TPPに配慮したイレッサ逆転劇

 日本の医薬行政はあいつぐ「薬害事件」から何も学んでいません。学ぶ気もありません。薬害や誤診、医療被害を保障する気もありません。それにしても、この高裁判決、ひどすぎ。 原告の無念さは想像に難くありません。
イレッサ控訴審、企業と国の責任認めず 原告逆転敗訴
http://www.asahi.com/national/update/1115/TKY201111150257.html
 
肺がん治療薬イレッサをめぐり、副作用で死に至る危険性を十分に説明していなかったとして、死亡した患者3人の遺族が販売元のアストラゼネカ(大阪市)と国に計7700万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が15日、東京高裁であった。園尾隆司裁判長は、ア社と国の双方の責任を認めた一審・東京地裁判決を取り消し、遺族側の請求を全面的に退けた。高裁判決は、副作用の危険性は説明書に書かれており、医師も危険性を認識していたことから、製造物責任法の「指示・警告上の欠陥」はなかったと判断してア社の責任を否定した。さらに、ア社の責任を認めない以上、国の責任も認められないとした(以下略)

 イレッサは世界に先駆けて、日本で承認・使用が始まったもの。これだけでも十分危ないけれど、使用開始直後から副作用の報告が出たという危険なオクスリでした。なのに、制薬企業も、国も、医師も、副作用の危険性を知りながらこれを使い、それで患者が亡くなっても責任を問われないというのだから、もう怖くて、病院になんか行けません。
 それにしても、大急ぎで出されたこの悪判決は、おそらく大坂訴訟への牽制と、TPP交渉見越した政治判決でしょう。「医薬」はすごいドル箱、それに日本人の薬好きはよく知られ、日本はとっくに世界の製薬業者の「実験動物室」になっているから、TPP加盟の決定まで、この問題は中途ハンパな状況に置かれることでしょう。こうして、すでに放射能で免疫が下がっている日本人は、じりじりと医薬業界のカモにされてゆくのです。そろそろ根本から「医療」を考え直さないと。2011.11.16
 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/