クジラのほんとのメッセージ

 素晴らしい宣言だと思いますか? でも、今の行政は市民のためではなく、資本と企業のために仕事をしていることを知れば、上の「宣言」が、プラスチックや容器製造業には迷惑をかけないよ、との意味であることに気づくでしょう。

 クジラのほんとのメッセージは「プラ製造は止めて」のはず。

 ある物質が環境を汚染することがわかっている場合、汚染をなくす最善の方法は、その物質の生産・製造を止めることです。でも、神奈川県がやろうとしているのは「利用廃止」と「回収」で、問題の解決になりはしない。それどころか、プラごみゼロの公共事業を行うとなれば、回収やリサイクル事業には多額の補助金が支払われることなり、プラ製造はかえって勢いづくでしょう。市民の方もこの「宣言」に安心して、プラ製品を買うことに何のためらいもなくなるでしょう。同じことは以前も起きました。容リ法の施行によって、小型ワンウェイのペットボトルが激増し、結局ペットボトルを含むプラ製品の焼却処理が当たり前になったのです(一部リサイクル。以前はそのまま埋め立てていた)。

 しかも、これはグローバルアジェンダにもとづく国策です。それを示すのが、上記「宣言」一行目の「SDGs推進に向けて」という言葉。なお、SDGsとはSustainable Development Goals の短縮形。SDGsについては、内閣府地方創生推進事務局が説明しています。

環境モデル都市・環境未来都市・SDGs未来都市 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kankyo/index.html

 世界的に進む都市化を見据え、持続可能な経済社会システムを実現する都市・地域づくりを目指す「環境未来都市」構想を進めています。環境モデル都市は、持続可能な低炭素社会の実現に向け高い目標を掲げて先駆的な取組にチャレンジする都市で、目指すべき低炭素社会の姿を具体的に示し、「環境未来都市」構想の基盤を支えています。環境未来都市は、環境や高齢化など人類共通の課題に対応し、環境、社会、経済の三つの価値を創造することで「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」の実現を目指す、先導的プロジェクトに取り組んでいる都市・地域です…(以下略)。

 2030年を期限にこのアジェンダを実現するために、17の目標及び細分化された169のターゲットを決め、地方自治体をそこに向けて突っ走らせるというのがグローバルエリートの計画です。(地方創生に向けた自治体SDGs推進事業について(PDF形式:10,683KB別ウインドウで開きますこれまで完全に「地方自治」の分野だった町づくりなども今やグローバルターゲットの構図の中に取り込まれているのは、すべてが企業主導(=グローバル資本)の事業として展開されるため。そのために「地方創生SDGs官民連携プラットフォーム」が創設されていますが、その事務局は㈱三菱総合研究所地方創生事業本部。もちろん、青写真を描いたのも企業でしょう。

 市民がまったく知らないうちに、こうしてすべての行政の事業は、実質的には企業に乗っ取られ、企業の利益のために実施されています。上の「プラごみゼロ」の背景にあるのも企業の都合。それまでプラ廃棄物を一手に引き受けていた中国がプラごみ輸入を禁止し、その他のアジア各国もそれにならったため、日本のプラごみの行き場がなくなった。一方、マイクロプラスチックはそれ以前から世界的に規制を求める声が高まっており、日本に向ける目も厳しくなっていた。そこで日本の製造業は、このSDGsの枠組みに乗り、「プラ製造に打撃を与えず」「プラごみを合法的に処理する(=焼却し、バイオ発電などと称する)」という一挙両得作戦を思いついたわけ。アジェンダ2030は極めて危険な未来図です。2018.9.21 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/