「セベソ」を知っていますか?

セベソ…それは北イタリア、ミラノ北部のごく小さな町です。
 


 (写真:1976年当時撮影された、農薬工場ICMESAの様子(AFP))
 でも、とても有名。1976年、化学工場ICMESA(農薬製造)が、爆発
事故によって、町がダイオキシンを含むガスで汚染されたからです。
 小鳥や犬が次々に死に、避難した住民も死の恐怖にさらされました。
 しかし、死者が一人も出なかったことから、産業界や政府、御用学者
は、「ダイオキシンで人は死なない」などと言うようになります。その後
の調査で、女性の乳がん発病率が高いこと、女児出生率が高いことが
証明されていますが、それも「健康被害」とはみなされていません。
 今年09年9月15日、イタリア人研究者らはEnvironmental Journal
で事件後20年(1976-1996)の、住民の追跡調査の結果を発表してい
ます。http://www.ehjournal.net/content/8/1/39
 その結果―統計的には数が少なすぎるとしながら―、最大の汚染地
域住民には、リンパ腺腫瘍、造血組織腫瘍、乳がん(女性)など発ガン
のリスクの高いことが認られました。でも、彼らのほとんどは事件当時、
まだ幼く、ガンは加齢と共に出てくるため、今後も追跡調査が必要との
ことです。
 この結果は、日常的に焼却炉の排気ガスを吸わされている日本人に
も大きな意味を持っています。日常的な低レベル暴露は、事故などに
よる一時的高濃度暴露に匹敵する悪影響をもたらしているはず。
 「ラブ・キャナル」事件がまさにそうでした。
 現在、セベソのICMESAは閉鎖され、ヨーロッパでは同様の事故が
おきないように、「セベソ指令」を定めています(詳しくは「ごみを燃や
す社会」築地書館をどうぞ)。2009.9.21

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/