がれき焼却は健康被害をもたらす

  来週、環境省ががれき広域処理についての「全体計画」を出す運びになっています。これがいったい何に基づく計画なのか、例のごとく根拠法なしにやっているのでさっぱりわかりません。報道によれば、今後、可燃物が処理されるのは青森、山形、福島、茨城、東京都、そして北九州市に限られるとのことですが、汚染を集中させるのは許せません。今日は、焼却の健康影響について述べたイギリスの論文から、放射線に言及したくだりをご紹介します。 

ごみ焼却炉の健康影響 


英国生態医学学会第4回報告第2
 
2008
6 ジェレミー・トンプソン博士 オナー・アンソニー博士http://www.ecomed.org.uk/content/IncineratorReport_v3.pdf


(以下は放射線に言及した部分を中心に。訳:山本節子)


 イギリスでは、放射性廃棄物を燃している焼却炉がいくつかあリ、放射能を帯びたPMを発生させている。その放射性物質を呼吸によって体内に取り込むと、体内でアルファ線とベータ線を放出する可能性がある。外では危険性が低いこれらの放射性物質は、体内ではとんでもなく破壊的な作用を及ぼすが、これらの放射性排ガスが人の健康にどれだけの影響を与えているかについて、これまで何の研究も行われていない。


  最新の汚染除去装置(訳者注:バグフィルターなど)により、排ガスは安全になったとの主張があるが、それを裏付けるのは事実上不可能であり、たとえ裏付けられても、正常な稼動状態の時に出る排ガスだけにしか当てはめられないだろう。より懸念されるのは、短時間に大量の有毒物質を排出する、立ち上げと立ち下げ時など非正常時の状況である。有害性が最も高い排ガスのうち二つ―PMと有害重金属―は、比較的、除去に抵抗性がある(除染しにくい)。


 焼却炉は現在、国連人権委員会の基本的人権、特に欧州人権条約の生命の権利に違反し、ストックホルム条約と1990年の環境保護法にも違反する。焼却排ガスの最大の危険にさらされているのは胎児、幼児、子どもであり、彼らの権利が無視され、侵害されているのでは、公正な社会とはいえない。また、貧困地域に焼却炉を立地し、その住民に最悪の健康影響をもたらすという現政策はさらに公正さに欠けており、緊急な見直しが必要だ。


 ・・・今回、我々は以前の結論を再確認した。PMの影響、コスト、非正常時の排ガス調査などを含む最近の研究によって、焼却炉の危険性は以前認識されていたよりも大きいことが実証された。焼却炉の健康リスクに関して集まっている証拠はすでに無視できないほど大きく、より安く、より良く、遥かに安全な廃棄物処理法が利用できるようになった今、焼却炉の利用は正当化できない。


 それゆえ、我々は、これ以上の焼却炉建設は認可されるべきではないと結論づけるものである。

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/