大阪市、アスベストを含むがれきを試験焼却

  いよいよ明日に迫った大阪の試験焼却。最後の努力をしなければならないのに、市民の動きは、といえば、「(説明会での)逮捕者奪還闘争」に必死で、反がれき運動は急速におとろえを見せています。ところが、その影で大阪市は着々と違法行為をすすめていたのです。
【大阪に来たがれきからアスベストが!】 
 実は、試験焼却用のがれきからアスベストが1.8本/l見つかっていました。これは大阪市のHPにも発表されている通り。大気汚染防止法の「基準値」は10本以上ですが、大阪市の場合、今年6月に作ったがれきの受け入れ指針で、1リットルあたり1本以上の数値が出れば、きちんと分析する事を定めていました。これは平成22年、環境省などが出した、アスベスのモニタリングマニュアルhttp://www.env.go.jp/air/asbestos/monitoring_manu/rev4_full.pdfに準拠したものです。
 同マニュアルによれば、一般環境のアスベスト濃度は、だいたい0.5 f/L 以下。大阪市でも、がれき受け入れ前の環境では0.45本/Lとほぼこの値内でした。ところが、がれき受け入れ直後、数値はその四倍の1.8に。この場合、「位相差顕微鏡法で総繊維を計測し、やや高い値(目安は1 f/L超)が計測されたサンプルについては、分析走査電子顕微鏡等によりアスベストを同定して計数すること」とされており、「場合によっては最初から電子顕微鏡で位相差顕微鏡法と同等のサイズのアスベストを計数することも推奨する」とあります。
 
【こっそり分析に回し、試験焼却発表!】
 これを受けて、大阪市は11月24日、アスベスト分析を中外テクノス神戸支社に依頼しました。分析には10日以上かかるため、結果が出るのは早くても12月4日頃。それを受けて試験焼却の日程が発表される・・・はずでした。ところが、大阪市環境局長は、その二日後の26日には、試験焼却を11月29日と30日に行う、と発表してしまったのです。しかも、それを大阪市に指示したのは、本来なら公害物質を取り締まる立場にある大阪府資源循環局だったというから、罪深い。
【もともとアスベスト含有がれきは来ない予定だった!】
 ことはこれに留まりません。これを知った大阪市民や議員が騒いだところ(今日、27日の話)、大阪府はなんと「安全宣言を出すから、燃して下さい」と言ったとか。おいおい!そりゃ違法ってもんでしょうが。だいたい、大阪府のHPには、こう書いてある。
Q2‐13 アスベストが飛散することはないのですか。  
 A2‐13 アスベストが含まれた廃棄物については、処理指針において受入対象廃棄物から除外しており、そもそも受入れない方針です。岩手県では、あらかじめアスベストを使用していたと分かっている建物を解体する際には、飛散防止の措置をしたうえで、別ルートで適正に処理しています。1次仮置場においても、重機や人の手によって可燃物や不燃物などに選別する際に、阪神淡路大震災時の選別作業をされた経験豊富な方から専門教育を受けた監視員のもとで、複数名の体制で、アスベストが使われている可能性のある「スレート板」などは丁寧に取り除いています。
 また、2次仮置場でも、アスベストが使われている可能性のある「スレート板」の破片などを丁寧に手作業で取り除いており、可燃物にアスベストが含まれないような作業工程となっています。
 加えて、岩手県では仮置場の作業場所の環境濃度を、ファイバーモニターという、アスベスト以外も含めた細かい繊維を測定する方法により、毎日測定しているほか、公定法による測定も、定期的に実施しており、その測定結果は、いずれも1Lあたり10本を十分下回る値となっています。
 また、平成24年11月に試験処理を行う災害廃棄物(木くずを中心とした可燃物)の選別・破砕を行う際に岩手県の2次仮置場で実施したアスベスト(総繊維数として測定)の環境濃度や、大阪府内の積替施設で実施したアスベスト(総繊維数として測定)の環境濃度についても、1リットルあたり10本を十分に下回る値でした。このように、アスベストを含む廃棄物については、現地で十分な除去対策が行われていますが、念のため大阪においても、積替施設で作業を行う際にアスベスト測定を行います
【条例違反の試験焼却】
 「アスベストを含む廃棄物はそもそも受け入れない」と言っていた大阪府が、環境省マニュアルにも大阪市の指針にもそむいて、なんで「安全宣言」なんて出せるのよ! おまけに、分析結果が出る前に燃やしてしまえというのは、単なる条例違反ではなく、証拠隠滅を図った環境犯罪じゃないか!
 「大阪府(の公務員)は質が悪い」って聞いていたけど、ウソじゃなかった・・・
 大阪市にしても、自ら策定したがれき処理指針にそむいては、やはり法令違反だからね。それに、これは100トンのがれきのわずか5箇所をはかって発見された量であり、がれき全体量を考えると、とんでももない量のアスベストが含まれているとみるべきでしょう。だって、地震・津波の災害廃棄物って、もともとそういうものを大量に含んでいるんだから。(その他の有害物質はノータッチ)。なお、下は今日のニュース。
936事業所を公表=11年度認定の石綿被害―厚労省
時事通信 11月28日(水)14時51分配信
 厚生労働省は28日、アスベスト(石綿)が原因の疾病で2011年度に労災認定を受けたり、遺族が給付金を支給されたりした人が働いていた936事業所の名称を同省ホームページなどで公表した。うち初めて公表されたのは697事業所。公表は、作業中に石綿を吸い込んでいた可能性がある従業員への注意喚起や、健康への影響が懸念される事業所の周辺住民への周知が目的。労災認定を受けた1144人が働いていた1005事業所のうち、個人事業主(一人親方)や事業所が不明な69カ所を除いた分が明らかにされた。ホームページに事業所一覧を掲載するほか、29、30両日の午前10時~午後5時に電話相談を受ける。番号は03(3595)3402。厚労省は「石綿による疾患は20~40年の潜伏期間を経て発症する。自分の働いていた事業所を確認してほしい」としている。http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20121128-00000079-jij-soci
 がれき広域処理がこうやって公害を広げ、市民に緩慢な死をもたらす犯罪であることに市民が気づかない限り、汚染事業は続きます。明日朝、この記事を読んだ関西の方、どうぞ此花区の舞洲工場にかけつけて。あるいは、↑の厚労省に電話して試験焼却の中止を求めて。うー、ほんと、公務員をみな死刑にしてやりたい。2012.11.28
有害物質http://www.pref.osaka.jp/shigenjunkan/haikibutukouikishori/shiken.html 
大阪府HP。アスベスト(25日)http://www.pref.osaka.jp/shigenjunkan/haikibutukouikishori/tumikae_shiken.html
大阪市立環境科学研究所(アスベストの専門家が3、4人もいるそうな)http://www.city.osaka.lg.jp/kenko/page/0000008126.html  
アスベスト労災認定、1037件=石綿肺は68件-厚労省
労災目安、被ばく100ミリ超=原発作業員の胃がんなど-厚労省
復興工事で死傷者438人=震災1年余、労災深刻-被災3県

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/