偶然、あるサイトで、京都大学原子炉実験所助教授の小出裕章氏が、「北九州の広域がれき処理」について述べている動画を目にしました。「春を呼ぶフォーラム/小出裕章講演会」(2012年9月1日)後のインタビューの動画だそうです。http://einstein2011.blog.fc2.com/blog-entry-688.html
講演の内容http://iwj.co.jp/wj/open/archives/28793にも異論はありますが、(「だまされたみなさんにも全員、責任がある」とか、「汚染された土地で生産されたものを捨ててはいけない」とか・・・)、ま、それはおいといて。以下、青字は小出氏発言(意味を変えない範囲で編集してあります)、黒字は、私の感想です。
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「私は実験所の中で、放射能に汚れたごみの管理に当たっている人間です。私から見ると放射能に向き合う時の原則というものがあります。それは、放射能は、発生した現場で、出来る限りコンパクトにして、専用に閉じ込める。一般のごみとも産業廃棄物とも混ぜないで、専用に管理する、というのが原則です」
放射能廃棄物の専門家だったとは初めて知りました…ま、「混ぜずに、コンパクトにして、閉じ込める」、ここまではいいとしましょう。ところが:
「私の原則からいえば、今、日本の国ががれき問題でやろうとしていることは徹底的に間違っています」
ん?京大原研はあなた個人の原則で動く世界なの? そうじゃなく、法令(従前の)に従えば、ってことでしょ。また、「日本の国」って、普通、環境省とか政府と言わない? 具体名を使うのはあまりお好きではないのかも。それに、徹底的に⇒決定的に、じゃないかなあ。
「全国にばら撒いてしまうということ自体が間違いだし、そこで出てきた焼却灰を、その自治体にまかせてそこで埋めろなんていう、全くありえないことを、今、やろうとしています」
前半はいいけど後半NG。がれき焼却はすでにやってんですけどねえ。これからの話じゃない。北九州だって、自治体はともかく、民間事業者に至っては何をやっているのか不明。
「ただし、がれきが放置されている限りは、福島の子どもたちも被曝をしてしまっているわけで、それを何とかしなければならない。それに対して、今の国のやり方が正しくないことは、私は何百回も言いたいが、ではどうするのか。自分の所に来なけれいい、それだけで考えて欲しくない。それぞれの地域で十分に考えていただきたいと思います」
……あの、福島のがれきは広域処理の対象外なんですけど。それに、がれきの放置で子どもたちが被曝する、というなら、がれきの広域処理はまさに汚染の拡散だということになりませんか? それから、「全国にばら撒くのが間違い」というのと、「自分のところに来なければいいというだけの考えではいけない」というのは、ちょっと矛盾が・・・う~。
記者:「(本格焼却を)正式にやるんであればどういう形が可能ですか?」
「ほんとはやってはいけません」
記者:「焼却はやってはいけないということですか?」
「焼却はやってはいいと思いますが、それぞれの現地に専用の焼却炉を使って、そこで、焼く。そして出てきた焼却灰は専用の施設で保管をするということが原則です。ほんとはそれを国がやらなければいけないのですが、国がまったくやらないという、そんなでたらめな国なんですね。仮に、どこかが――北九州も含め――引き受けるなら、二つのことを必ずやらなければいけません。ひとつは、焼却する前に放射性物質を捕捉できるようなフィルターなどを取り付けること。もうひとつは、出てきた焼却灰を東電に返すという筋道をつけて初めてやっていいということだと思います」
??ほんとはいけないけど、焼却はやっていい? それも現地で焼けばいい? それって、バグフィルターをつければ九州でもいいってことなんですか? 「全国にばらまくのは間違い」だけど、バグフィルターがあればOKということ? それはおかしい。焼却炉って究極の開放型処理なんですよ。エントロピーも増大するし、「出来る限りコンパクトに」と正反対の処理法であることは、科学者でなくてもわかること。それに、バグフィルターが有害排ガスの除去に役立たないことはダイオキシンや水銀漏れで証明されています。
一番納得できないのが、現地(福島)で焼け、とのくだり。福島でこそ、一切の焼却処理を停止させるべきなのです。放射性物質は焼却によって人体に取り込まれやすい形(PM2.5)になるし、ただでさえ線量の高い福島では、焼却炉周辺の汚染状況は殺人的なはず。また、「国がやらない」というのは完全な間違い。がれき広域処理は100%国策だし、多額の国家予算のもとで、直轄、代行の二方向で除染とがれき広域処理ビジネスが進められているんですよ。
「福島を中心とした子どもたちを守るために、もし引き受けるのであれば、この二つの条件を必ず守らせるという運動を組み立ててほしい。もしそれが実現できれば、自分たちの子どもたちも守ることができるし、汚染地の子どもたちの被曝も減らすことができると考えます。
結論・がれきを引き受ける際、フィルターと焼却灰の東電返還がかなえば、子どたちを守ることができるそうです。私は、フィルターはザル同然、東電へ焼却灰を返す法律はないし、焼却自体が間違いだと考えるから、この意見に絶対反対です。国民的ヒーローというべき大先生に対して反対すると、「不敬」だ、とのお怒りの声も出るかもしれませんが、沈黙は相手の言い分を認めること。大先生の言葉をじっくり読み返してみて下さい。2012.9.4
がれき:現地なら燃やしていいのか?
この記事を書いた人
山本節子
調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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