焼却前提の技術開発さかん

 先の記事で「下水汚泥の減容化を」と求める声を紹介しましたが、これは環境省が進めている放射能汚染ごみの「焼却」「減容化」を念頭においたもののようです。事実、環境省は「全量焼却」に向けて突っ走っており、それを受けて業界はさまざまな「焼却技術」を開発中。なかなかオソロシイ状況になっています。

焼却灰の減容化装置公開 福島高専、9月稼働目指す     http://www.minpo.jp/news/detail/2014071216830

 福島高専は11日、放射性セシウムを含んだ焼却灰の減容化に向けた実証装置を公開した。順調にいけば9月から郡山市で稼働する。 同校、長岡技術科学大、カサイ(新潟市)の共同研究グループが科学技術振興機構(JST)の支援を受けて完成させた。焼却施設の排ガスなどからできる「焼却飛灰」を水熱処理し、溶け出た水をセシウム吸着効果のある繊維で浄化する。水に溶けない部分は残るが、実験では放射性セシウム濃度が1キロ当たり8000ベクレル以上の焼却飛灰を約30分の1に減容化できた。実証装置は1日に焼却飛灰100キロを約3キロに減らせるという。校内では正常に動作するか確かめる。放射性セシウム濃度が同8000ベクレル以上の焼却灰は指定廃棄物として管理が必要。福島高専の内田修司教授(52)は「装置が完成すれば焼却飛灰の保管に必要な場所や費用、労力が大幅に削減できるはずだ」と話している。 カテゴリー:主要

 国(独法)が補助金を出して、地元の高専、大学、地元企業を囲い込んでいるのですが、高専の先生でさえ、焼却処理がそもそも開放型処理であることをご存知ないくらいだから、みんなだまされるのも当然。焼却処理が安全なら、原発保有国のすべてが放射性汚染物を焼却しているでしょう? 実際は日本だけです。それも311以後。・・・この少し前にはこういう↓記事もありました。

放射能に汚染された土壌を98%減容 セシウム除去の新技術が開発される 2014年7月 8日掲載 http://www.kankyo-business.jp/news/008230.php

 神鋼環境ソリューションは、放射能汚染土壌を最大98%減容化する技術を開発したと発表した。同技術開発は、国立環境研究所資源循環・廃棄物研究センターと共同で行われた。同技術では、汚染土壌にセシウム除去剤を添加し、加熱化学処理を行うことで放射性セシウムを除去する。開発は、下記のような汚染土壌を対象に実施された。

 ①汚染濃度の高い有機物(芝生、草木類、枯葉等)を含む除去土壌
 土壌とセシウムとの吸着結合能(通常、土壌中のセシウムはきわめて強固に吸着されている)が、これらの混入により阻害される可能性がある。
 ②高濃度汚染土壌
 放射能濃度が8,000ベクレル/kgを超える土壌。長期管理のコストがかかり、最終処分に向けて将来減容化が必要になる可能性があり、汚染物は中間貯蔵施設に一時保管されたのち、最終的には福島県外に建設予定の最終処分場に移動処分される予定となるもの。
 

 実験は、実際に汚染された除去土壌を使用し、粗粒分、細粒分、有機物によりわけ、放射能濃度の高い細粒分にセシウム除去剤を添加し、その後、草木類などの有機物と共に加熱化学処理することにより放射性セシウムを揮発除去させた。その結果、放射性セシウム除去率98%以上を達成した。また、同社は、除染廃棄物の焼却によって生じる高濃度放射能汚染主灰(放射能濃度が8,000ベクレル/kgから、場合によって100,000ベクレル/kgを超える)に対しても、前処理工程で粗粒分のみを分別し、同様の処理を行うことで、除染・減容化できる目途が立っていると発表している

 「セシウム除去剤」というのが何なのかわかりませんが、いずれにせよ、農薬やその他の化学成分を含む有機物を燃やせば、コントロールできない化学反応が起き、ダイオキシンをはじめとした汚染物質が大量に発生するのは避けられないでしょう。焼却処理の最大の問題は、化学反応と生成物をコントロールできないことであり、311以前は、原則、焼却禁止でした。それが今や、自治体でも、企業でも、高専でさえ、自由に燃やしている。高濃度でも平気。国はそれを管理することも規制することもできない。その結果、まちかまえているのは・・・

 同社は、設備の拡大と浄化土壌の再利用先が確保出来次第、実用化を目指す方針だ。福島県内の放射能土壌の除染作業により生じた土壌は、近い将来、中間貯蔵施設に全量搬入される計画となっており、汚染土壌の減容化が大きな課題だ。

 汚染土壌の「再利用」です。つまり、横浜や東京などの下水汚泥の再利用も、同じ政策、同じ企業利益で動いているわけで、今後の日本社会には、今以上に汚染度が高いリサイクル品があふれることにでしょう。さらに、今後は「廃炉関係」のごみも加わるはず。たとえば、6号機プール冷却一時停止 第一原発、配管で水漏れという報道がありましたが、上の記事にある赤錆た冷却装置(写真あり)などの施設廃棄物、修復作業で出た大量の廃棄物(タイベックスなど)も、「燃やしてしまえ」となるのは時間の問題でしょうね。
 日本には「ごみ焼却処理」に歯止めをかけようという組織・団体がありません。 
 そこを狙って、環境省・企業が打ち立てたのが「循環型社会(=全て燃やす社会」ですが、今や放射能ゴミも入れた「新・循環型社会」が成立しかかっています。2014.8.3

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/