昨日の記事に訂正があります。「遺伝子組み換え蚊の放出試験」は、直接「ワクチン開発」に関係していませんでした。訂正してお詫びします。
英文記事はどれもOXYTECとあったので、そのスペルで企業を検索したら、すぐに出てきたのがOxytec Pharmaceuticals – Supplier of Pharma PCD …、記事にはイギリスとあるのに、なぜインドの製薬メーカーなのか、と思いましたが、イギリス・インドは歴史的にも経済的にも強いつながりがあるので、子会社か関連会社だと思ったのです。でも、どうもおかしい。「蚊」のことが書いてない。で、今日改めて検索したら、ようやくOxitec: Innovative Insect Controlにゆきあたりました。普通、スペルが一個違っても、関連キーワードを入れると自動検索してくれるのに、今回は迷子になってしまいました。
このOxitecは「害虫駆除」、つまりペストコントロールの会社です。売り物は遺伝子組み換え技術で、HPの最初のページに「デング熱」に関する動画が出てきます。
デング熱退治のコンセプトは、いわばオスの蚊に「不妊ワクチン」を与えること。オスの蚊に、ウオルバキア(Wolbachia )という特殊なバクテリアを組み込んで自然界に放つと、交尾したメスは卵を産めなくなるため、蚊は自然に少なくなるという理論。ただし、蚊の人口はーー特別に培養した蚊を何百万匹も放つのでーー増えます。それに、このバクテリア蚊が、人間を含めた自然界にどのような影響をもたらすかまったく不明であり、いちかばちかの「実験」としか言えません。何かに似ていると思ったら、「子宮頸がんワクチン」のコンセプトとそっくり。
もちろん、このような危険な実験を、各国の環境活動家が黙って見ていたわけではなく、これまで、このプロジェクトの予定地となったアメリカ南部のキーウェストでも、マレーシア、ベトナム、ブラジルなどでも、強硬な反対がありました。しかし、オーストラリアでは過去3年間、フィールドスタディが続いているし、各地でミニ・スタディが行われているようです。そのなかで、ベトナムの人口3200人の小村を対象に行われた試験はたいしてうまくゆかず、いったんは80%にまで達したGM蚊は、その後、65%まで落ち込んでいます。http://www.scidev.net/asia-pacific/health/news/setback-for-dengue-blocking-mosquito-trial-in-vietnam.html
それにもかかわらず、研究者(オーストラリア・モナシュ大学のオニール教授)は、「バクテリアの影響で死んだのだろう」と気にもとめず、「今度は違う種類のバクテリアで試す」と主張しているそうで、マッド・サイエンティストは恐ろしい。自然界の蚊はバクテリアを持っていても、これほど大量に死に絶えることはないとのことですが、それでも、今年はブラジル、コロンビア、インドネシアなどで実験が行われるとのこと。
Oxitecが強気なのは強力な後押しがあるから。
まず、人口調節機関・WHOが「デング熱撲滅」を打ち出しています。次に、エボラウイルスの試薬・ワクチン開発でも名前が出ていたウェルカム・トラスト。ここは、Oxitecのために動画まで作ってあげたという力の入れよう。http://www.oxitec.com/controlling-dengue-fever-improving-lives-a-film-by-the-wellcome-trust/
そして、かのゲイツおじさん。彼は自分のサイトで「世界でもっとも危険な動物」として蚊をとりあげていますが、開くと蚊の拡大写真にぎょっとするかも。蚊はまるで悪意のエイリアンのように仕立てあげられており、何としてでも撲滅しなきゃ、という気にさせられますが、蚊だって生態系の一部。これほどまでに悪者扱いにする必要があるの?http://www.gatesnotes.com/Health/Most-Lethal-Animal-Mosquito-Week、
いずれにしてもワクチンの強力な推進派が顔をそろえているんだから、OXITECも、デング熱ワクチンに間接的には関与していると言っていいのかも。あ~こわ。2014.9.7