「環境未来都市」の方も、国の「成長戦略」(平成22年6月閣議決定)に位置付けられた、21の国家戦略プロジェクトの一つ。
 「国が限られた特定の都市を環境未来都市として選定し、我が国及び世界が直面する地球温暖化、資源・エネルギーといった環境問題に加え、人口減少や超高齢化など社会的な課題に、他都市に先駆けて取り組み、成功事例を国内外に普及展開することで、需要拡大、雇用創出等を実現し、究極的には、我が国全体の持続可能な経済社会の発展の実現を目指すものです」
http://www.city.kitakyushu.lg.jp/soumu/02000009.html

 両方とも事業主体は福岡県、福岡市、北九州市。事業内容は「環境」主体なので、山のような実験施設が建てられ、実験的事業が行われるわけ(上記の再生エネルギー事業含む)。放射能低減施設もそのうち出てくるでしょうねえ。今回の事件は、この巨大な事業に群がる連中の利害が衝突するなかで起きたと考えられます。
 
 

 それにしても漁業権。
 福島県や石川県に原発が集中しているのは、これらの地域の漁協がほとんど漁業権を売り渡したからなんですけどね(反対する漁協は追い出され、つぶされた)。今なお、「早く漁をしたい」なんて言ってるのは、そういう人たちなのです。2013.12.27

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/