「医療費不支給取り消し」の後ろにあるもの

 数日前にこんな↓ニュースが入りました。生後5ヶ月で受けた3種混合ワクチンによって重い脳障害を負った男児が、いったん拒否された被害補償を受けられそう、というものです。

接種後に障害 医療費不支給を取消 
2016.01.15
http://www.chiba-tv.com/info/detail/7224
 
 ワクチン接種後に急性脳症を発症した県内の親子が、予防接種法に基づく救済を受けられないのは承服できないとして県に審査請求をした問題で、県は15日までに「不支給処分」を取り消す裁決を行いました。県によりますと、2006年に、生後5か月の男の子が県内で3種混合のワクチンを接種した後に急性脳症を発症し、その後遺症により重い障害を負いました。6年後の201210月に、親子は国の救済制度の利用を申請しましたが、厚生労働省は「ワクチン接種と疾病との因果関係を否定する論拠がある」と否認。これを受けた
県市町村総合事務組合はおととし、不支給とする処分を決定しました。これを不服とした親子は、県に対し不支給処分の取り消しを求める審査を請求。県は3人の医師による鑑定などを踏まえ、「因果関係が否定できない」として親子の訴えを認め、今月12日付で不支給処分を取り消す裁決を行いました。
ワクチン接種による健康被害の審査請求で処分が取り消されたのは県内では初めてだということです。県は、「こうした裁決をした以上、救済が行われることを期待したい」と話しています。一方、厚生労働省は、「県の裁決については承知している。今後は再審査部会の審査を経た上で、対応したい」とコメントしています。

 記事を読んでヘン、と思ったのは、どこでワクチンを受けたのか書いてないこと。そして、被害者が救済を申し立てた相手は、ワクチンを接種した市町村ではなく、全く別の(特別)地方公共団体である「千葉県市町村総合事務組合(一部事務組合)」だった、ということです。
 なぜ?
 一部事務組合は、小規模の市町村などが、事務の一部を共同処理するために設立が許可されている特別地方公共団体です。根拠は地方自治法。でも、予防接種法は、市町村長に予防接種の義務を課し(予防接種法第5条)、それによる健康被害の救済も市町村長が行うことと定めている(予防接種法第15条)ので、予防接種に関する事業に一部事務組合が出る幕などありません。
 ところがこの「千葉県市町村総合事務組合http://www.ctv-chiba.or.jp/」は、「県下54市町村と38一部事務組合及び1広域連合の特定業務を共同処理」していて、予防接種事故救済措置もその事業の一部としていました。なんと、県下すべての市町村が、事実上、ワクチンの被害補償に関する責任を放棄して(させられて)いたのです。
 「一部事務組合が成立すれば、それによって共同処理するものとされた事務は、組合を構成する地方公共団体の(事務を執行する)権能から除外される」http://www.tokyo23city.or.jp/ki/dataroom/aboutkumiai.pdf

 そりゃあおかしいでしょう。だって、予防接種法は、接種を行った市町村に事故の責任を負わせているのに、千葉県の市町村はその責任を免除されてワクチンを打ちまくっているわけだから。また、事務組合は、ワクチン接種とは無関係だから、被害補償の申請が出ても、冷淡で無責任な態度を示すのは当然だと思われます。被害者が事故発生から6年もたって、ようやく救済を申請したのも、制度に関する情報など知らされていなかったのでしょう。・・・確認したところ、予防接種の被害補償を業務としているのはこの千葉県一組だけでした。私は、一部事務組合による予防接種関連の業務は、完全に違法だと思います。
 さらにヘンなのは・・・

「男児と保護者は、健康被害救済制度に基づき医療費などの支払いを県市町村総合事務組合に申請したが、厚労省が接種との因果関係を認めず、同組合は不支給処分を決定した。保護者らは行政不服審査法に基づき一四年二月、同組合の上級庁である県に不支給処分の取り消しを求めていた。ワクチンの副作用の可能性について、県疾病対策課の担当者は「三人の専門医に最新の医学的知見から鑑定してもらったところ、接種と健康被害との因果関係が否定できない」と説明した」http://www.tokyo-np.co.jp/article/chiba/list/201601/CK2016011602000125.html

 上は東京新聞の記事の一部dすが、「自治事務の共同処理」を目的に設立した一部事務組合に「上級庁」がある、と書いてあってびっくり。地方自治体の「独立」という常識さえ、今は失われてしまったのでしょうか?(最近の法改悪はほとんど追っていない)。どうも、そこには国ー県ー組合の図式があるようで、同組合は、これまでも被害救済の訴えを片っ端から拒絶してきたのではないかと考えられます。ま、調べないとわかんないけど。

 そこで、同組合に電話してみました。「この事故はどこで起きたのですか?」「お答えできかねます」「どうして?」「プライバシーに関することなので」「個人情報なんて聞いてない。どの自治体でおきたのかと、それだけを聞いている」「公表できません。個人保護が何より大切なので」「はあ?」・・・なかなか日本語が通じなかったけれど、どうも被害者が「どこで受けたか」を公表してくれるな、と求めているらしい。確かめるすべはありませんが、「自治体名を言うと保障金が出ない」と考えているのかもしれません。自治体名は出すべきだし、そうしてこそほかの、埋もれた被害者も掘り起こせるかもしれないのに。同組合にはそのほかの質問もぶつけ、返事をまっているところ。

 それから、三種混合ワクチン(DPT、DtaPなど。今はこれにポリオを加えた四種混合DPT-IPV))は、アメリカではインフルエンザワクチンについて、危険なワクチン(補償金額が大きい)として知られています。…まったく、知識がなければ生き残れない。2016.1.28

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/