関西広域連合のふてぶてしさ

 昨夜、関西キャラバンから帰宅。すると、こういうニュースが待っていました(下線山本)。

尼崎、泉大津沖の2処分場で震災がれき受け入れ合意
2012年7月3日 東日本大震災の災害廃棄物(がれき)の焼却灰について、関西広域連合は、大阪湾広域臨海環境整備センター(フェニックス)が兵庫県尼崎市沖と大阪府泉大津市沖に持つ2カ所の海上処分場で受け入れる方針を固めた。6月30日に大阪市で開いた首長による非公開協議で合意した。海上処分場での受け入れには、環境省の個別の環境評価で、放射性物質による海洋汚染の危険性がないことを確認する必要がある。広域連合は今月中にも評価を申請するよう、フェニックス側に求める方針。6府県と168市町村が出資するフェニックスは、大阪湾に4カ所の管理型処分場を保有。広さは尼崎で33ヘクタール、泉大津で65ヘクタールある。広域連合はこのうち、尼崎で10ヘクタール、泉大津で9ヘクタールある緑地部分でがれきを最終処分する方向だ。過去の埋め立てで陸化しており、焼却灰が水に触れる可能性がほぼないためという。
http://www.asahi.com/kansai/news/OSK201207030012.html
 
 なんじゃこりゃ。まるで関西広域連合がフェニックス事業について決定権があるかのような書き方ですが、これは記者の勉強不足か、さもなくば意図的ミスリードで、広域連合には、市町村の廃棄物処理に口をはさむ権限など全くありません。もちろん、環境省の評価を受けるように要求する権限もない。さらに、環境省の個別評価なんて、いったい何に基づくものやら、日本にも世界にも、こんな評価を下せる人なんかいないはずだからね。
 したがって、広域連合のこの「決定」は、越権行為というより、自治権を犯す違法行為です。しかも、これは完全な非公開協議で行われ、これまでの議事録も出していないから(請求していますが)、広域連合は、市民に全く見えない闇組織なのです。今回の闇組織の決定は、下のニュースを受けたもの。
震災がれき「受け入れは困難」 大阪湾フェニックスが見解
 2012年06月30日 毎日新聞大阪朝刊
 関西広域連合による東日本大震災の災害廃棄物(がれき)受け入れを巡り、焼却灰の埋め立て処分場「大阪湾フェニックス」を運営する大阪湾広域臨海環境整備センターの定例理事会が29日、開かれ、センターの事務局は「施設面や法的な課題が多く、受け入れは困難」との見解を示した。最終処分の中核施設となるはずだったフェニックスでの処理見通しが立たなくなり、関西圏でのがれき受け入れに影響が出そうだ。フェニックスは、近畿の6府県と168市町村が出資するセンターが運営。兵庫県尼崎▽大阪府泉大津▽神戸▽大阪−−の各市沖に処分場がある。市町村が焼却処分したがれきの焼却灰を受け入れるよう、広域連合が要請していた。
 この日の理事会で事務局は、地元自治体との調整など法的手続きが必要(尼崎、泉大津)▽陸域部の地盤沈下が激しく、将来的に水と接触する可能性がある(神戸)▽処分場の大部分が水域で、水と接触させずに埋め立てるのは困難(大阪)−−と報告した。
http://mainichi.jp/area/news/20120630ddn002040033000c.html
 こちらはごくまっとうな議論が行われた様子。フェニックスの出資者と広域連合は全く関係がないから、いくら強制されたって、一律の合意は不可能。それに、受け入れ後に問題が起きれば、その処理が複雑になるのは避けられないし、第一、「海面埋立」は陸上埋立より簡単に失敗します。横浜でも本牧への焼却灰埋立を中止しているしね。広域連合がフェニックスに受入れを強いるのは、根拠法もなく、自治法違反=憲法違反です。
 それにしてもふてぶてしい広域連合。これは官僚の、官僚による、官僚のための組織で、構成員は都道府県の首長のみ。自治事務を奪いとっては、おいしい部分を企業に売り渡し、リベートで自分たちのフトコロを潤し、天下り先を確保するのが仕事なので、一般市民はこの組織がいったい何のためにできたのかさえ知りません。こんな闇組織はなるべく作らないこと。できてしまったら早くつぶすこと。そして何より、元官僚を知事や市長に就任させないよう、選挙制度を改革すべきでしょう。彼らの目は常に政府と企業を向いていて、決して一般市民に向けられないんだから。2012.7.9

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/