三重、愛知のワクチン勉強会から戻りました。
今回は、とても印象的なできごとがありました。
講演の中で、たまたまロタウイルスワクチンのことを取り上げ、「接種させた人はいますか?」と聞いたのです。
私の勉強会に来る方の多くは、子どもにワクチンを受けさせていないか、あまり受けさせていない人ばかり。それにロタワクチンは任意接種なので、おそらく「Yes」の答はないと思っていました。
ママが気づいたワクチン副作用
そしたら、一人のママがおずおずと手をあげました。「子どもが四ヶ月の時、受けました」。
で、「何も副作用は起きなかった? 腸重責とか」と聞きました。たぶん、何事もなかったのではないかと思って聞いたのですが、ママの答は「ありました。乳糖不耐症でした」。
ちょっと驚き。ロタワクチンで腸重積を起こす事例が多いことは知っていましたが、乳糖不耐症といえば大人の間でよく聞く「牛乳苦手組」では? なぜ母乳育児の赤ちゃんが?
この赤ちゃんはワクチン接種後、ずいぶん長いこと下痢が続いたのですが、病名も原因も不明。当時のママはワクチンによる副作用など思いもつかず、自分で調べているうちに、 授乳後に酸っぱいにおいの水様の下痢をくりかえすことから、これは「乳糖不耐症」に違いないと思い至ったのです。さらに、4ヶ月までは母乳でなんともなかったことから、ロタワクチンが原因ではないかと思い当たり、この勉強会に来たとのことでした。・・・なんと聡明なママでしょう!
乳糖不耐症とは
ところで「乳糖不耐症」とは何か。ひとことで言うと、母乳や牛乳などに含まれる栄養素(乳糖=ラクトース)が分解できないために起こる胃腸病です。大腸に消化されずに残ったミルクが腸内細菌の作用で発酵して、ガスやゲップが出、腹痛、下痢、吐き気、嘔吐などの症状が出てくるという、大人にとってはつらい症状。でも、赤ちゃんにとっては、唯一の食糧であるミルクが分解できないため、死活問題。下痢やひどいオムツかぶれ、腹痛だけでなく、栄養不足から十分に成長できず、栄養を補う必要も出てきます。
その原因として医学界があげているのは、小腸粘膜の乳糖分解酵素=ラクターゼの先天的欠損=遺伝=や、ウイルス・細菌による腸炎後の後遺症ですが、「西洋人には少ない」という論も含めて、どうも違うような気がする。
添付文書に明記
いずれにしても初めて知ったので、すぐにロタテック(MSD)の添付文書https://medley.life/medicine/item/631301AS1024/docsを開いてみると、「ラクトース不耐症」とはっきり書いてありました。腸重積症もね。
1.重大な副反応
アナフィラキシー(頻度不明):アナフィラキシー(発疹、舌腫脹等)が現れることがあるので、接種後は観察を十分に行い、異常が認められた場合には適切な処置を行う。
2.その他の副反応
1).胃腸障害:(頻度不明)腸重積症、(5%以上)下痢、(0.5~5%未満)嘔吐、便秘。
2).全身障害及び投与局所様態:(0.5~5%未満)発熱。
3).感染症及び寄生虫症:(頻度不明)中耳炎、(0.5~5%未満)胃腸炎、鼻咽頭炎。
4).代謝及び栄養障害:(0.5~5%未満)ラクトース不耐性。
5).呼吸器、胸郭及び縦隔障害:(頻度不明)気管支痙攣。
6).皮膚及び皮下組織障害:(頻度不明)蕁麻疹、血管浮腫。
なんと、「胃腸の病気を予防する」はずのロタウイルスワクチンが、胃腸障害、栄養障害などおなかの病気を引き起こしすとは。これは向精神薬が精神症状を引き起こすのと同じじゃないの。なお、もう一つのロタウイルスワクチン、ロタリックス(GSK)の添付文書には乳糖不耐症はあげてありません。
超健康体でなければ受けられない
さらに驚いたのが「使用上の注意」です。以下のような注意書きがずらずら。ちょっとでも健康に不安がある赤ちゃんは避けておくべきワクチンですね(ロタに限りませんが)。一応掲載しておきますが、長いので、短いバージョンも用意してありました→>>ロタテック内用液の注意事項について簡潔にみる。マーカー山本。
使用上の注意
被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合には、接種を行ってはならない。
1.明らかな発熱を呈している者。
2.重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者。
3.本剤の成分によって過敏症を呈したことがある者。また、本剤接種後に過敏症が疑われる症状が発現した者には、その後の本剤接種を行ってはならない。
4.腸重積症の既往のある者。
5.腸重積症発症を高める可能性のある未治療先天性消化管障害(メッケル憩室等)を有する者。
6.重症複合型免疫不全(SCID)を有する者[外国の市販後において、本剤の接種後にSCIDと診断された乳児で、重度下痢及び持続的なワクチンウイルス株排出を伴う胃腸炎が報告されている]。
7.前記に掲げる者のほか、予防接種を行うことが不適当な状態にある者。
(接種要注意者(接種の判断を行うに際し、注意を要する者))
被接種者が次のいずれかに該当すると認められる場合は、健康状態及び体質を勘案し、診察及び接種適否の判定を慎重に行い、予防接種の必要性、副反応及び有用性について十分な説明を行い、同意を確実に得た上で、注意して接種する。
1.心臓血管系疾患、腎臓疾患、肝臓疾患、血液疾患、発育障害等の基礎疾患を有する者。
2.予防接種で接種後2日以内に発熱のみられた者及び全身性発疹等のアレルギーを疑う症状を呈したことがある者。
3.過去に痙攣の既往のある者。
4.免疫機能に異常がある疾患を有する者及びその恐れがある者、免疫抑制を来す治療中の者、近親者に先天性免疫不全症の者がいる者。
5.胃腸障害(活動性胃腸疾患、慢性下痢)のある者[使用経験がない]。
(重要な基本的注意)
1.本剤は「予防接種実施規則」及び「定期接種実施要領」に準拠して使用する。
2.被接種者について、接種前に必ず問診、検温及び診察(視診、聴診等)によって健康状態を調べる。
3.被接種者の保護者に、被接種者に関する次の注意点を事前に知らせる。
1).接種当日は過激な運動は避ける。
2).接種後は被接種者の健康状態を十分に観察し、体調の変化や異常な症状が認められた場合は、速やかに医師の診察を受ける。
4.被接種者の保護者に、本剤の接種後に腸重積症を示唆する症状(腹痛、反復性の嘔吐、血便排泄、腹部膨満感、高熱)を呈した場合には速やかに医師の診察を受けるよう事前に知らせる[2つの外国の大規模製造販売後調査では、本剤接種後7日間又は30日間に本剤と腸重積症の関連は認められなかったが、他の外国の製造販売後調査において、本剤の初回接種後、主に7日間又は21日間に腸重積症の発現リスクのわずかな増加が報告されている]。
5.本剤の接種が開始される生後6週時点においては免疫不全症の診断は困難であり、免疫不全者に対する本剤の有効性及び安全性の臨床データはないので、免疫機能に異常がある疾患を有する者及びその恐れがある者、免疫抑制を来す治療中の者、近親者に先天性免疫不全症の者がいる者に本剤を接種する場合は、免疫不全症を疑わせる症状の有無に十分注意し、慎重に接種する。
6.本剤と他のロタウイルスワクチンとの互換性に関する安全性、有効性、免疫原性のデータはない。
(小児等への接種)
生後6週未満又は生後32週を超える乳児に対する安全性及び有効性は確立されていない。
(接種時の注意)
容器(ラテックスフリーチューブ)から直接経口接種する。注射による接種は行ってはならない。【ロタテック内用液の使用方法】に従い本剤の接種を行う。
1.接種前及び接種後に母乳を含む固形食及び流動食に関する制限はない。
2.重度急性発熱性疾患を有する者は接種を延期する(但し、軽度の発熱及び軽度の上気道感染の場合には接種を延期する必要はない)。
3.他のワクチンや溶液と混合して接種しない。再調製又は希釈して接種しない。
4.接種直後に本剤を吐き出した場合は、その回の追加接種は行わない[臨床試験において検討が行われていない]。
1.外国の市販後において、ワクチンウイルスのワクチン非接種者への感染が報告されているので、次に示した免疫不全を有する者と、密接な接触がある者に本剤を接種する際には注意する:悪性腫瘍又は免疫障害のある者、免疫抑制療法を受けている者(なお、臨床試験において、免疫不全を有する者と一緒に住む乳児に対して本剤を接種した経験はない)。
2.ワクチン接種を受けた者と接触した際には手洗い等を実施し注意する(例:おむつ交換後の手洗い等)[外国臨床試験では、初回接種後に本剤接種者の8.9%で糞便中へのワクチンウイルスの排出が認められ、ほとんどが接種1週間以内に認められ、1例(0.3%)のみ3回接種後にワクチンウイルスの排出が認められた。初回接種後1週間以内に軽度のワクチンウイルス排出を伴う胃腸炎症状が認められる可能性がある]。
3.本剤の腸重積症のリスクが外国で実施された大規模臨床試験(006試験:本剤群34,837例、プラセボ群34,788例)において検討されたが、プラセボ群と比較して腸重積症のリスクの増加は認められなかった。本試験では、接種後42日間に本剤群で6例、プラセボ群で5例[相対リスク(95%信頼区間):1.6(0.4、6.4)]の腸重積症が発現した。初回接種後365日間では、本剤群で13例、プラセボ群で15例[相対リスク(95%信頼区間):0.9(0.4、1.9)]の腸重積症が発現した。本剤接種後のいずれの期間においても、腸重積症の発現が著しく増加することはなかった。また、外国の大規模な医療費請求データベースを用いた本剤のプロスペクティブ市販後安全性観察研究においても、統計学的に有意な腸重積症の発症リスクの増加はなかった。本試験では、接種後30日間に本剤群で6例、他の既承認小児用ワクチン(DTaP:ジフテリアトキソイド、破傷風トキソイド及び沈降精製百日咳ワクチン)群で5例[相対リスク(95%信頼区間):0.8(0.22、3.52)]の腸重積症が発現した。
ロタウイルスは常在菌(ウイルス)の一種。人間の歴史で「ロタ」による疾病が問題になったことはありません。ほうっておいても子供たちはいつのまにかそれに感染し(症状が出ない子がほとんど)、知らないうちにそれへの抗体を獲得してゆくものです。Hibなどと同じ。ところがそのワクチンを選ぶとなると、生後32週までに子どもが上のような注意に該当するかどうかさえまだはっきりしないから、これは一種の賭けですね。
最大の問題は、赤ちゃんの症状がワクチンの副作用であることを、接種した医者本人が判断できないことが多いということ。このママの主治医も診断さえつかず、当然、副作用報告はあげてありません。おそらく、日本中にこんな経験をしたママたちはごまんといるのでしょうね。2017.4.4