がれき広域に反対じゃなかった、陸前高田市長

  以前、このサイトで、岩手県陸前高田市の戸羽市長を、「がれき広域処理に反対」している、と紹介したことがありました。でも、47NEWSのインタビュー記事【命を守る基準づくりを】日本で同じことは二度と起こってほしくない-避難の線引き、自主防災組織、地域防災計画、間に合うものは改善し教訓いかしてほしい-http://www.47news.jp/47topics/e/228039.php(4月12日)によれば、それは「誤解」だそうです。以下、この記事から、この市長さんの発言のごく一部を取り出します。下線筆者。全文は上のサイトからご覧下さい。

         ************************



 陸前高田市はこれまで積極的に他の自治体に震災がれきの受け入れはお願いしていなかったけれども、受け入れてくださるところがあれば、被災地全体の問題としてありがたいと思います。私がプラント建設を考えたのは事実です。昨年5月とか6月の時点の話です。ただそこで蹴っ飛ばされてしまって、もう1年もたってますから。プラントをつくるにも環境影響評価(アセスメント)が必要で、アセスに3年もかかったんじゃ話にならない、だから事実上無理だな、と思っているんですが。
 私の仲間の市長さんたちも、がれきの受け入れについて前向きにやってくれているんですが、被災地は受け入れてくれとは言ってないとか、私の言葉を引用されて批判されたり、私の著書などの一部の言葉を引用したり、リツートされているという現象があります。私が言いたいのは、陸前高田の市長はこういうことを言って、(提案を)蹴っ飛ばされたと、そこまでは事実です。だけど、地元で雇用が生まれるべきものなのに、それさえもいろんな利権が邪魔をしているということに非常に憤慨しているとか、そういう話が広がっている。いつ俺が憤慨した、いつそんなこと言ったんだということなんです
 私の言葉尻をとらえてまことしやかに被災地がこう言っているとか事実と違うことが流れて、ほかの被災地に迷惑を掛けるのは本意ではありません
 陸前高田市の場合は大船渡市のセメント会社さんに処理をしていただく方針だけは出ているので、時間はかかっても処理できると思っています。ただ地域によってはその方途さえもいまだに見つかっていない地域もあります、自分のところの焼却炉は老朽化して使えない、あるいは通常のごみだけでいっぱいで使えないと、そういう人たちからしたら、もうわらにもすがりたい思いがあるわけですよね。この地域はこのままじゃ100年経ってもできないよというところがあるわけですから。
 反対するのは限られた人たちのようで、どこかの市長さんががれきの受け入れに言及すると必ずすごい勢いでファクスが来たり、電話が来る。だけど、電話ってディスプレイに番号が出るし、そうすると全然関係ないところからだったりするんです。
 がれきの広域処理については本当に心配している人はいると思うんです。妊娠されてる方とか、小さなお子さんを育てているお母さんたちは心配ですよね、そういう気持ちは我々も分かるから、無理になんて気はさらさらないです。
 がれきの焼却灰埋め立て基準である放射性セシウム1キログラム当たり8000ベクレルという国の基準も、8000ベクレルなら良くて8001ベクレルならだめだという理由が分かりにくい。だから、これまでチェルノブイリ原発事故に関わった科学者やいろんな方々に入ってもらって、この数値だったらいいだろうという基準を示して、なおかつその2分の1とか5分の1とかってやれば、私はある程度の国民の皆さんには理解してもらえると思うんですね。
 陸前高田のようなシンボリックな被災地がどう復興していくか、世界が日本を見ていますよと。だか ら、ここをちゃんと復興させたら、日本の力が、やっぱり日本はすごい国だなと絶対思ってもらえますよ、と。20年もかけて良くなっていったんじゃたいしたことありません。短期間で、こんなに短い時間にこんなにやったんだ、あるいはこんなに素晴らしい町になったのかというところを見せるのが、日本を見直してもらうことが日本経済の立ち直る、世界に企業が出て行けるチャンスだと思うんですよ。被災地はとにかく一気に短時間でやれと。そしてその中には当然企業のノウハウも入れなさいというような見せ方っていうのがあると思います。
 あとはマスコミの姿勢ですね。がれきなんて口に入るものじゃないんです。がれきばっかりマスコミは騒ぐけどね、口に入っているものは絶対大変ですよ。誰も言わないじゃん、そんなこと。だから、マスコミっていうのは何なの?と思ってますよ、実際。お世話にもなっているけど。本当に安全とか子どもたちの将来とかっていうならやっぱり食べるものだと思います。身体に蓄積されるんだから。だってそこに放射性物質を被ったがれきがあったって、そこに寄り添って寝るわけじゃないじゃないですか。東京にだって放射線はあるし、だから、やっぱり食べるもの、国としてどう安全を確保していくかということを問題にすべきだと私は思うんですよね。
 
 おそらくこのがれきの問題にかたが付けば、今度は食べ物の話題になるんでしょうけど、、我々の地域で言えば、一次産業をやっていて魚とかね、野菜とかね、死活問題です。これ、どうせ問題になるなら早い方がいいです。養殖漁業なんて3年やって初めてお金になるんです。その時に陸前高田で採れたカキはやばいから食うなとか言われたら、大変なことになります。
           *************************
 以下は山本のコメント。
 
 う、う~ん。政治家としてはあいまいな物言いで、圧力もあったのではと感じられるけど、とにかく、「がれき広域処理に反対しているわけではない」と言いたいようですね。だとしたら、誤解していました。すみません。でも、この方の理解にはいろいろ問題もあるので、ここで意見を述べておくことにします。誰か彼の耳に入れてくれ~
 ★貴市ではがれきをセメント工場で焼却予定とのことですが、セメント工場は最大の水銀の排出源であることをご存知でしょうか。したがって、がれき焼却によって、放射能を帯びた水銀が拡散され、あなたが守るべき市民を害するこになるのをお忘れなく。
 ★がれきは口に入るものではありません。しかし、がれき焼却による排ガスは、吸入レベルのPMを大量に排出し、簡単に人を内部被爆させるため、食べ物の汚染より深刻な事態を招きます。食べ物なら、線量が高いものは避けることができますが、空気をしゃだんすることはできません。ちなみに、私は東北の広い地域で、農林水産業は相当長期にわたって統制する必要があると考えます。
 ★反対はごく一部、との意見は何を根拠にされているのか? 政府とマスコミによる、反対運動へのネガティブキャンペーンをそのまま信じていませんか? 今の反がれきの運動は、反原発と連動するものであり、それまで政治運動とはほとんど無関係だった主婦層を中心に爆発的に広がっています。これは日本ではかつてなかった社会現象で、納税者たる市民が、原発事故の大きさを正確に、そして真剣にとらえていることの現われです。およそ自分で考える力のある市民なら、非合理ながれき広域化を受け入れるはずはありません。
 ★がれき広域処理は東電救済・延命につながります。それは、汚染を全国に等しく拡大することによって、事故を起こした東電・政府の保障に対する責任をあいまいにし、あるいは無にし、比較的線量の低い地域もフクシマ化することです。こうして、日本にはどこにも逃げ場がなくなり、将来世代の希望もなくなります。
 ★線量の規準がわかりにくいのは、政府のがれき広域処理の本当の目的=汚染拡散を知られまいと、ごまかしを重ねているためです。政府のウソは事故発生時から始まったのはすでに報道であきらかですが、その政府に基準作りを求めて自治体としての判断力を投げ捨てないでほしい。それは、「安全って言ってほしい、そしたら信じるから」ということに他なりません。
 ★短期間の復興を経済再建のPRにしたいとのことですが、放射能汚染を封じ込めない限り、復興などありえません。自分や家族の生命を危機にさらすかもしれない地域に、誰が喜んで移り住み、事業を起こすでしょうか。たとえ高台に移転しも、がれき焼却による汚染はおいかけてきます。
 ★今、政府が広域処理しようとしているがれきは、通常の災害廃棄物ではないことを認識してください。フクシマは収束しておらず、これからも危機的な状況はいくつもあるでしょう。とりあえず、がれきは最小限の移動で、燃さずに埋め立てることをおすすめします。2012.4.16 
 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/