神奈川県の、無視できない放射能汚染

  この問題、昨秋から追っていましたが、12月に指定されていました。

放射能汚染ごみ、神奈川で初指定 汚泥2.9トン
2014210536分 
http://www.asahi.com/articles/ASG105TCPG10UTFL00Y.html?iref=com_rnavi_arank 環境省は31日、神奈川県内で出た汚泥2.9トンを、放射能に汚染された「指定廃棄物」に指定したことを明らかにした。同県分の指定は初めて。環境省は汚泥が出た詳しい場所は公表していないが、横浜市が昨年9月、市立小中学校など17校の雨水利用施設にたまっていた泥の指定を申請しており、同市によるとこれが含まれている。市によると、ほかに道路の側溝などにたまっていた泥も申請し、指定された。同省は「昨年12月に指定した」と説明している。指定廃棄物は東京電力福島第一原発事故で飛散した放射性セシウムがついたごみで1キログラムあたり8千ベクレルを超えるもの。ごみの焼却灰や下水処理場の汚泥、稲わらなどが多い。神奈川を加えて12都県で指定され、総量は昨年末時点で約14万トンになった。

 フクイチ事故の結果、横浜市初め神奈川県も全域に「黒い雨」が降りました。それがはっきり裏付けられたのは、トイレ浄化施設に雨水を利用していた横浜市立の小中学校で、汚泥を再利用していた業者が「汚染」を心配して調査したことがきっかけでした。横浜市は次のような対応をしています。

①平成23 年度調査(平成24 年3月29 日記者発表)学校の雨水利用施設の雨水貯留槽内に堆積している汚泥のうち18 校において、1kgあたり8,000 ベクレルを超える放射能濃度が検出されたため、平成24 年度に全校の雨水利用施設の利用を止め、上水利用に切り替える工事を行いました。
② 平成24 年度調査(18 校再調査)(平成25 年3月15 日記者発表) ①で8,000 ベクレルを超えていた18 校について、指定廃棄物の申請に向け、汚泥の総量を調査するとともに再度核種分析を行いました。その結果、18 校中9校で放射能濃度が1キログラムあたり8,000 ベクレルを超えていました。
③ 平成25 年度調査・・・①で8,000 ベクレル未満だった学校を含め、全43 校について改めて廃棄物から10 箇所のサンプルを採取して均質に混合し、核種分析を実施しました。その結果、最終的に、合計17 校について放射能濃度が1キログラムあたり8,000 ベクレルを超えていることが確認されました。

 以下、横浜市「市立学校雨水利用施設の汚泥調査結果」から一部抜粋。
 
http://www.city.yokohama.jp/ne/news/press/201310/images/phpkkjOXK.pdf

  学校名        線量(Bq/kg)  重量(kg)
 1 港南台ひの特別支援学校  25,100      23.5
 2 あかね台中学校      19,600      35.4
 3 下野谷小学校       13,200      63.2
 4 南山田小学校       12,300      142.2 
 5 末吉小学校                       11,300             832.0 
 6 軽井沢中学校       11,200      83.6
 7 森の台小学校       10,900      57.4
 8 杉田小学校        10,400      64.3
 9 都筑小学校          9,690      103.2
10 東山田中学校        9,540              332.0
11 早渕中学校                          9,410              217.1
12 青木小学校                          9,240              105.6
13 東山田小学校                       8,550              152.0
14 十日市場中学校                    8,210              113.2
15 茅ケ崎東小学校                    8,110              395.8
16 山下みどり台小学校              8,070               141.2
17 中山中学校                         8,030                 47.1

 申請されたのはこのNo.1~17まで。総重量:2908.8kg。「申請外」ったって、数値が低いわけではありません。以下は「次点」
(申請外)
18 荏田西小学校        7,660      233.7
19 黒須田小学校        7,530        31.1
20 富士見台小学校                    7,360                 46.1
21 矢上小学校                          7,340               278.9
22 茅ヶ崎台小学校                    7,280               194.2
23 岩崎中学校                          7,240           
    204.6
24 つづきの丘小学校                  6,930                88.2
25 下郷小学校                           6,830              352.0
26 北山田小学校                        6,460              299.4
27 桂小学校                              6,350              170.5 
28 保土ケ谷小学校                      6,220              323.2
29 西寺尾第二小学校                   6,130              218.4 
  (以下略)

 注意すべきは、この調査が:
 ①雨水利用の施設に限られている(他地域も同じ程度に汚染された)
 ②横浜市立の小中学校に限られている(私立校だって事情は同じ)
 ③一部抽出・混合サンプルで測定されている(高濃度汚染の均一化)
 ことです。したがって、この数値は氷山の一角。川崎だって、横須賀だって、湘南地域だって、事情は似たようなものでしょう。
 それを裏付けるように、環境省は、神奈川県内の公共下水道及び流域下水道施設から出る焼却残渣やばいじん(流動床炉から生ずるものに限る)を、「特定廃棄物」としてます(放射能汚染対処特措法)。潜在的汚染がちゃんとわかっているわけで(市民は知らない)、うち8000Bq/kg超えが「指定」対象となります。でも、実際に初指定されけたのは、「焼却」工程などもたない、普通の学校の雨水貯留施設に溜まっていたナマ汚泥だった…

 もっと怖いのは、「指定廃棄物」とされたことにより、その処理の事業が環境省(国=産業界)に移管されるわけ。その環境省の「指定廃棄物の今後の処理のポイント」は↓の疏り
http://www.env.go.jp/jishin/attach/haikihyouka_kentokai/15/mat02_2.pdf(一部編集、強調山本): 

・国は、既存の廃棄物処理施設の活用について、今後3年程度(平成26年度末)を目処に、指定廃棄物が大量に発生し、保管がひっ迫している都道府県において、必要な最終処分場など(福島県において10万Bq/kg超の指定廃棄物は中間貯蔵施設)を確保することを目指す
 ・指定廃棄物の最終処分場を新たに建設する必要がある場合には、都道府県内に集約して設置し、その設置場所は、必要な規模や斜度を確保し、土地利用の法令上の制約がなく、最終処分場建設に適している候補地を、国有地の活用を含め、都道府県毎に複数抽出。その後、複数の候補地の中から現地調査などにより立地特性を把握した上で、国が立地場所を決定
 ・国は、最終処分場が設置されるまでの間、当面、焼却、乾燥、溶融などの中間処理を行い、保管の負担を軽減。農林業系副産物(稲わら、牧草など)は、既存の焼却施設で焼却出来ない場合、仮設焼却炉等を設置

 普通のごみとして焼却・溶融し、埋め立てろ、というだけの意味です。しかも完全な規制緩和、場合によっては違法でも可(福島県鮫川村の焼却炉は環境省も鮫川村も日立造船も、公文書偽造を認識しつつ、強行中)。神奈川県でも、がれき処理に手をあげた自治体、ごみで怪しげな動きをしている自治体は要注意。★この件につき、2月6日に神奈川県環境部と話合います。参加希望は山本までメールを。2014.2.2

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/