ごみ戦争、フィリピンvsカナダ

 マレーシアに続き、今度はフィリピンがごみを輸出して知らん顔をしているカナダに「宣戦布告」。もちろん日本やアメリカ、韓国のごみもこの両国に押し寄せ、先進国側でもメディアがこの件を大きくとりあげていますが、ごみ輸出では痛い歴史がある日本では、この問題はメディアがとりあげようとしません。とりあげても、かなりポイントがずれてる。

 

フィリピン、ごみをカナダに返送 対応の遅さに激怒、貨物船で

共同通信社 2019/05/31 16:53

【マニラ共同】カナダの民間業者が2013~2014年、フィリピンに輸出し放置していた大量のごみ入りのコンテナが31日、マニア近郊のスービック港から貨物船でカナダに向け送り出された。カナダ政府は6月末までに回収する意向だったが、フィリピン政府が再三、早期撤去を求め、日程を大幅に早めた。カナダの対応の遅さに激怒したドゥテルテ大統領が、ごみを引き取らないなら「戦争する」と警告し、ロクシン外相は駐カナダ大使を召還。20日には政府職員のカナダ出張も禁じた。各国が頭を悩ませるごみ処理問題が外交問題に発展した。

 

 ごみを輸出したのは「民間業者」で、政府は無関係と、カナダ政府の言い訳をそのまま伝える報道です。でも、ブツが海外に「輸出」されるには、必ずどこかで政府が承認しています。おそらくカナダも日本同様、穴抜けバーゼル法を制定し、税関でもごみ輸出を黙認しているはず。そうでなければ、コンテナ100以上、2400トンにものぼる大量のごみを海外輸出することなどできません。

 ところで「コンテナ100」とは、アルジャジーラなどの別のメディアが報道しています。それによると、これらのごみは2013年と2014年、「リサイクル用プラスチック」と偽って輸出されましたが、実際はカナダ人の家庭ごみ。それで、フィリピンに陸揚げされた時から問題になり、地元裁判所は2016年、ごみを「違法ゴミ」と認定し、カナダ政府に回収を命じる判決を出していました。

 

6年も放置ー先進国の傲慢

 しかし先進国は途上国に対しとにかく傲慢。フィリピン市民は問題が表面化した頃から、くりかえし大きな抗議活動を続けていました・・・6年間も。ところがカナダは市民の抗議も裁判所命令も無視し続け、今年2月時点でもあれこれ言い逃れするばかり。その間、長いこと放置されたスービック港の69個のコンテナ(いくつかはフィリピン国内で処理された)は、腐敗し、耐えがたい悪臭を放ち続けていたのです。

A Filipino motorist passes by environmental activists as they stage a protest against the garbage shipments from Canada outside the Embassy of Canada in Makati City, south of Manila, Philippines, 28 June 2016. According to a statement from the protesting group EcoWaste Coalition, they are calling out to Canadian Prime Minister Justin Trudeau to take back the garbage shipments which have been rotting at the Subic and Manila ports. (Photo by Mark R. Cristino/EPA)

2016年、カナダ大使館への抗議デモ(マニラ、28 June 2016)

 ところが2018年以降、中国のプラごみ輸入禁止を受けてフィリピンに流入するごみはさらに増加。これが人々の怒りに火をつけ、さまざまな市民団体が共同して新たな抗議活動がくりひろげられたのです。

A mock container van carried by members of EcoWaste... : ニュース写真

2015年、コンテナをまねた仮装で抗議する市民団体のメンバー 2015/05/07:

 しかしこの問題を解決に向けたのはドゥテルテ大統領。彼は「宣戦布告する」「マニラのカナダ大使館前にごみを積み上げる」と過激な発言をし、実際にカナダ大使館の領事らを本国召還するなど強硬策に訴えたため、カナダも折れざるをえなかったのです。

 ごみは約20日間かけてカナダに戻され、そのあと、焼却処分されるとみられています。

 でも、今回はカナダでしたが、フィリピンにごみを送り出しているのはカナダだけではありません。フィリピン政府は今後、3000トンのごみを輸出国に送り返す予定だそうで、その中には日本のごみも含まれているでしょう。いいかげん、使い捨て文化をやめないと、汚染のつけは子供たちにまわされ、生存環境がさらに悪化することは避けられません。廃棄物を弱い地域・国に押し付けるのはーーどんな名目をつけてもーー不正義であり、相手国の人々には受け入れられないものです。2019.6.1

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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