政府によると、これまでに処理された震災がれきは117000トン! これは400トン/日の焼却炉で換算すると、ほぼ年間焼却量に匹敵し(400t×320日=128000t、焼却炉は365日稼動しているわけではない)、けっして「たった5%」なんかじゃない。受け入れたがれきの分だけ、その地域の放射線量はあがります。でも、廃棄物処理法では「放射能に汚染されたものを除く」(2条)と規定しており、産廃業者も市町村も、たとえ100ベクレル以下でも放射能を含む廃棄物は処理できません。でも、その点にふれた新聞記事は見たことないなあ…
震災がれき、処分済みは5%=広域処理進まず―環境省
2月21日(火)11時19分配信 環境省は21日、東日本大震災で被災した岩手、宮城、福島3県沿岸部(福島の警戒区域を除く)のがれきの処理状況を公表した。計2252万8000トンのがれきのうち、埋め立てや再利用などの最終処分を終えた量は、20日時点で計117万6000トンと全体の5%にとどまった。同省は岩手、宮城両県の木材がれき400万トンを被災地外で広域処理を行うことを想定している。しかし、現在は東京都や山形県が受け入れているだけ。2014年3月末までに全てのがれきを最終処分する政府目標の達成は厳しい状況という。
ところで、政府はなぜ、広域処理の期限を「2014年3月末まで」に限っているのでしょう? これは、やばい政策を実行する際の政府の常套手段。期限を区切るのと同時に、補助金を用意しているので、次のような展開が可能なのです。
★業界を勢いづける――がれき処理に群がる関連業界は非常に多い! 調べてみて下さい
★関係機関へプレッシャーがかけられる――〇〇までに××受け入れろ!
★スピードアップ=超法規的な対応が正当化される――法律なんか気にするな!
★どさくさにまぎれて問題の本質に目を向けさせない――市民、世論をミスリードしろ!
これが最初に実施されたのが「ごみ処理広域化計画」でしたが、政府は今回も同じ手を使おうとしているのです。広域化計画のキーワードは「ダイオキシン」でしたが、今回は「被災地復興」がキーワード。広域化計画では「ガス化熔融炉」拡大が目的の一つでしたが、今回は「放射能汚染の拡散」が目的です。将来、問題化するはずの健康被害や、国家賠償責任を問う訴訟……その頃までに全国を同じように汚染しておいて、「地域差はない=フクシマのせいではない」と逃げようという魂胆。
つまり、がれき拡散は県レベルの話ではなく、原発を含むこれまでの日本を作り上げてきた全勢力が関係する、オールジャパンの国策です。各地で計画をつぶすと同時に、きちんと政府に働きかける必要があります。そうしないと、敵は広範な手を打ってきているから。たとえば;
政府は2月16日、がれき広域処理を推進するためのホームページを立ち上げています。
災害廃棄物の広域処理に関するホームページ『広域処理情報サイト』
マスコミもほとんどがれき処理推進派です。毎日新聞などは写真展↓を開催する予定。
『知ってほしい 岩手・宮城のガレキのいま』~一日も早い復興を目指して~
http://kouikishori.env.go.jp/photo_exhibition.pdf
もちろん御用を務めている学者の方々も「安全」の太鼓判。
<冷静なる理解を/ 廃棄物処理に詳しい颯田尚哉岩手大
原発事故後の放射性物質の広がりや放射性セシウム濃度といった科学的なデータを見ると、がれきの放射線量は気にしなくていい。不安は心の問題で、何が怖いかは個人によって異なるが、適正に処理されれば、生活圏で被ばく量は上昇しないということを冷静に理解してほしい。行政も処理実績の情報を粘り強く発信し、不安を信頼に変えていく努力が必要だ。
http://www.kahoku.co.jp/spe/spe_sys1071/20120212_01.htm
冷静な議論をすれば、広域処理推進派の方が部が悪いのですが、本当の議論を避けるために、推進側は拙速、超法規的な手を使って、市民を翻弄しているのです。2012.2.22