渡良瀬川のヨシ焼きは放射能を拡散する

 福島原発事故は、爆発による即時的な放射性物質汚染を広範囲にもたらしました。でも、事故の後、長期にわたって放射性物質を拡散し続けるのは、環境要因(風や雨、雪など)であり、何より、「火」であることがチェルノブイリの研究からわかっています。
 
 チェルノブイリでは、事故の後、何年も放射性物質の拡散が続き、健康被害をもたらしたのですが、その原因は、現地の森林火災、農地火災でした。「火災」によって誕生する微小PMは、今、問題になっているPM2.5よりさらに小さく、コントロールできないまま広範囲に拡散し、人がそれを体内に取り込むと、簡単に内部被ばくしてしまうのです。これは、山本の「がれき焼却で何が起きるか」で、論文と共に紹介しています。

渡良瀬川の野焼き   空を覆う野焼きの煙

(写真はhttp://album-soko.free-photobox.info/totigi-ken/wataraseyuusuiike-noyaki/

 したがって、福島原発事故後、ごみ処理を含む「焼却」を伴う事業は、極力避けなければなりません。どんど焼きも、野焼きも、がれき焼却もごみ焼却も…東京のがれき焼却による人体被害は、もうしばらくすると明らかになるでしょう。
 そこに、国土交通省が、今年3月16日に渡良瀬川のヨシの野焼きを再開する、との情報が入りました。とんでもありません。ヨシ焼きは、2011,2012年は、さすがに放射能の影響を懸念して中止されていましたが、今年は「専門家」がOKと言ったから、再開するのだとか。

  渡良瀬遊水地のヨシ焼きは、平成22年まで毎年行われてきたが、平成23年3月11日の東北地方太平洋沖地震の影響で、平成23年と平成24年の2年にわたり中止された。この影響により、ヨシの生育状況が不良となるほか、渡良瀬遊水地でしか見られない稀少植物についても、個体数が減となっている。このため、渡良瀬遊水地の周辺自治体(4市2町)と環境省関東地方環境事務所及び国土交通省利根川上流河川事務所によるヨシ焼き再開検討協議会(仮称)を設置し、ヨシの生育状況の改善や稀少植物の保全のため、ヨシ焼き再開に向けた検討を行う

 その結果、次のような「判断」が下されています。

渡良瀬遊水地ヨシ焼き再開検討協議会においては、ヨシ及び下草の放射性物質分析を行うとともに、その結果を基に専門家に相談したところ、ヨシ焼きに伴う放射能による外部被ばく、内部被ばくの影響は十分小さいとの専門家見解(下記)を得ました。
○これを踏まえ、同協議会においては、灰が極力飛散しないようにヨシ焼きのエリアを必要最小限に限定し、火入れは時間差を設けるなどの工夫を行いつつ今年のヨシ焼きを再開する判断をいたしました。

 

 ヨシは汚染されていないのか、と誤解しないで下さい。各地で問題になっている「がれき」の線量よりよほど高いのだから。専門家見解とは;

②ヨシ及び下草(乾燥後)に含まれる放射性セシウム濃度
89~258 Bq/kg (5試料) 平均値139 Bq/kg
(平成25年1月16日採取)
(空間放射線量率の高かった箇所から試料採取した結果です)
●この放射性セシウム濃度から計算される外部被ばく量は、24μSv/年となり、自然放射線量である約2.4mSv/年(2,400μSv/年) に比べ十分小さく安全上題ありません

③ヨシ及び下草(焼却灰)に含まれる放射性セシウム濃度
550~930 Bq/kg (5試料) 平均値754 Bq/kg
(平成25年1月16日採取)
(空間放射線量率の高かった箇所から試料採取した結果です)
●焼却作業中の灰を吸い込んだ場合の内部被ばく量については、1時間の作業で2.8μSvと推定され、自然放射線による年間被ばく量の1/1,000程度と十分小さく、安全上問題ありません。

 
 焼却による放射性を帯びたPM2.5の拡散についても、野焼き後の焼却灰による汚染についても、日本の学者は誰も知らないはずです(そういう研究はやっていないから)。いずれにしてもヨシの生育の方が、放射能拡散より大事だっていうんだから、無知は怖い。この検討をしたのは次の方々です。なお、この「専門家」は不明。ご存知の方、教えて下さい。

渡良瀬遊水地ヨシ焼き再検討協議会会員名簿
 菅谷憲一郎 古河市長
 鈴木俊美 栃木市長
 大久保寿夫 小山市長
 真瀬宏子 野木町長
 栗原実  板倉町長
 大橋良一 加須市長
 徳田裕之 関東地方環境事務所野生生物課長
 鈴木克彦 関東地方環境事務所放射能汚染対策課長
 須見徹太郎 利根川上流河川事務所長

 どんなに火入れ面積を小さくしようが、その影響は相当広範囲に及びます。関連地域にお住すまいの方、関係者の方、今すぐ地元自治体やコミュニティに中止を要請してください。
2013.3.3

(出典)
渡良瀬遊水地ヨシ焼き再開検討協議会からのお知らせ

 平成25年2月1日に渡良瀬遊水地ヨシ焼き再開検討協議会を開催しました。

渡良瀬遊水地ヨシ焼き再開検討協議会の趣旨
渡良瀬遊水地ヨシ焼き再開検討協議会の設置要綱
資料

(各市町村の連絡先は上の資料にもありますが、大本営はこちら)
国土交通省 関東地方整備局 利根川上流河川事務所
〒349-1198 埼玉県久喜市栗橋北二丁目19-1 TEL 0480-52-3952

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/