「最高学府」の「有名教授」は研究不正の常習犯でした。しかも、「実際には行われていない架空の実験データ」をもとにグラフを作っていたという悪質さ。はっきりいって「詐欺」です。ところが、NHKの報道は、なぜか不正認定された渡辺教授へ同情的なので、記事の段落を入れ替え、一部省略するなどして、問題の「ありか」をさぐってみました。
東大教授の論文 大学がねつ造と改ざんの不正認定
8月1日 17時04分http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170801/k10011083291000.html?utm_int=all_side_ranking-social_002
国内有数の分子生物学の研究者である東京大学の教授らが、国際的な科学雑誌、ネイチャーなどに発表した5本の論文について、大学は実験データのねつ造などの研究不正があったとする調査結果を公表しました。教授は「各実験から得られる結論を覆えそうとする意図で行ったものではないが、深く反省します」とコメントしています。
東京大学は所属する教授が発表した論文に不自然な点があるとする匿名の告発を受けて調査を行った結果、分子細胞生物学研究所の渡邊嘉典教授らがおととしまでの8年間に、国際的な科学雑誌、ネイチャーやサイエンスなどに発表した5本の論文について、画像やグラフにねつ造と改ざんの研究不正があったとする調査結果を公表しました。5本の論文では、実際には行われていない架空の実験データを基にグラフが作られていたほか、比較する2枚の画像に差が生まれるように加工ソフトを使って色合いや明るさを変えるなどしていて、不正とされたグラフや画像は合わせて16あったとしています。大学はこうした不正行為は渡邊教授と当時の助教の合わせて2人が行ったと認定しました。大学は「渡邊教授の研究室では不適切な画像の加工などが常態化していた」と指摘し、誤った教育を行った渡邊教授の責任は重いとしています。大学によりますと、不正が認定された5本の論文に関係する公的な研究費は、14億8000万円余りに上っていて、今後、大学は返還額について文部科学省などと協議したいとしています。
裏づけもない架空データをもとに国際的な学会誌に投稿するという厚顔に唖然とします。しかもこの人、「国際的な基準では不正にあたらない」なんて開き直っていて(渡辺教授「国際基準では不正にあたらぬ」 論文問題:朝日新聞デジタル)、ちっとも悪いなんて考えていない。・・・大学入試でカンニングがばれると、合格も取り消されるし、入学後なら追放されます。不正行為をするような者に学ぶ資格はないと考えられているからです。ところが、これらの不正行為の常習センセイたちは、無から有を生み出そうが、白を黒といおうが、誰にもとがめられずやりたい放題というのだから恐ろしい。細胞生物学なんていうと、創薬や医療視に直結するから、これらの不正研究が医療や薬事に反映されているとしたら、薬害や医原病が起きるのも、その薬害や医療過誤の被害の訴えが頭から否定されるのもあたりまえ。また、東大は5本の論文を不正認定していますが、ちょうど一年前に出された告発は、分子子生物学研究所でだけではなく、医学部研究所の医師ら計22本の論文もやりだまにあげていました。しかしこちらは「シロ」認定。
東京大学では渡邊教授が関わったほかの論文についても不正がないか調査を行ったうえで処分を検討する方針です。一方、同時に匿名で告発されていた東京大学医学部の5人の教授について、大学は不正はなかったとしています。)
「シロ」に至った経過は不明ですが、そこになんらかの「政治的配慮」が働いたのでしょう。なんてったって、「ドル箱」である製薬・医療機器メーカーに直結する医学部系の研究はアンタッチャブル。これまでの不正疑惑も、多くがもみ消されてきたようで、ここ数年の「事件」だけでもこんなに↓ある!!
最近の東大での研究不正
東京大学ではここ数年、論文のデータのねつ造や改ざんなどの研究不正や、臨床研究をめぐる倫理上の問題などが相次いで発覚しています。このうち、東京大学分子細胞生物学研究所では3年前、今回とは別の研究グループが33本の論文でねつ造と改ざんの不正を行ったと認定され、元教授のほか、当時の准教授や研究員の学生ら合わせて11人が不正に関わったと認定されています。
また同じ3年前には東京大学医学部が関わる臨床研究で、白血病の薬の研究に製薬会社の社員が重要なデータ解析に関与するなど研究の客観性が疑われる事態が発覚したほか、アルツハイマー病の診断のための臨床研究でおよそ600人の患者から血液などを採取したものの、研究態勢やデータの取り扱いが不十分で臨床研究を取りまとめることが一時できなくなるなどの不適切な実態が明らかになりました。このほか、6年前と7年前には社会科学研究所の当時の助教授と工学系研究科の当時の助教がそれぞれ発表した複数の論文にほかの人の論文の盗用が見つかっています。東京大学では研究不正や倫理上の問題が相次いで発覚したため、3年前に不正防止対策の実施などを行う研究倫理の専門部署を設け、実験データを保存したり論文のデータをチェックしたりする体制を整備するなどの対策を進めてきました。しかし今回、不正が指摘された論文の中にはこうした対策が取られた後に発表された論文も含まれていて、東京大学の研究不正への対応が十分だったのかについても改めて問われる事態になっています。
これだっておそらく氷山の一角でしょう。だって、不正が常習化していたら、その世界にどっぶり使っている人たちは決して気づかない。告発があっても。批判されても、何が悪いのかわからない。そもそも医薬産業界とつるんだ学界に「倫理観」なんてないんだから。そして、「最高学府の腐敗」は、必ずほかの研究教育機関にも広がります。研究不正って進行を止められない悪性のがんだからね。
研究不正に詳しい専門家「非常に深刻な事態」
研究不正の問題に詳しい大阪大学の中村征樹准教授は「研究不正の問題は東京大学だけではなく、さまざまな大学で起きてきたが、分子細胞生物学研究所のような研究に重きを置いた施設でも不正の問題が相次いで起きるというのは非常に深刻な事態だ」と指摘しました。そのうえで、「研究の現場では、これまで不正の問題が取り上げられても、ひと事として受け止めてきた実態があるのではないか。特に研究成果が求められるプレッシャーを最も感じているのは、研究を重視してきた東京大学などで、研究の中でこれぐらいは許されるだろうという考え方が、時間の経過とともに世間からだんだんとずれ、不正に至る『逸脱の常態化』と呼ばれる現象が起きているのだと思う」と話しています。また、不正行為を教授みずから行ったと大学が認定したことについては、「これまでも研究不正の再発防止策は行われてきたが、どうしても若手の研究者や学生を対象とした倫理教育などが中心で、シニア世代の研究者への対策は形式的なものだったと言える。また、研究不正と研究室の環境は密接に関係していると言われ、学生や若手の研究者も、教授と対等に意見が言える風通しのよい研究環境が作れていたかも焦点の1つだ」と指摘しています。そのうえで、海外では研究環境の改善に向けて、大学が組織ぐるみで対策を行っているとして、研究室任せにせず研究環境がどういった状況になっているかや、研究者たちがどのようなことを問題だと感じているのかを大学が調査し、組織全体で対応していくことが研究不正の芽を摘むことにつながるとしています
どれだけ「組織全体で」対応しても改善されないって。日本の悪しき学閥をすべて解体してやりなおさなきゃね。
なお、告発文↓は一読の価値があります。2017.8.7
http://static.ow.ly/docs/%E5%91%8A%E7%99%BA%E6%96%87%EF%BC%91_5cvq.pdf