横須賀新ごみ焼却炉、現地を見てきた

 5月8日、横須賀市の新ごみ処理施設予定地を、十人ほどのメンバーで「視察」してきました。市職員の案内つき。
 建設場所は市のちょうど中央部、三浦半島の背骨にあたる地域です。「背骨」といっても、標高はせいぜい200メートルほどですが、近郊緑地保全地域・風致地区・神奈川地域森林計画対象民有林に指定されているだけあって、山は深く緑がとても美しい。・・・このような規制がかけられている地域は、本来、「緑地」として保全すべきで、公害施設など建設できるような場所ではありません。なのに、横須賀市はほとんど市民周知もなく、規制をすべて取っぱらってしまったのです。その手続きの正当性はきわめて不透明、市に質問しても回答もできない状況。

 そして、まっさきに手をつけたのが尾根にあたる部分でした。山~森~川~水田につらなる生態系を大事にする地域では、尾根には手をつけない」。これは、今年一月の雲南省深南部への旅で学んだことです。でも、目の前に広がる事業には「自然保護」の精神のカケラもなく、現場では、何台かのユンボが頂上を切り開いて道路工事の真っ最中。無残に伐採され、押しつぶされた樹木が積み重なっているのを見ると、ほんとに胸が痛みました。こんな計画をすんなり通してしまった横須賀市議会はもう不要な存在では。レベル低すぎ。

 「減容化施設」では、車から降りたとたん、何人かのメンバーが期せずして「あ、臭い」「喉が痛い」と声を出しました。この施設は今は閉鎖され、中を見ることはできませんでしたが(理由は不明)、今年3月までプラスチックを含む不燃物を圧縮処理していたので、発生した化学物質が今なお建物や周辺土壌にしみついているのでしょう。直近に人家があれば、「杉並病」(杉並病 – Wikipedia)や「寝屋川プラ被害」のような被害の訴えが出ていたはず。平作や長坂でも化学物質過敏症の被害が増えているのではないでしょうか。
 
 新ごみ焼却炉は、この施設の解体後に建設されます。このような古いごみ処理施設はアスベストなども使われており、汚染が蓄積しているため、解体には注意が必要です。汚染が拡散しないような解体法を選ぶのはもちろん、環境や人体保護への悪影響をできるかぎり低く抑えるため(悪影響がゼロということはありません)、事前に周辺住民やハイカーなどへの周知し、求められれば説明会も必要です。ところが、そのことを聞くと、広域処理施設建設室の担当者は顔を見合わせるだけで答えられず・・・何も考えていないのはあきらかでした。

 また、当初、施設の面積は約4haとされていましたが、それがなぜか四倍の16haとなり、その部分がそっくり都市計画決定されていますが、その理由も不明。そのほかに7haの発生土処分場を作る計画で、合計23haと思われます。↓は横須賀市のアセス資料: 
 発生土処分場    約7.0ha  (受け入土砂料:約48万㎥、受入機関:約5年間)
 廃棄物処理施設区域 約4.4ha  (注1)
   残置森林      約11.6ha  (注2)
注1:施設用地、場内道路、雨水調整池及び造成法面(擁壁含む)を含む
注2 約11.6haのうち必要面積を確保して廃棄物処理施設の面積とする

 まず、ごみ処理施設用地に「残置森林」などという項目があるなんて(しかもかなり広大)ありえん!! しかも、上の注2は「森林部分の4.4haが施設に使われる」と読めますが(その場合、全体の面積は23haではなく18.6haになる)、その意味を聞いても答えられない。
 ちなみに県のアセス審議会答申では、予定地面積は16+7の23haです。
「廃棄物処理施設の建設に伴い、約16.0ヘクタールの土地の造成工事を行い、隣接する用地に発生土を処分するため約7.0ヘクタールの発生土処分場を建設する」(2011年5月) http://www.pref.kanagawa.jp/uploaded/attachment/713152.pdf

 ところが、実際に購入した土地は、当初の購入予定面積4haの10倍の約40ha!! その理由を聞いても、誰も答えられない。・・・長くなるのでいったんここで切りますが、土地所有者が西武鉄道とくれば、そりゃあ、吉田市長と西武が何かの取引をしていてもおかしくない。

 すっかり見通しがよくなった尾根筋に立つと、半島西側から吹き付ける強い海風が感じられました。汚染排ガスは、この風によって眼下の平作地域に吹き下ろされ、そのまま低地に滞留することになるでしょう。また、衣笠と大楠山を結ぶすばらしいハイキングコースも寸断され、往時の面影は跡形もありません。
 焼却炉は誰も文句を言わない地域に建設されるもの。横須賀市民、何とか言ってよ!
 この日、わずか2時間の視察でとてもとても疲れたのは、施設周辺の汚染空気はもちろん、伐採された木々の無念さを感じてしまったからのようです。2015.5.9

横須賀ごみ処理施設の整備|横須賀市

www.city.yokosuka.kanagawa.jp 2014年9月24日
横須賀新ごみ、いよいよ着工へ | WONDERFUL WORLD

wonderful-ww.jugem.jp/?eid=932 2013年11月26日

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/