佐那河内、「ごみ焼却炉」をめぐって選挙戦始まる

  徳島市の南に、県内唯一の村である佐那河内村があります。人口わずか2500人あまり。ごみの徹底分別で有名なこの町に、広域(徳島市、小松島市、勝浦町、松茂町、北島町、石井町など七市町村)の焼却炉を作るという計画が明らかになったのはちょうど一年前。寝耳に水の住民はもちろん大反対、村議会も同意せず、行き詰った町長は、9月議会で突然、辞職を表明してしまいます。そして、同施設建設をかけての「出直し村長選」が始まっています。

佐那河内村長選スタート ごみ施設建設が争点
2015/10/27
14:09
 http://www.topics.or.jp/localNews/news/2015/10/2015_14459225816575.html
 佐那河内村に計画されている広域ごみ処理施設建設などを争点とする出直し村長選が27日、告示された。立候補したのはいずれも無所属で、前村長の原仁志氏(63)=同村下=と、新人で元JA徳島市八万支所長の岩城福治氏(58)=同村上=の2人。正午時点で他に立候補の動きはな
く、一騎打ちになるとみられる。計画の推進を図る原氏と、白紙撤回を訴える岩城氏による激しい論戦が繰り広げられそうだ。投開票は111日。原陣営は午前8時半から同村上の事務所前で出陣式を開き、250人(陣営発表)が集まった。原氏はごみ処理施設について「村の環境に悪い影響を及ぼさないと確信している」と強調。ごみ処理などで他の自治体と役割分担する広域行政の必要性を説き「広域行政の中で責任を持ち、地元対策費として18億円の基金などを得ることで、他の市町に負けない行政サービスを次の若い世代に残していきたい」と訴え
た。岩城陣営も午前8時半から同村上の事務所で250人(陣営発表)を集めて出陣式を行った。岩城氏は「村民が知らないうちに(ごみ処理施設建設計画を)勝手に進め、村が真っ二つになってしまった」と、原氏の計画の進め方を批判。「計画を白紙撤回し、村民と情報共有しながら議論を尽くして結論を出す。皆さんの手で計画を止めましょう」と、住民の意向を尊重する姿勢をアピールし支持を呼び掛けた。

 ・・・わずか18億円で村がごみ処理施設に売られたわけです。私は8月に同地に呼ばれ、ごみ処理施設は公害施設であること、この計画には不透明な部分が多すぎること、さまざまな情報から放射性廃棄物がやってきかねないこと、絶対阻止が必要だ、などと話しました。もちろん、それなりの根拠があってのことです。
 ①普通、広域化計画といえば都道府県の所管で、徳島県も1998年に「徳島県ごみ処理広域化計画」を策定していましたが、県は「ウチには関係ない」とひたすら逃げるのです。
 ②しかし、今回の「計画」は県主導の協議会やら検討会がベースになっていたため、それらの議事録を公開請求したところ、肝心のものは「存在していない」と情報隠蔽。
 ③さらに、初めの段階の話し合いに環境省(出先機関、高松事務所の職員らしい)が参与していました。普通、こういうことはありえず、「特別の目的」があったと考えられます。
 ④事業誘致に走ったと考えられる人物が、「放射性廃棄物」などと関係していること、それを肯定する発言もあること(あまり露骨には書けません)。
 ⑤環境省の「次の」事業として、放射性廃棄物の処理は避けて通れず、引き受けるところならどこでも飛びつく勢いなこと

 2500人の佐那河内村に、毎日、376,000分のごみが運び込まれるのは、環境レイシズムそのものですが、焼却屋は、最初からこの人口の少なさを狙ったようです。もちろん、売郷奴もいるわけで。さらに腹が立つのは、佐那河内村の住民は、率先してごみ減量化に努力し、次のような目に見える成果をあげていることです。

・ゴミ処理経費の縮減 平成13年度約4,400万円が平成18年度約2,000万円
・縮減された経費で9歳未満の乳幼児医療費無料化
・住民の発案で分別品目が、資源ゴミ集積所21分別、全体で33分別となった。
・住民のアイデアで指定ゴミ袋が減った。(5種類から1種類)
・ゴミ分別と集積所管理から生まれる新たな地域の公共と共同意識の再認識 等々

 (http://www.zck.or.jp/forum/forum/2605/2605.htm)

 住民がごみ処理の経費を減らして小児医療の無料化を達成するなんて、他の地域では考えられない快挙! なのにそんな佐那河内に、しかも美しい園瀬川の上流にごみ焼却炉を持ってくるとは狂気の沙汰、環境省の嫌がらせとしか思えません。環境省といえば、「がれきの広域処理」と「産廃の全国拡散」で放射性物質を全土に広く行き渡らせた汚染省。次には、廃炉ごみ、使用済み核燃料廃棄物などの処理モデルを成功させようとやっきになっていることを忘れないでほしい。
 佐那河内村はーーこういう施設がなければーー本気で移住を勧めたい、とても美しい村です。現に、大阪のがれき焼却から逃れた避難ママもいました。人口を増やしたければ、村をクリーンにしておくことが一番。誰が公害施設がある村に住みたがるでしょう。四国や徳島県にお知り合いがいたら、どうぞこの情報を流してあげてください。そして、反焼却派を応援するよう、お伝えください。2015.10.29

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/