天国と地獄、貧困の中のWカップ

 FIFA批判もW杯批判もタブーのようなので、こちらのサイトで、Globalresearchがまとめた関連記事を紹介します。といってもさわり部分の簡訳のみ。写真がとても雄弁で、ブラジル貧困層(市民の34%!)の境遇がわかりますが、ぜひ原文も読んでみて。日本のオリンピックも、同じような目的で開催されることも忘れずに。
 Brazil on Strike: Class Struggle and the World Cup

 – Sabrina Fernandes
 ストの中のW杯 (06/19)で紹介した記事です。南米のスラムで遊ぶ子ども。


Brazil: Workers Struggle Trumps Sports Spectacle – 

Prof. James Petras
ブラジル:労働者の闘争が大スポーツイベントを打ち負かした
 

 階級闘争は、大規模なスポーツや娯楽のイベントによって混乱させられるとずっと言われてきた。階級意識が大衆意識に置き換わり、市民はメディア操作によって、孤立した受動的消費者に変えられ、スポーツのヒーロー、メロドラマ主人公、有名人に夢中になるようにされている。世界中で何十億人もが、大富豪の演出によるこれらのイベントーー野球のWシリーズ、サッカーWカップ、スーパーボウルーーを見ている。しかしブラジルでは、メディアがふりまくサッカーの「魅惑」を拒否し、史上最大のW杯への抗議が起きている。大規模イベントがなぜ「プロパガンダ」なのかを理解するには、それがいかに始まり、大衆運動の戦術的計画のコストとベネフィットはどうなのかを、政治的、経済的な文脈から理解しなければならない・・・
Brazil's Olympics and World Cup: Mega-Events and the Threat to Public Welfare 
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David Swanson Olympic Capitalism: Bread and Circuses Without the Bread
オリンピックとワールドカップ:ビッグイベントが住民の福祉を脅かすーーパンのない「パンとサーカス」

 ブラジルは今年のW杯と2016年のオリンピックのホスト国だ。その準備のために20万人が家を立ち退かされ、貧困家庭は排除された。公共サービスが中止され、武装警官と監視システムにカネがつぎこまれた。一度しか満席にならない超豪華なスタジアムを囚人の奴隷労働で建設し、過去50年、世界最大を誇っていた古いスタジアムは「改良」され、座席半分が豪華な席に変えられた。街角の反W杯壁画には、「病院や学校もFIFA並に」というメッセージが踊る。さまざまな「欠点」にもかかわらず、ブラジルがW杯やオリンピックを受け入れたのは、政府が欠点を欠点とみず、まさにその「欠点」のため受け入れたのだ。戦争の脅威を前にして、市民権を剥奪し、富を集中させるのと同じく、スポーツイベントもーー偶然かどうか無関係にーー国家の戦争準備に起源がある。

Brazil's Evolving Police State: Political Coercion and Repression – Sabrina Fernandes
ブラジルの進化する警察国家・政治的抑圧

 2014年、W杯や選挙、社会不満を見越して、ブラジルの都市部は国家安全保障上問題なっている。2013年以来、抗議行動や占領(オキュパイ)活動への参加団体が増え、多様化するにつれ、参加者は以前にもまして犯罪者扱いされるようになった。メディアによる攻撃、警察の残虐行為、社会運動や抗議活動に関する法制度の見直しなどが組み合わさって、現状に異議を唱えて行動する人々への抑圧と犯罪化はいっそう激しくなっている。(写真はスプレーガンを正面から吹きつける警官。一目で、何の武器も持っていないとわかる女性に、こういう犯罪行為が行われている。これはペッパースプレーだと思われるが、「非致死性武器」も、人によっては呼吸困難など死をもたらすことがわかっている。)
Race, Class and the World Cup in Brazil - 

 Mike LaSusa
人種、階級、ブラジルのワールドカップ

 ブラジル政府とビッグビジネスはなんとしてでもW杯を実施したかった。しかし、ブラジルの民衆ーー大多数は非白人ーーは、それよりもよりよい公共サービスを望んでいた。政府の調査によると、カラードの収入は白人のそれの半分以下で、基本的な公共サービス(教育、福祉、衛生、医療など)を得にくいことがわかっている。ブラジルは、総額約110億ドルのコストと、少なくとも8人の人命で、史上最も高額なW杯を迎えようとしている。2007年のW杯は、圧倒的多数のブラジル人が支持したが、最近の世論調査では大多数がそれに反対している。
(山本注:日本人は、白人種がカラードピープルをどう見ているか知らない。私は若い頃、ある欧州人から、有色人種は「野蛮な」「異星人」であり、「駆除すべき」だという意見を聞き、以後、欧米白人種を信用していない。また、日本の右翼は、欧米の知識階級が、日本がアメリカの傀儡であることをよく知っていて、日本人に憐れみと軽蔑の念を抱いていることを知らない・・・ま、そこが右翼のおめでたいところかも。2014・6・20)

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/