「ごみ処理施設建設「中止」のわけ① (09/23)」の続編です。
調べたところ、埼玉中部資源循環組合の計画に対しては、何十人もの住民がいろんな訴訟を起こしていました。その中の一つを読むと、この計画そのものの違法性が浮かびあがってきます。
以下、嵐山町の監査委員会に対して出された監査請求書の一部です(嵐山町は中部資源組合の構成団体の一つ)。長いけど、同じような問題を抱えている地域にとってはそれなりに勉強になるでしょう。
ブログあれこれ : 東松山市長・小川町長に対しての監査 …
2018/11/01 ·blog.livedoor.jp/shibuya_tomiko/archives/52460888.html
2018年9月11日
嵐山町監査委員
堀江 國明 様
畠山 美幸 様
請求人 別紙請求人名簿 3 名
嵐山町長 岩澤勝措置請求書
請求の要旨
(1)違法な財務行為
① 平成29年度埼玉中部資源循環組合負担金総額2905万1000円を、埼玉中部資源循環組合元管理者新井保美、並びに現管理者宮崎善雄の求めに応じ支出したこと
② 平成30年度埼玉中部資源循環組合負担金、1期分522万4000円を4月16日に、2期分783万6000円を6月15日に支出したこと、並びに今年度分残金1306万2000円を支出予定であること、
(2)上記の違法性の根拠
① 嵐山町は、埼玉中部資源循環組合の構成自治体であり、嵐山町長岩澤勝は、本組合の副管理者である。本組合の建設地は、埼玉県比企郡吉見町大字大串字中山在2797-1他である。この地区は、吉見町・北本市・鴻巣市の2市1町のごみ焼却施設建設時、地域住民若山氏ほか30名が民事差止訴訟を行った。その結果、和解となり、「今後、ごみ処理施設を新設又は増設しない」とする条項の対象地区である。したがって、この地における本件組合焼却施設建設のための一切の行政行為は和解を無視するもので、民法1条信義則違反であり、民法第90条公序良俗に反し、裁判制度そのものを否定することである。
② 36年前の提訴から裁判の和解で、以下の2点が立証された。
1)吉見町大串地区は荒川河川式周辺で下降気流が発生しやすく、東京から雷雲が迫ってきてもきえてしまい雨が降らない特異な地域気象が起きる地域である
2)そのため、河川から近距離であっても、ごみ焼却場の煙突が60メートルの高煙突でもあっても遠隔地に拡散希釈されず、近辺に落下する可能性が強く、環境汚染をひきおこす可能性が高い。
しかし、裁判が長期にわたったため、ゴミ焼却施設が完成し、ゴミ焼却施設建設を債権者たちは認めざるをえなくなった。その被害の減少を求めた公害防止協定を締結し、和解条件として債権者の居住地近辺には「焼却施設の新築増築を認めないことを約束している。
埼玉中部環境保全組合焼却施設による周辺の環境悪化について不問にし、中部環境保全組合と埼玉中部資源循環組合は、別団体であるから和解条項に反しても違法にはならないという理由で、吉見町大串地区を焼却施設建設予定地として、本組合を設立した。埼玉中部資源循環組合焼却施設建設予定地は埼玉中部保全組合焼却施設の隣接地であるため、その地形により周辺住民の環境悪化による被害が継続する蓋然性は高い。埼玉中部資源循環組合設立にあたって、建設場所を吉見町に一任した本組合副管理者である嵐山町長岩澤勝も和解条項に反する不当性を承継している。
③ 候補地決定は当該組合の設立準備のための埼玉中部広域清掃協議会で行われている。候補地決定に際し、8か所を候補地としているが、8ヵ所の建設候補地を選定した平成25年5月9日開催の広域清掃推進会議の資料と会議録は非公開である。非公開の理由として、広域清掃推進会議は、町の機関と外部組織である埼玉中部広域清掃推進協議会で構成されており、その審議・検討内容を公開すれば、公正かつ適正な意思決定に著しい支障が生ずると認められるためという理由である。その後、建設検討委員会において広域清掃推進会議による候補地評価を形式的に審査し、建設位置を決定した経過をたどっている。しかも、建設地候補地の予定地の1ヵ所の吉見町大和田地区は吉見町土地利用計画(昭和48年~)で工業系の土地利用構想が存在し、県企業局とともに開発手法の検討が進められている地区であり、候補地として不適当な地区もくわえていたことが明らかになった。裁判の和解で建設できない地区、昭和47年の土地利用計画で工業系のとり利用構想がある地区を含む8ヵ所の候補地を選択した過程が、非公開で隠蔽されている。地方自治法第2条16項の「法令に違反してその処理をしてはならない」に反している。町長岩澤勝はその違法性を承継している。
④ 嵐山町は、現在の小川地区衛生組合焼却場のへの運搬距離が約6㎞に対し、中部資源循環組合焼却施設までは3倍の約18㎞の搬送距離がかかることより、可燃ごみの収集運搬費は、現在より2100万円から7100万円になることが予測されている。加えて、本組合焼却施設の焼却炉は、平成34年度末稼働予定で、稼働予定時人口でごみ量を計測して設計されたものである。人口減少が確実である本組合には、過大な焼却施設である。建設準備に必要な事業費、並びに建設費・運営費を、今後、負担金として継続して20年以上、支出するのは地方自治法第2条14項「最少経費で最大の効果を挙げなければならない」との定めに反する。
(3)求める措置請求
① よって、町長岩澤勝に平成29年度負担金のうち、平成29年11月6日に支出した871万6000円、平成30年4月16日に支出した522万4000円、平成30年6月15日に支出した783万6000円の合計額2177万6000円を違法支出の損害賠償として町庫への返還を求める。
② 平成30年度支出予定の1306万2000円の支出差し止めを求める。
つまり、裁判所の和解勧告を無視することから始まったこの事業は、計画段階から=判例・法令違反であり、倫理的にも行政的にも許されないものでしたが、これがここまで続いたのは、国の「ごみ処理広域化計画」の枠組みがあったから。それが破綻した今、埼玉中部では新たな計画を練らなければなりませんが、今のところ「対案」はないとのこと。・・・そりゃあ、行政マンだけにまかせておいては対案なぞないでしょう。でも、海外ではごみ処理に住民パワーを持ち込んで成功しているところも多いのです。日本でその成功例にならうとしたら、まず国の「広域化」の枠組みから外れる必要がありますが、これも行政ではなく、ピープルズパワーがあって初めてできること。手探りでもやってみないとね。2019.10.2