マルクール事故⑤ 核兵器を処理していた?

  フランスの「議会科学技術評価局(OPECST)」の1997のリポートによれば、当時建設中だったこの溶融炉は、1958年以来、マルクールの核複合施設で発生した大量の廃棄物=軍の活動によって生じた=を焼却するのが主目的だと書かれていました。しかし最近では、増大する原発ごみ、及び閉鎖原子炉の解体ごみで、溶融炉の大規模化が求められていたようです。


  マルクールには三基もの爆弾用プルトニウム製造原子炉(G1, G2, G3)、核爆弾の殻製造工場(UP1)、トリチウム爆弾製造用原子炉(Celestin)があり、そこから4000トンの金属インゴット、同じく4000トンのスチール、そして2000トンの鉛、そして1100トンものコンクリートが生み出されていたのです。もちろんすべて放射能を帯びています。その他、非常に毒性の高い核分裂生成物である灰とマイナー・アクチナイドが553トン生まれていました。アクチノイドとは、使用済み核燃料に含まれる15の元素の総称を言いますが、自然界には存在しない人工生成物であり、その挙動はほとんど不明だそう。市民は今後、こういうことにも目を向ける必要があります。
 とにかく、犠牲者の状況から、当時、溶融炉では何らかの核兵器を処理していた疑いが非常に強い。それにもかかわらず、ソコデイ社が処理していたのはEDFとアレバの民間企業の廃棄物であり、放射能レベルも低い、というのが政府の公式発表。もちろん、軍の関与については固く口を閉ざしており、今後もまともな調査報告は期待できません。
 フランスは日本では人気がある国でしょうね・・・でもこの国の近・現代史は決してほめられたものではありません。特に、最近のリビア攻撃(国際法違反だっ!)には、この国の帝国主義的な野蛮さがはっきり現れています。彼らは植民地を取り戻すことができれば、何だってやるんですね。
 何しろ、フランスにはまだ核の最終処分場(深層処分)がありません。また、原発輸出は国策です。したがって、再・植民地と化したリビアに、核のごみ処分場を持ち込んでもちっとも不思議じゃない。もちろん、アフリカでのウラン採取もぐっとやりやすくなるでしょう。サルコジ大統領は、フクシマ後、日本を訪問した初めての国家元首として名を売りましたが、これは彼が立派な核ロビイストだから。日本とは三菱との結びつきが堅固。
 ・・・長くなるのでこのへんでやめておきますが、マルクール周辺の健康影響についても、対立する二つの報告書を見つけました。「大丈夫」ってのと、「ガン頻発地」というものと。
 ウソで固めないと汚染事業は成り立たないのは、焼却炉も同じです。
 市民はどちらを信用するか、ではなく、ウソを見抜く目を持たなきゃ。2011.10.21
(参考)
http://enenews.com/report-marcoule-victim-was-irradiated-buried-in-shielded-coffin-locals-disagree-with-govt-radiation-story-failure-to-disclose-what-was-burned-during-explosion

http://www.dailymail.co.uk/news/article-2036589/France-nuclear-explosion-Man-dies-processing-plant-near-French-Riviera.html#ixzz1ZsQb26uB

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/