「がれきを出す側」の、説得力を欠く言い分:宮古市

  この五月、桐生市の議員から、岩手県宮古市に「がれきを広域に出す理由」を質問してもらったところ、6月12日付けで回答が寄せられました。以下、質問と回答の中身だけを載せます。原文はここからも読めます岩手県宮古市長への手紙

平成24年5月26日


岩手県宮古市長 山本正徳様

 ご
存知の通り、桐生市には5月26日から、貴市から46トンの震災がれきが送り込まれて来ました。震災がれきには低レベルとはいえ、放射性物質が含まれています。廃棄物処理法では、その二条で、放射性物質あるいは放射性物質に汚染されたものを排除しており、他市ではもとより、御地でも一般の廃棄物として処理することは禁止されています。これを特措法の「読み替え」で実行しようとしても、環境汚染防止の法律が未成立な今、廃棄物を拡散する焼却という方式は絶対受け入れられません。
 また、市町村の廃棄物処理は自治事務であり、必ず市民の意見を反映させなければなりません。自治事務の委託については、本来なら、貴市と本市の間で、議会決議を含む法的手続きが必要ですが、両市とも、廃棄物処理を県に委託することで、中途半端な立場のまま、住民への説明責任もまったく果たしていません。このまま廃棄物処理法違法の、放射性物質を含むがれき焼却を実施すれば、ただでさえ、「放射能汚染状況重点調査地域」に指定されている本市は、福島県並の汚染地になることは避けられず、強い怒りを覚えます。
 私たちは、これらの違法性を指摘し、桐生市長にがれき受け入れ中止を求めていますが、市長は、「絆」を口実に、十分な説明もないまま、試験焼却のために貴市のがれきを受け入れてしまいました。また、この事業に関し、貴市の配慮も全く伝わってこず、桐生市民は、国や県と貴市に危害を加えられているという思いを抱いています。
 そこで、貴市にお伺いします。
 
(1)貴市のがれきを桐生市で処理する必要性、緊急性があるのか。
2)なぜ本市を選んだのか、どこでどのように決定されたのか。
(3)がれき広域処理が違法であることを認識しておられるのか、適法であるとお考えなら、具体的に法令条文を示してお答えいただきたい。
(4)将来、がれき広域処理による汚染拡大、健康被害が出た場合、どのような形で責任を取るおつもりなのか。ちなみに、私たちは健康被害などの問題が出た場合、貴市の排出者責任を追及し、提訴も辞さない覚悟でいることをお伝えしておきます。

 以上について、6月8日までに文書でお答えください。なお、私たちは6月中にも貴市と本市、そして桐生市民、
群馬県民が一同に集まってのシンポジウムを考えておりますのでぜひご出席ください。


 (6月12日宮古市からの回答)
 回答(1)広域処理の必要性・緊急性について
 がれき処理が一日でも早く終わるよう、岩手県が策定した災害廃棄物処理の詳細計画等に基づき、仮説焼却炉による処理を含め県内での再利用、処理をできる限り行ったうえで、なお、県内での処理が困難と整理されたものを対象として広域処理をお願いしております。大量のがれきの存在自体が復興事業の妨げにもなっております。一日でも早く、仮置き場に置かれたがれきを撤去・処理するためにも、全国の自治体のみなさまに広域処理へのご協力をお願いしているところです。


 回答(2)選定理由について
 国からの広域処理への協力要請に桐生市が応えていただいたことから、災害廃棄物の処理に関して宮古市が事務を委託している岩手県と群馬県及び桐生市との間で受け入れ方法などを協議したうえで、宮古市の災害廃棄物を受け入れていただけることとなったものです。


 回答(3)広域処理の根拠について
 「東日本大震災により生じた災害廃棄物の処理に関する特別措置法」(平成23年8月18日法律第99号)に基づいているものです。


 回答(4)汚染拡大、健康被害が出た場合について
 広域処理の対象となるがれきは、放射性セシウムが不検出か、検出されたとしても、処理の過程で健康に影響を及ぼすことのない、低い濃度であることが確認されたものだけであることから、汚染の拡大や健康被害が生じる事はないものと考えております。
     *************
 なんちゅう返事じゃ。「一日でも早く」って書けば「必要性」の説明になるとでも?
まず(1)、宮古市のがれきなのに、なぜ岩手県が詳細計画を作っているの?責任はどっち?
それに「県内の処理が困難とされたもの」って何? がれき発生量は40%も下方修正されたし、復興資材へ転用したいとの声も出ているなど、状況は大きく変わっているのに、宮古市はいったいどうこたえるの?
(2)は、桐生市を選んだことについて宮古市は関与していない、と言っているのです。要するに、国県が闇談合で桐生市に受け入れさせることを決めた、って。ふ~ん。
(3)おおっと、地方都市レベルではまだこういう認識か。でも、環境省自ら「根拠法令はない」って認めてるんだし、これはまずいでしょ。
(4)あのね、自然放射能じゃないんだから、どれだけ低レベルでも体内蓄積して危険なの! いったい誰が「健康に影響を及ぼさない」と「確認」したのでしょう。
 質問にちゃんと答えてない、無知、無神経。こういう市町村が排出者責任など取れるはずはないから、受け入れに手を上げた地域の住民は、「出す側」を厳しく追及する必要があります。特に、宮古市、山田町、大槌町は、がれき視察団のショーウインドウになっているだけで、実際はどこのがれきがどうやって運び込まれるか、わかったもんじゃありません。市民はそれを監督するなんて無理なんだから、疑わしいものは一切入れないこと、これが原則。ま、この回答には追加質問してもらいますが。2012.6.16

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/