中国でごみ焼却炉計画に住民が大抗議

 日本人は「焼却炉はゴミ処理に絶対必要」「焼却炉はクリーンセンター」という戯言を信じ、建設計画に反対するどころか、「温水プールを」「道路改修を」などオネダリするありさまですが、中国は事情が違う。地方の住民でも「焼却炉は深刻な公害施設。ダイオキシン、PM2.5、有害重金属を排出し、がん、心臓病、先天障害をもたらす」ことをちゃんと理解していて、計画が持ち上がると激烈な反対運動が展開されます。特に広東省はごみ処理施設建設では強い反対運動があるので有名。

中国のゴミ処理施設
反対住民と警察が衝突

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NHKhttp://www3.nhk.or.jp/news/html/20150408/k10010041951000.html
 
中国で、ゴミ処理施設の建設に反対する住民が政府の施設を取り囲むなどして警察と衝突し、地元政府が計画の撤回に追い込まれ、深刻化する環境汚染に対する住民の強い不満がうかがえます。衝突が起きたのは、中国南部、広東省の羅定市で、住民によりますと、6日から7日にかけ、ゴミ処理施設の建設に反対する大勢の住民が建設予定地の工場や地元政府の施設に押しかけました。住民は警備にあたっていた警官隊と衝突し、子どもを含む数人がけがをしたり拘束されたりしたということです。また、インターネット上には、参加者が工場の施設の一部や警察の車両を壊す様子とみられる写真や動画が投稿されています。こうした状況に対して、地元政府は8日声明を出し、ゴミ処理施設の計画を撤回する決定をしたと明らかにするとともに、住民に対して過激な抗議活動をしないよう呼びかけました。中国では、ゴミ処理施設ができれば周辺の大気や水の汚染がさらに悪化するとして、各地で大規模な抗議活動が相次いでいて、深刻化する環境汚染に対する住民の強い不満がうかがえます

 さっそく検索しました。この↓記事がよくわかるので、それを中心に山本の解説を加えます。(广东反垃圾焚烧厂升级:万人围攻警局 中小学罢课)
http://www.wenxuecity.com/news/2015/04/07/4167164.html
 リード部分の記事が激しい。「広東省雲浮羅定朗塘鎮の住民数万は、華潤セメントの焼却炉建設計画を不満として、二日に渡り抗議行動を行った。デモ参加者は当地の派出所に押し入り、地方政府の役所を包囲し、内部を損壊、多くの警察の車を破壊し、公安警察と衝突した。現場情報によれば数十名の負傷者が出、20数人が逮捕されている。現在双方が対峙中。現地の小中学校はすべて休校となった。村民は政府が計画停止を宣言するまで抗議をやめないと述べている」

 村民のこのような強い姿勢には、もっともな理由がありました。役所はこの計画を公示することもせず、アセスさえ行っていない中で、事業主体の華潤セメント(华润水泥)社と建設契約を結んでいたのです。しかも、計画によれば施設は今年末までに完成予定だったというから、ひどい。写真を見ればわかりますが、予定地はおそらくセメント工場付近でしょう。
 現地の住民はネットで行動を呼びかけていました。
 「街中の人口密集地に大型焼却炉を建てるなんて、初めから民意などまったく眼中にないんだ。できてしまえば一日300トン以上の産廃・一廃が燃やされる。必ずこの地域の大気が毒気で満たされる」「清明節(今年は4月5~6日)にデモをやろう。農作業は一時中止し、孫子の健康のために行動を起こそう、華潤を羅定から追い出そう」

 こうなると、すぐ行動を起こすのが中国人(山本も経験上、よく知っています)。呼びかけに応じて各村から約5000名もの人が集まり、大きな反対の横断幕をかかげて役所とセメント工場の前に集合したのですが・・・彼らは思いもかけず、公安警察、特別警察及び武装警官部隊約500人の「鎮圧」に遭遇したのです。警官隊はペッパースプレーや催涙弾を使い、棍棒で参加者を殴るなど「実力行使」。子供や老人でさえ許さなかったといいます。(・・・反焼却運動で警察がこれほど暴力に訴えたのを見たのは初めてです)。
 ここまで来ると火に油。怒り狂った村民は抗議行動を激化させ、現地に通じる省道を封鎖し、セメント工場や役所を包囲したのでした・・・そのうえで派出所や刑務室に攻め入り、内部を破壊し、セメント工場の門を壊して火を付けるなど「戦争」を展開したわけです。休校になった子どもたちもこれを声援したというのが、なんとも中国。これに対し、公安は周辺市から武装警官の増援を求め、現地に通じる高速道路の出口を塞ぎ(市民の応援が駆けつけるのを阻むためでしょう)、現地を取材しようという記者を厳しく調査し、部外者の現地入りを防いだのです。

 結果として、政府は焼却炉建設計画の一時停止に同意したようですが、住民はこれに不満を示しています。なぜなら、政府は二年前、このセメント工場の建設にあたって住民の同意を取ろうともせず、その結果、工場は深刻な汚染を引き起こし、待機中に塵芥が満ち、常に騒音が響くという状況に立ち至っているのです。住民が、その歴史をまたくりかえしたくないと思うのは当然でしょう。
 「終わりにしてほしいんだ。一時停止ではなく。一時停止しておいて、若者たちが街を出ていくのを待ち(反対運動の主力は、どこも若者たちです)、また同じ計画を出してきたら、もう止められないじゃないか」「私たちは絶対に、子どもたちが悪臭・有毒物質を吐き出すごみ焼却炉の毒害を経験させたくない!」
 …これを読んで、今横須賀市が進めている「新ごみ焼却炉」が、こことまったく同じ背景だということに気づき、ぞっとしました。横須賀市の吉田市長が重ねてきたさまざまな違法は、優に一冊の本になりそうですが、それはまた次の機会に。2015.4.9

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/