日弁連、がれき広域処理を認めていた!

  今ごろになって、日弁連ががれき特措法に対する声明を出しているのを知りました。昨年9月出したもの。長いけれど、念のため全文を掲載します。強調筆者、★は筆者の意見。
「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」(平成23年8月30日法律第110号、以下「特措法」)が、本年8月30日公布され、一部を除いて同日施行された。
 当連合会は、去る7月29日、「放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策についての意見書」において、放射能による環境汚染と放射性廃棄物の対策について総合的な立法をするよう提言したが、今後、特措法に基づいて放射性廃棄物を処理するに当たり、現状における次の問題点を改め、予防原則に則って、徹底した安全対策をとるよう求めるものである。
 
★ 放射能汚染廃棄物について定めた法律はないことをちゃんと認めているのですが、なぜか「特措法に基づく処理」を認めちゃってる。なんだこりゃ。個別法との整合性がないことを気にもしていないのは、弁護士という人種が行政法にうといから?
 1 放射性廃棄物の埋立て処分については、従前どおり放射性セシウムが100ベクレル/kg以上であれば放射性廃棄物として厳重に保管すること。また、焼却処理については、焼却施設の能力・性能の適切な試験・検証を行うこと。
 政府は、本年6月、放射性廃棄物について、焼却が可能なものは焼却して減量した上で、汚泥や焼却灰等に含まれる放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kg以下のものについては、一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)における埋立て処理(最終処分)とすることを認めていたが、さらに環境省は、8月31日、「8000ベクレル/kgを超え、10万ベクレル/kg以下の焼却灰等の処分方法に関する方針」を定め、8000ベクレル/kgを超え、10万ベクレル/kg以下の焼却灰等についても、一定の条件の下で一般廃棄物最終処分場(管理型最終処分場)において埋立て処理(最終処分)することを認めた。しかし、上記意見書記載のとおり、福島第一原子力発電所の事故前には、セシウム137が100ベクレル/kg以上であれば放射性廃棄物として低レベル放射性廃棄物処理施設で長期間、厳重に保管することが求められていた。特に、8000ベクレル/kgを超える焼却灰等については、その移動・保管の際に一般公衆の被曝線量限度である1mSv/年を超えるおそれがあり、これらを特に厳重な保管をすることなく通常の埋立て処理することは、労務作業者の被曝のみならず、周辺住民の被曝をももたらすおそれがあるから、到底許されることではない。また、放射性廃棄物を減量するために焼却するとしても、現存する焼却施設は放射性廃棄物を焼却した場合に完全に放射性物質がフィルター等によって捕捉されるかどうか事前に十分に検討も調査もなされていないから、焼却施設の能力・性能について、適切な試験・検証をし、公開と参加の原則に則って、住民の関与の下に具体的な焼却の方針を定めるべきである。拙速な処理によって放射能による環境汚染を拡散させることは回避すべきである。政府は従前の安全基準に則って、上記方針を直ちに改め、焼却施設の能力・性能について適切な試験・検証を至急実施するとともに、少なくともセシウム137が100ベクレル/kg以上であれば、放射性廃棄物として、通常の埋立て処理ではなく、特に厳重な処理を定めるべきである。
 
★100ベクレル以下は通常の埋立を認めています。「100ベクレル以下は放射能汚染物質ではない」という政府の見方に沿ったもので、これじゃまずいでしょう。また、8000ベクレルだの10万ベクレルだのの、政府や環境省方針の「出所」も追及していないし、バグフィルターの有効性は証明されていないといいながら、焼却処理そのものには反対していない。いいかげん。
2 放射性廃棄物の広域処理についても、上記の基準に従い見直すべきである。
 環境省は、8月11日に「東日本大震災により生じた災害廃棄物の広域処理の推進に係るガイドライン」を定め、広域処理の実施に当たっては、受入側にて問題なく埋立て処理ができるよう、当面の間は、受入側での災害廃棄物の焼却処理により生じる焼却灰の放射性セシウム濃度が8000ベクレル/kg以下となるよう配慮することを求めている。また、跡地の利用が制限され、居住等の用途に用いられる可能性がない場合にあっては、焼却灰を他の廃棄物と物理的に分けることまで必要としないと通知している。しかし、上記の従前の安全基準(放射性セシウム100ベクレル/kg)をはるかに上回るこの基準による処理では、本来であれば今回の事故による放射性物質の影響をほとんど受けなかった地域においても、放射能による環境汚染を被るおそれがある。また、8000ベクレル/kgの放射性セシウム137に汚染された廃棄物が100ベクレル/kg未満となり、通常の廃棄物となるまでには、約200年を要するのであるから、その間、跡地の利用を制限し、居住等の用途に用いられる可能性を完全に排除することを担保する措置は、現実には採り得るものではない。したがって、政府は、やはり従前の安全基準に則って広域処理の実施について慎重に見直しをすべきであり、また、放射性廃棄物は、必ず他の廃棄物と物理的に分け、警告表示をした上で流出・飛散を防止すべきである。
 ★ここでは、原子力規正法のクリアランスレベルを「安全基準」と言い換え、広域処理も100ベクレル以下なら認めてしまっている。放射能汚染を拡散するのは、100ベクレル以下でも変わらないのに…。 

3 特措法は適宜見直しを図るとともに、新法制定に向けた検討を開始すべきである
 特措法は、今回の事故を発生させた東京電力株式会社及び国がそれぞれ処理主体となる放射性廃棄物を除き、その余の放射性廃棄物については、廃棄物処理法の廃棄物の対象に含めた上で、特定一般廃棄物及び特定産業廃棄物として、前者は市町村、後者は排出事業者が処理主体となることを定めている。しかし、放射性廃棄物は、通常の廃棄物と比較すると、極めて長期間にわたって特に厳重な保管を必要とするものであり、現行の廃棄物処理法の枠組みの中で処理することには無理がある
★現行の廃棄物処理法の中で処理できないというのはわかっていらっしゃる。それなのに、それを無視した特措法の違法性を批判していないのはなぜでしょう??
 附則については、政府は、特措法施行後3年を経過した時点で、特措法の施行状況を検討すると定めているが、放射性廃棄物の処理に係る科学的知見は今後、急ピッチで増進することが確実であるから、特措法の施行については適宜見直しを図るべきであり、また、廃棄物処理法とは独立した、放射性廃棄物の処理に係る新法の制定に向けた検討を至急開始すべきである
2011年(平成23年)9月20日 日本弁護士連合会会長 宇都宮 健児
 
★つまり、問題は多いけどこの際目をつぶるから、急いで新法を作りなさい、ということ。日本の法曹界は、放射能廃棄物処理で政府と共犯関係なのでしょうか? 海外の批判にどう応えるつもり?
★★一般廃棄物の処理が自治事務とされているのは、まさにこういう問題がおきたとき、国、政府の一方的押し付けに抵抗できるように、市町村に権限を与えたものなのです。地方自治とは住民自治、団体自治であり、首長は住民意思を尊重しなければならないのだ。したがって、住民の反対を押しつぶして受け入れたいなんていう首長は、それだけで自治体の長として失格。…ものすごく改悪されてしまっているけど、それでも地方自治法を勉強しろ!と言いたい。2012.2.25

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/