偽りの「再生エネ」…風力発電をぶっとばせ

 私は風力・太陽光・バイオマスなどいわゆる「再生エネルギー(再生エネ、再エネ、新エネ、自然エネとも言う)事業に反対しています。その多くが大規模開発を伴い、回復不可能な環境影響、人体被害を与えるからで、特に「風力」の低周波被害は、各地で問題が顕在化し、深刻な被害が出ています(なお、ごく限定された地域の、たとえば温泉による地域暖房のようなものまでは反対していません)。
 困るのは、「自然エネ」というネーミングに惹かれて賛成する人が多いこと。日弁連も、FOEやグリーンピースなどNGOも、各地の商業界も、そして、何より「反原発派」も大賛成。その主張は、「放射能が出ないから。多少、電力価格が上がっても仕方がない」というものですが、これって非常におかしい。 
 私たちは不要不急なものに、無駄な電力を使いすぎているんです。
 「原発なくせ」、の次に来るべきは、節電と無駄な電気の使用をやめることですが、企業と関係省庁の後押しによって、賛成派はそんなことはまったく無視し、エネルギー源の確保ばかり気にしているのが実情。これに「再エネ法」の利権が加わって、各地で風力発電所や太陽光発電所が何の歯止めもなく建設されており、数年後には深刻な廃棄物問題になるでしょう(あんなでかい風車を、誰が、どうやって処理すんだ!)。
 補助金狙いで再エネに参戦した企業は、その被害についての知識どころか、倫理観も責任感もありません。で、施設完成後、問題に気づいた住民が被害を訴えても、時すでに遅し。企業は早い段階で市町村長や地元ボスを丸め込んでいるため、何の責任もとらずさっさととんずらし、住民は泣き寝入り・・・原発建設のシステムと同じなんです。
 で、今日は、山口県下関市安岡沖に計画されていた、前田建設工業の大型洋上風力発電計画のアセスが一時中断した、というニュースをご紹介しましょう。以下、「安岡洋上風力発電に反対する会」のHPhttp://www.yasuoka-wind.com/の記事から(強調山本)。

平成26年10月17日:経済産業省・環境調査中止決定
電力安全課「地域住民の理解が得られていなめ」

 下関市の安岡沖洋上風力発電建設事業計画について、前田建設工業(東京)が実施した環境アセス調査のクロスチェックと称して、
経済産業省が委託業者を通じて地元ひびき漁協(旧安岡漁協)漁民に通知していた環境調査(藻場・潮間帯生物調査)は、16日、経産省から関係者に「中止することになった」との決定が伝えられた。中止決定の第一報は、委託業者から安岡地元住民関係者に伝えられた。その後、この関係者が経産省電力安全課担当者に直接電話をし、中止が事実であることを確認した。理由を質したところ、「地域住民の理解が得られていないのでクロスチェック調査を中止する」とのことであった。
 これに先立つ14日、安岡漁港の漁民たちは経産省の委託業者を呼び、調査を中止するよう強く申し入れていた。申し入れはこれまでの地域の反対運動や、周辺自治会、企業、医師会、他地区の漁協などからの反対表明や陳情書・反対要望書など、提出履歴を具体的に示しておこなわれた。さらに、前田建設工業(東京)と下関地域統括漁協幹部との裏金のやりとりについても事実に則して伝えた。さいごに、「経産省があくまで調査を実施するというなら、われわれ漁師は必ずこれを阻止する」「この問題は、我々漁師の生活や命がかかっているのだ、命がけだ」と訴えた。これを受けた委託業者は、「経産省担当者に必ず伝える」と言い残し、同日帰京したのであった。

市長・環境部長へ  経済産業省が、住民の理解が得られていないと判断したことは正しい認識だ。結果として、経産省が自ら計画した環境調査を断念することになった。前田建設工業(東京)は、経産省が断念した環境調査を継続するつもりなのか。その場合、企業の信用失墜につながることを覚悟しなければならないだろう。中尾市長や砂原環境部長など、これまでの前田建設工業(東京)を擁護してきた市政と行政の責任者は、経済産業省がみずから環境調査を中止したことを重く受け止めなければならない。これまで、公の場で示してきた逃げ隠れする姿勢を改めなければ、今まで以上に市民の反発をかうだろう。安岡沖洋上風力発電事業は、地方の町の小さな問題ではなくなったことを一刻も早く認識し、市民・地域住民にとって価値ある対策を講じてほしい。あなた方も同じ下関市民なのだろうから。

 この事業は、アセスどころか、事業そのものも違法です。なぜって、海面の使用について絶対的な権利(漁業権といいます)を持つ漁協が、その権利にもとづいて早い段階で反対決議をあげているんだから、どう転んでも着工できないわけ。困った前田建設は、地元ボスにコンタクトして裏工作したようですが(裏金のやりとり…)、それでもうまくゆかず、ついに経産省に泣きついたんでしょう。でも、経産省は再エネに補助金は出せるけど、事業のアセスに首を突っ込む権限も、根拠法もない。環境調査の能力なんぞもあるはずがない。で、どこぞの業者にアセスを丸投げしたところ、業者は事実(漁協も住民も大反対)を知り、びっくりして担当者に
伝えて中止になったのでしょう。

 ところで、漁協権については北九州市の漁協長射殺事件、その背後は | WONDERFUL WORLDでも書きました。北九州市の「反がれき派」が、「漁協は反対だから、がれきは止められる」からと、市民に漁民へコンタクトさせないようにしていたけど、漁協は反対などしておらず、がれき焼却灰受け入れにあっさり同意したという「事件」。この漁協の組合長は二代に渡って射殺されているから、そこには利権と市民運動がからむ陰謀があったのでしょう。漁業権は、ひとり漁協だけのものではなくの地域の防波堤です。市民と漁民が一緒になって漁業権を守れば郷土は防衛できますが、手放せば、第二、第三の双葉町・大熊町(フクイチ立地)、北九州(エコタウンの公害事業集積地)になることでしょう・・・安岡は頑張って欲しい! 2014.10.23

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/