非科学的、好ましくない「核のごみマップ」

 前記事の続き。経産省は7月28日、使用済み核燃料などを埋め立てる「適地」を示した「核のごみマップ」を発表しています。各紙が報道していますが、下は朝日新聞の記事。全国地図しかあげていないので、地域別の地図は元サイトからご覧ください。

 

国土の3割、核のごみ処分場に「好ましい特性」経産

20177281503http://www.asahi.com/articles/ASK7X0QTGK7WULBJ015.html

 原発の使用済み燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)を地下深くに埋める最終処分場の選定に向け、経済産業省は28日、処分に向いた特徴を持つ可能性がある場所を示した全国地図「科学的特性マップ」を公表した。火山活断層、炭田などがなく、船による輸送もしやすいといった条件を満たす「好ましい」地域は、国土の3割に上った。経産省は今後、処分場に関心がある自治体が現れれば、詳しい調査への協力を申し入れる方針だ。

 最終処分場は、使用済み燃料を溶かしてガラスと混ぜた固化体を300メートルより深い地下に埋める「地層処分」をする。ガラスや容器が数万年で溶けても、放射能が地表に影響しないレベルに下がる0万年は閉じ込められるよう、地下水や地盤の変化などの影響が少ない場所を探す。地図は、これまでに公表されていた活断層火山、地盤などの情報をベースに、日本全国を4色に色分けした。火山から15キロ以内や活断層の近くなど、地下の安定性の観点から好ましくないと推定される地域をオレンジ色、地下に石油や天然ガス、石炭などがあって将来採掘される可能性がある地域を銀色にしている。これらの「好ましくない」地域以外のところを、「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」として緑色に塗った。緑色の地域のうち、海岸線から20キロ以内は「輸送面でも好ましい」として、さらに濃い緑色に強調した。面積の割合では、オレンジ色と銀色を合わせた「好ましくない」地域と、緑色、濃い緑色の地域がほぼ3分の1ずつだった。濃い緑色がある自治体は、全国の自治体の半数以上の約900に上り、東京や神奈川、愛知、大阪など大都市圏も含む。経産省は「未知の断層も含め、実際の選定では個別に地質調査していくことになる」とした。

経産省は今秋から、全国で説明会を開くとともに、濃い緑色の地域の自治体を重点に、処分場のリスクや必要性について対話活動を続ける。20年ほどかけて候補地を絞り込む方針だ。ただ、事故を起こした東京電力福島第一原発がある福島県と、処分場を造らないことを歴代政権と確認している青森県の自治体には、協力を働きかけないとしている。処分場の選定をめぐっては、原子力発電環境整備機構NUMO)が2002年から自治体を公募。07年に高知県東洋町が調査に応募したが、住民の反対で取り下げた。その後、応募する自治体は現れず、国は15年に方針を改定。地図を示した上で、国から調査を申し入れることにしていた。(東山正宜

 

 利益を得ているのは一握りの原発屋なのに、リスクは全国民に押し付けようというわけです。なんてったって、「処分に向いた特徴を持つ可能性がある場所」「好ましい特性が確認できる可能性が相対的に高い」「未知の断層も含め、実際の選定では個別に地質調査していく」など、可能性とか要調査という言葉が飛び交っている限り、このゾーニングはまったく非科学的。前記事で書いたとおり、すべてが「政治」の中で決まってゆくよ、という意味しかありません。しかも、海上輸送を前提にしているということは、港湾・道路整備という公共事業が伴うというわけで、現在あるいは将来、港湾整備計画とあわせ、後背地に処分場などの計画がある地域は要注意です。

 止める方法ですか? とりあえずその地域の自治体で、「核ごみ関連廃棄物持込・処理禁止条例」などを作ることですね。今ある環境基本条例に、放射性廃棄物や指定廃棄物、高濃度放射性廃棄物などを書き込むことも可能です。もちろん、その前に「核発電」って一体何なのか、ということをもう一度おさらいし、住民の間で知識を共有することが必要でしょう。そうです。ごみ焼却炉と同じ対応が必要。最後に頼りになるのは地方自治体。経産省も環境省も、自然保護や住民の安全など何も考えておらず、「どうやって住民をだまくらかして、出てくる核ごみを目に見えないように処理できるか」しか頭にないことを知っておきましょう。ただし、知事や市長が元官僚とか企業関係者の場合、首のすげかえが必須です。2017.7.30

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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