時間稼ぎで会議は踊る、ガザ破壊は進む・・・

「薄まった」決議、ガザ情勢めぐり国連安保理で採択 実効性は不透明　朝日新聞社 イスラエル軍の侵攻で2万人以上が犠牲になっているパレスチナ自治区ガザ地区の人道状況をめぐり、国連安全保障理事会は22日、文言調整のため延期を繰り返してきたガザへの人道支援の拡大を求める決議を賛成多数で採択した。だが、米国の求めにより即座の戦闘停止を要求する文言を削除。安保理決議には法的拘束力があるものの、イスラエル側は戦闘継続を断言しており、実効性を懸念する声が上がっている。決議案は非常任理事国のアラブ首長国連邦（UAE）が提出し、日英仏中など13カ国が賛成。拒否権を持つ常任理事国の米国とロシアは棄権に回り、事実上、採択を容認した。決議ではガザ全体に支援が届くよう、イスラエル軍やイスラム組織ハマスら紛争当事者が協力することや、「敵対行為の持続可能な停止のための条件を作り出すこと」を求めている。また、国連のグテーレス事務総長に支援物資の監視や調整をする担当者任命を要求。担当者には20日以内に安保理に状況を報告し、来年9月末まで定期的に説明することも要請した。

クリスマス直前の１２月２２日、国連安保理でガザへの人道支援の強化を訴える決議案が採択されました。11月に一回目の「戦闘休止」を求める決議案が採択され、一週間ほど戦闘は休止されましたが、その後、イスラエルは激しい攻撃を再開。ガザへの支援物資の運搬もすべてイスラエル統制下にあるため、住民の生存環境は悪化する一方で、国際社会として、実効性ある人道支援が求められていたのです。しかし、これにイスラエルとアメリカが頑強に抵抗。上の記事のように、国連安保理は米の反対で４日連続で延期をくり返し、まさに「会議は踊る」状況に。最後は米の求めを入れて「戦闘停止の要求」を削除、「敵対行為の停止」を「…停止に向けた環境作り」と意味不明な文言に改め、支援物資の監督権を「国連」から「国連が担当者を任命」などとする決議案に落ち着いたのです。この間もガザの状況は壊滅的になっており、世界中から批判が集まっていますが、グローバリストはそんな批判など気にもしない。

　最後までごね続けたアメリカは、「決議案にはハマス非難がない」という理由で棄権しています・・・実際は、人道支援にも戦闘停止にも反対のアメリカは、決議案を通すつもりなどまったくないため、安保理はアメリカが拒否権を発動しないように根回しし、アメリカに「棄権」してもらって採択にもちこむという戦略をとったようです。つまり、今回の決議案は「アメリカのほどこし」なしでは採択にも持ち込めなかったわけで、国連がいかにアメリカに仕切られているかを見せつける一幕でした。国連の無能・無力を物語るもうひとつの事件は、国連総会は12月初め、加盟153か国の賛成、10か国の反対、23か国の棄権という圧倒的多数で「人道的即時停戦」を求める決議案を可決しているのに、総会決議には「拘束力」がないとされ、決議だけで終わっていること。そして、今回の安保理決議は「拘束力」があるはずなのに、イスラエルは平気の平左で大量虐殺をくり返していること。・・・国際法も国際機関も、意図をもって破壊しようという勢力にとっては何の歯止めにもなりません。

なお、この採択には、同じ常任理事国であるロシアも棄権しました。ロシアはイスラエルに対する強い姿勢を望み、採決前にも、即時停戦を求める内容に戻す修正案を提出していますが、安保理はこれを否決しています・・・そんなものを出すとアメリカの拒否権に会い、またもや採決できなくなってしまうというわけですね。

　ロシアのワシリー・ネベンジャ国連大使は、アメリカの修正案を入れた決議案は「極めて無力化され」、「骨抜きにされた」と批判した。「市民に対するすべての無差別攻撃を非難するという言葉が消えた。これで国際社会にどのようなシグナルを送るのか？ 安保理はイスラエルに戦争犯罪の許可を与えているのか？「安保理メンバーは米国にとって都合の良い決定にゴム印を押すだけなのか？」（US Abstains, Allowing UN Security Council Resolution on Gaza to Pass、VOA）

　アメリカの「卑怯な動き」に怒ったのはロシアだけではありません。VOAによると、「停戦を求める文言を和らげようとする米国の動きは多くの国連加盟国を怒らせた」、しかし、「米国の再度の拒否権発動に外交官らが辞任したため、大半の安保理加盟国は米国が（棄権して）決議案の可決を許可したことに深く安堵している」とのこと。…「アメリカが可決を許可した」という表現に、安保理加盟国の弱腰が伺えます。国連の「オブザーバー国家」であるパレスチナの代表は、「（ガザの人々は）生き延びるために必死で、今や死に直面している230万人のパレスチナ人について話し合っているのだと、忘れてはならない」と述べているのですが、国際官僚は、国家官僚と同じく、最も大事なのは自分のメンツなのでしょう。

写真：https://menafn.com/1107655770/Desperation-Rising-Amid-Acute-Hunger-At-Gaza-HospitalsWHO 12/25/2023 …ガザのクリスマス

　この決議案が採択された後もイスラエルは攻撃強化を明言しているため、ガザの人々は深刻な飢えに直面しています。国連世界食糧計画WFEは、「その深刻さや悪化スピード、複雑さにおいて、前例のないレベルの深刻な食料不安が起きている。ガザ地区は飢饉のリスクに直面している」「我々は、飢饉宣言が出るのを待ってから行動するわけにはいかない。不援助を届け、苦しみに終止符を打ち、飢饉発生の非常に深刻な脅威を回避するには、即時の人道的停戦とすべての国境検問所の開放、そして商業貨物の輸送再開が必要だ」と述べています。（UN Security Council moves closer to Gaza aid vote）…では、国連は、イスラエル阻止しているガザへの水上輸送路などを開けることができるでしょうか？多分、できないし、そうしようともしないでしょう。

でも、それを実現させられるのは「人々」です。アメリカが「棄権」しながらも、国連決議案を「採択」させざるを得なかったのは、各国で反米反イスラエル非難が高まり、米・イスラエルが孤立化しているから。…反対の声が最も強いのは学生や若い労働者のようです。それは、彼らはネットを通して刻一刻と入って来るガザの窮状を知り、政府とメディアによる情報操作に気づいて既成政党に反感を持ち、パレスチナとの連帯感を高めているからのようです。　また、重要なことは、ユダヤ人自身が、ネタニヤフとバイデンの亡国の戦いに強く反対し、停戦と平和を求めて活動していること。

彼らは各地で抗議活動を組織しています。↓は各地の行動の様子。いずれも11月のことですが、クリックすると短い動画が流れます。Protests have led to disruptions on Capitol Hill, at a major train station in Chicago and New York City’s Grand Central Station.,…outside Democratic National Committee headquarters in Washington which led to clashes between police and protesters.

最後のイベントは、戦争犯罪集団：民主党本部（ワシントン）の外で行われたデモ。この時は大勢の逮捕者を出しています。アメリカ国民は民主党政権に（共和党も同じ）無制限で戦争する権利を認めていないはず。しかし、それがいつのまにか「国益」のために、なし崩しに、大統領にすべての決定権を与えることになってしまった。でも、人々は、その「国益」が、実は「グローバリスト益」であることに気づいています。ただ、イスラエルーパレスチナ問題は難しい。古くからのユダヤ主義とシオニズムが、そして、それぞれ反ユダヤと反シオニズムがありますが、戦争を仕掛ける側は、問題をごまかすために、これらを混同して市民をだまくらかす恐れがあるからです。反戦の声をあげるにしても最低限の歴史を抑えておかないと逆利用されかねない問題であることも知っておいて下さい。2023.12.25