「基準値以下」の放射性廃棄物焼却? 絶対NG

 「放射性廃棄物」の処理、低レベルの知事は、県民の健康被害、県産物の風評被害を招くばかり。宮城県民のみなさん、抵抗してください。

 

宮城県が基準以下廃棄物の焼却を市町村に要請

2016.11.3 20:30 http://www.sankei.com/affairs/news/161103/afr1611030021-n1.html

 宮城県は3日、ごみ処理施設を保有する県内市町村に対し、東京電力福島第1原発事故で発生した汚染廃棄物の焼却を要請した。付着した放射性物質の濃度が基準値以下で指定廃棄物に該当せず、各地に分散保管されている牧草など約3万6000トンが対象。住民の反発を懸念し、市町村側が処理を先送りしていた。市町村長を集めて仙台市で開いた会合で要請した。市町村側は、12月の次回会合で受け入れるかどうか表明する見通し。県は会合で、住民の不安を和らげるため、事前に試験焼却して安全性を確認する方針を伝えた。汚染廃棄物と家庭ごみを混ぜて焼却すれば、放射性物質の濃度上昇を抑えることができるとの考えも示した。基準値以下の廃棄物は、一般ごみとして市町村が処理責任を負う。県内に約3400トンある指定廃棄物の処理方法は決まっていない。

 

汚染廃棄物「基準以下は一斉処理」 宮城市町村長会議で県提案

2016.11.4 07:05 http://www.sankei.com/region/news/161104/rgn1611040020-n1.html

 (前略)また、県内に分散保管されている基準以下の廃棄物について、県が測定した結果、約3万4千トンに上ることが分かった。これらの計約3万6千トンの廃棄物が処理対象で、県は家庭ごみを混ぜて焼却することで、放射能濃度の上昇を制御できると説明。自治体などが保有するごみ処理施設で焼却処分する方針を提案した。焼却灰も自治体の最終処分場に埋め立てる。焼却以外にも、堆肥化などが可能とした。12月下旬に再度会議を開き、市町村側の合意が得られれば、年明け以降、試験焼却を始める。安全性が確認された後、本格焼却に移行する。村井嘉浩知事は「廃棄物の保管自治体だけの責任にするのではなく、みんなで前に進むという考えだ。次回の会議で合意を得たい」と協力を求めた。利府町の鈴木勝雄町長は県の方針に理解を示しながらも、「風評被害が心配される。住民に安全性を説明する場を設けてほしい」と語った。

 ◆知事「批判の矢面に立つ」

 会議終了後、村井知事は報道陣の取材に「基本的に県の方針について理解をいただいたと思う。だが、住民は不安を持っていると思うので、県も批判の矢面に立って説明していきたい」と語った。試験焼却については仙台市などで先行事例があり、「こうした自治体の知見をベースに進める」とした。汚染廃棄物の処分については「震災から5年半以上たっても、なお足踏み状態だ。この問題を解決しない限り、『復興は終わった』と胸を張ることができない」と述べ、解決に向け改めて意欲を示した

 

 ため息が出ますね。普通の家庭ごみでも、焼却すれば、大量の重金属、VOC、ダイオキシン類、PM2.5などが、微小な化合物の形で大気中に排出されます。焼却炉がすさまじい公害源であることはよく知られており、世界中で、ごみ焼却を違法としている国や地域があるくらいです。そこに放射性廃棄物を加えて焼却すると、そりゃあ、放射性濃度の数値は均されて下がるでしょうが、逆に、排出物がすべて放射能を帯びます。焼却灰も含み。なぜならバグフィルターではPM2.5レベルの微粒子はキャッチできず、しかも焼却炉からはナノレベルの微粒子が出るのがわかっているからです。死亡と直接関連するのがこのようなごく微細な微粒子。

 ただでさえ東北は、西日本に比べ、311後の「放射能の遺産」が濃い地域です。本来なら、311後のごみ処理も「燃やさないごみ処理」に変えるべきでした。日常生活への影響が少ない地域で、拡散させることなく半減期が過ぎるのを待つ、という方式だって選べたはずです。ところが国は「汚染廃棄物」という証拠を隠滅するため放射性廃棄物の「全量焼却」を指示。県はこの国策を受けて各市町村に、「早く燃やせ」と要請しているのですが、もともと県には市町村のごみに対して指示する権限などないから、市町村はこれを突っぱねるべきです。

 しかもーー思い出してほしいのですがーーフクイチ前には環境中に放射能が出るという事態を想定した法令さえなく、放射能は環境省の管轄外だったのです。それが突然、8000ベクレル以下を「普通のごみ」としてしまったのだから、「ゲンパツ」が環境行政の面でも存続できない代物であることがわかるでしょう。問題は、このようなフクイチの「違法行政」を、地域の自治体はいつの間にか当然視するようになり、是非の判断ができないこと・・・それを正すのが自治体トップですが、そのトップのレベルが低いところでは、問題はさらに複雑になります。がれき広域処理だって、多くのパパやママが反対に立ち上がりました。指定値以下の廃棄物焼却はそれよりさらに大きな健康被害をもたらします。これをほうっておくと「高レベル放射性廃棄物」処理にも影響しかねません。この狂気をとめられるのは市民だけです。どうぞ問題を知り、立ち上がってください。2016.11.5

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/