岐阜羽島衛生施設組合、焼却炉候補地決定までの怪しい手続き

 今の新聞は政府広報になってしまっているので、記事をさっと読んだだけでは現場で何が起きているのかわかりません。たとえば下の記事。普通なら大問題になる「ごみ問題」が、争点にさえならず現職の無投票当選が決まった・・・新聞は、「なぜ?」の疑問はないものとして、新市長を持ち上げるのみ・・・

焼却場、早期稼働へ意欲 羽島市長選、松井さん無投票再選

111505:00 http://news.goo.ne.jp/article/chuplus/region/chuplus-CK2016111502000032.html

 羽島市長選は十三日告示され、無所属で現職の松井聡さん65=自民、公明推薦=が立候補を届け出た。ほかに届け出はなく、松井さんが無投票で再選された。松井さんの選挙事務所には、国会議員や県内市町の首長らが駆けつけ、大勢の支援者とともに万歳三唱をして再選を祝った。松井さんはあいさつで「選挙戦で議論を深めるのが本則だが、(無投票再選は)もうちょっと頑張れという励ましと認識している」と話した。一期目の成果として、周辺市町と一緒に整備する新たなごみ焼却場の建設地決定をあげた。二〇二八年度とされる稼働時期について「少しでも完成までのタイムテーブル(予定)を短縮したい」と述べた。二期目に向け、「住民のニーズと将来人口をはかりに掛けながら、何が優先すべき施策なのか判断していく」と決意を語った。松井さんは元市職員で企画部長や会計管理者などを歴任。二〇一二年の前回市長選で初当選した。
行政手腕党派超え評価
【解説】自民、公明両党のほか、民進党の支援組織、連合岐阜も松井さんを推薦。対抗馬擁立の目立った動きはなかった。有権者の選択の機会はなくなってしまったが、松井さんの手堅い行政手腕への党派を超えた評価が、再選につながったと言える。松井さんの一期目の四年間では、羽島など二市二町の可燃ごみを受け入れる新たなごみ焼却場の建設予定地が今年六月、羽島市内に決まった。約十年も決められなかった難題だけに、松井さんの調整力に対する議会の評価は高まった。大型量販店「コストコ」の誘致に成功するなど、経済振興や雇用創出でも一定の成果があった。ただ、今後の四年間のかじ取りは容易ではない。(後略)

 

 この件は、本ブログでも2014年10月に( 岐阜羽島、次期ゴミ処理施設、暗礁に)、予定地は羽島市、最後は金銭的解決か、と書きましたが、上の記事に「広域(ごみ処理施設)」の語さえなく、新施設の予定地も書かれていないのは、この予想を裏付けているような気がします。

 旧ごみ処理場のある岐阜市境川地区は、昭和40年からずっとごみ焼却が続けられてきました。平成3年、ダイオキシン問題が出た時でも、行政は施設停止や閉鎖するどころか、地元を説き伏せて「22年までには焼却を停止する」という覚書を結んで処理を続けてきたのです。しかし、新候補地さがしは難しく、平成22年になっても焼却はとまらず、境川住民たちは、稼動をさらに平成3月末日まで延長するという覚書を結ばされていました・・・

でも、今年の3月31日には、最後の覚書に基づいて施設はなんとか停止され、住民たちは50年に及ぶ「焼却炉の下の生活」からようやく逃れられたのです。もっとも、今後は解体に伴う危険、土壌汚染の危険もあり、跡地は住居や施設などに利用できないことは覚悟しておかなければなりません。

 

 さてこの間、広域組合は大忙しでした。平成27年1月~3月まで候補地を公募したけれど、条件に適合した案件がなく困りきっていたところ、誰の入れ知恵か、平成27528日の羽島市自治委員会総会で、「次期ごみ処理施設建設事業を羽島市の最重要課題としてとらえ、同事業の推進を積極的に支持し、一団の土地所有者の意向を確認した場合、その一団の土地を区域内とする地元区は、土地所有者の意向を尊重し、理解を示すものとする」との決議がなされました。何と乱暴な。一部の地権者が「土地を焼却炉にしてもいいよ」と言ったら、その他の住民は文句を言わずそれに従えというわけです。はっきりいって憲法違反の決議ですが・・・しかし、「次期候補地」探しに必死な行政は、自分たちが何をやっているのかさえ気づきません。

 

 そして、そこにさらなる朗報が飛び込みます。平成27年12月18日、まるでこの計画にあわせたかのように羽島市平方第二土地区画整理組合(福寿町平方地区)が設立され、さらに、組合が保有する「保留地処分先について、第一候補を第一候補をごみ処理施設とする」と決定したのです。この組合規定はどういうものか知りませんが、130人もいる組合員には反対意見も絶対にあったはずです(だから「一団の」となっている)。

 ちなみに「保留地」とは、都市計画法に定めのない、恣意的な土地利用を可能にするためにわざわざ線引きからはずした土地、つまり穴抜けゾーニングです。一般市民はそういうものの存在さえ知りませんが、自治体には土地開発公社だけでなく、都計法の未線引き区域や法定外ゾーニング、法定外公共物など、さまざまな土地ストックを抱えていて、これが悪しき公共事業の種地になるわけです。たとえば、神奈川県横須賀市のごみ処理施設も、本来は緑地指定地域でごみ処理施設などとうていできないところですが、隣地の保留地所有者(西武)の意向などもあり、企業の利便のために山林を破壊したわけ。今でいうと「再エネ事業」にもこの手の土地が提供されている可能性もある。いずれにしても無法で、許せない話です。

 

 さて、区画整理組合はその後、羽島市の平方区役員説明会や住民説明会で方針を報告、羽島市長後などに「保留地へごみ処理施設を誘致したい」という要望書を出しています。さらに、それを受けて、「保留地が所在する自治会(平方区)から、羽島市長あてに、羽島市平方第二土地区画整理組合の意向を尊重し、ごみ処理施設誘致の要望に理解を示す申し入れ書が提出(318日)されましたwww.city.hashima.lg.jp/0000008498.html 2016/04/28

これもひどい。自治会は総会を開いたとは思えないし、ごみ処理施設の危険性を知っているとはさらに思えませんけどね。横須賀市でも、行政と直結する区長や自治会長などが焼却炉建設推進を独断で決め、住民には報告もなかったのですが、羽島市ではどうだったのでしょうか。いずれにしても、これは企業が「やり口」を教えあっているような気がします。本来なら住民の方が知恵を共有しなければならないのに。

 こというわけで、2016年6月30日、予定地が正式決定されたわけです。

羽島のごみ処理施設問題:用地決定 岐阜羽島衛生組合、羽島・平方地区に

mainichi.jp/articles/20160701/ddl/k21/010/012000c  2016/07/01

岐阜、羽島、岐南、笠松4市町で構成する岐阜羽島衛生施設組合は30日、次期ごみ処理施設について、羽島市福寿町の「平方第二土地区画整理組合」(組合員約130人)の土地に建設することを決めた。施設組合管理者の細江茂光・岐阜市長が発表した。施設組合によると、建設用地は東海道新幹線岐阜羽島駅から南西1・1キロの長良川左岸堤防沿いの約4・5用地を巡っては、羽島市下中町城屋敷と同市加賀野井にまたぐエリアを候補地にすると一度決定したが、一部地権者の反対で難航。…施設組合のごみ処理を巡っては、岐阜市境川にある処理施設が今年3月末に廃炉となり、岐阜市を除く3市町は県外での処理を余儀なくされている。

 

 えらく危ない綱渡りをくりかえしてきたものです。・・・もうわかりますね。松井氏が無投票当選したわけが。理由は、彼でないと問題が振り出しに戻りかねなかったから。そこで行政と業者は協同で対立候補の押さえ込みに走ったのではないかというのが私の見方です。いずれにしても、ひとつの記事から地域の現状が浮かびあがってくるものです。2016.11.28

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/