反原発と都知事選

 選挙戦たけなわの先週末の東京。ここに至って、もともと反政府系だと思っていた掲示板などにも「細川に一本化しろ」てな論調が目立っています。つまり、露骨な宇都宮支持派の引きはがし作戦。あえて欠点だらけの舛添を出したこと、後出しじゃんけん、マスコミではなくネットでの情報拡散など、「細川」傀儡都政を打ち立てる準備はすっかり整ったようで、都民はさらに泣きを見る。・・・と思っていたら、次のようなメールが転送されてきました。ご本人の承諾を得て全文載せておきます。強調山本。

「反原発と東京都知事選挙」 

 1月31日(土)に所用で上京したついでに、国会正門前で夕刻から開催される反原発集会に参加しました。熱気にあふれる集会会場の壇上に次々と弁士が立ち、反原発にかける想いを話してくれます。ちょうど都知事選の真っ最中で、都知事選候補者の宇都宮けんじ氏と細川護熙氏もこの反原発集会に参加し、午後7時前後に続けて発言しました。しかし、両者の態度は全く異なるものでした。

 宇都宮氏は、各人の持ち時間が短く制限される中で、反原発に込める想いを10分くらい熱心に語り、原発廃止と福島など被害住民への支援などを訴えました。一方の細川氏はといえば、発言台の壇上にも上がらず、マイクも使わずボソボソと独り言のようにつぶやいただけでした。発言台からそう遠くない位置に私はいましたが、聞こえたのは、司会者の「これから細川氏の発言です」という(マイクを通した)言葉と、ほんの1分か2分後の「細川氏の発言が終わりました」という言葉だけです。ほとんどの集会参加者には細川氏の発言は全く聞こえませんでした。反原発だけを旗印に立候補した細川氏ですが、反原発の想いを伝えよう・語ろうという意欲は全くないといってよいでしょう。
 反原発・原発廃止を願う皆さん、こんな細川氏にあなたは期待するのですか!?
 5000万円を受け取って辞任した猪瀬前知事の後任を決める選挙で、佐川急便から受け取った1億円の疑惑を曖昧にしたまま立候補できる人間を私は信用しません
 そして、そんな細川氏の反原発の主張など信用できません。反原発候補を一本化したいと考える人はたくさんいるようですが、それなら、宇都宮氏に一本化するしかないでしょう。

 原発の問題からは少し離れた観点を重視し、戦前の中国における「国共合作」まで持ち出して、極右の安倍政権が進める戦争をできる国にする流れと対抗すべきだと考える人もいるようです。そのため、非自民候補で人気もあるらしい細川氏に一本化すべきだという理屈のようです。
しかし、それなら、細川氏など安倍政権の補完勢力でしかないことに想いを至らせてほしいと思います。細川氏の背後にいるのは、極右の安倍首相の師匠ともいうべきこれまた極右の小泉元首相です。細川氏が勝っても、安倍政権の靖国思想肯定・軍事大国化路線には痛くもかゆくもないばかりか、安倍首相の極右思想を支持する流れになるでしょう。

 さらに、小泉氏は、弱者を容赦なく切り捨てる格差社会を作り出した張本人でもあります。働く人の4割を占めるに至った非正規労働者や社会的弱者のことを想えば、小泉氏と手を組む細川氏を応援できるわけはありません。ここは腹を据えて、宇都宮氏を当選させるため頑張りましょう。

 ほんとほんと。いきなり「細川の1億円は問題なかった」と、細川善人説が広がったのは、あまりにもご都合主義で。小泉がワーキングプアの元凶であることと併せて、しっかり記憶しておかないと、過ちはくりかえされるよ。なお、発信人の青木茂氏は、中国人強制労働者の虐殺墳墓(万人坑)の踏査を通じて近現代史を掘り起こしている方で、先ごろ緑風出版から『万人坑を訪ねる─満州国の万人坑と中国人強制連行』(四六判上製/296頁/2500円)を上梓されています。中国東北部に多数の万人坑があるのは、軍事力を背景とした日本企業の資源争奪の結果で、これやがてが日中戦争に発展したわけです。小泉はそういう歴史を知りつつA級戦犯を顕彰している靖国神社に参拝しているわけで・・・いずれにせよ、本の注文は上の出版社、あるいは本人のブログからどうぞ。http://www.max.hi-ho.ne.jp/nvcc/da/da5.htm

 それから、他の人も官邸前集会に感想を述べていました。

 「昨夜の国会・官邸前での脱原発抗議には大勢の人が集まった。常連の宇都宮氏はみんなの顔見知り。彼の力強い説得力ある演説に喝采の拍手拍手。細川氏は何らかの理由でマイクでの演説を拒否したので何を話しているかちんぷんかんぷん。この実況はyou tubeに載っているとのことhttp://www.asyura2.com/14/senkyo160/msg/569.html

 ところで、上のサイトに2月1日の細川の演説がアップされていて、最初のとこだけ聞きました。老人の孤独死にからんで、彼はこう述べています。

 「日本にはかつて隣組というものがありました。その隣組のようなシステムを行政も支援をしてネットワークを確立し、お年寄りに大きな安心感を与えられるのではないか・・・」

 「隣組」・・・おいおい。また総動員体制→大政翼賛会?
 また、というのは、隣組を作ったのが細川の祖父の近衛文麿(1940)だから。近衛はその後、東亜新秩序大東亜共栄圏構想をかかげて議会政治を破壊、日独伊三国軍事同盟日ソ中立条約を締結して戦争の泥沼にのめり込んでいきますが、その末端組織である「隣組」とは、国民コントロールのための組織です。

 隣組とは国民総動員体制の末端組織で昭和15年より各地で組織されていきました。昭和15年9月内務省訓令として「部落会、町内会、隣保班、市町村常会整備要綱」が各都道府県に通達されて部落会、町内会、隣保班、市町村常会などに関して詳細な運営基準が決められました。これによって、市町村行政の下請け機関としてこれらの会が整備され、さらにこの下部組織として10世帯~20世帯単位の隣組が組織されたのです。目的は、祭祀慶弔、隣保親睦相互扶助、矯風修養および慰安、災害防護、市役所や官公署との連絡、各種団体との連絡協調、協同の福利増進等とされていました。http://www13.ocn.ne.jp/~seiroku/tonarigumi.html

 近衛はA級戦犯で、極東軍事法廷で裁かれるのを恐れて服毒自殺した人間。何かあると投げ出し、責任を取らないという性格は細川に受け継がれているんではないかと思うけど。
 細川は「バイオマス・風力などのエネルギーで世界に飛躍してゆく」「今の日本の技術をもってすれば、それが実現できる」などと、バラ色のアピールをしているけど、日本の技術がそんなにすぐれているなら、「フクイチの汚染水、蒸気をすぐ止めます」と言ってみてよ。
聴衆が聞きたいことを言う政治家ほど当てにならないものはありません。良薬は常に苦い。
2014.2.3

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/