今年、例年になく「北海道のヒグマ」の被害が報道され、何となく腑に落ちないものを感じていましたが、そこにはこんな↓事情が隠されていました。以下、「くまもり」ニュースから。
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7月8日札幌で母ヒグマを殺処分 炎上狙いのユーチューバーの餌付け責任を問う
以下、UHB北海道文化放送より
札幌市環境局熊対策調整担当によると7月8日、親子とみられる4頭のクマの目撃が何度も報告されていた南区北ノ沢地区で、市が緑地帯に設置していた箱わなにクマ1頭が捕らえられ、駆除されました。
8日午前10時20分頃、箱わなに備え付けられていた動体を検知する自動監視カメラが作動し、4頭の親子のクマの姿を撮影しました。約25分後の午前10時45分頃、箱わなに1頭が捕獲されたのを市職員が確認。クマは午後1時20分過ぎに駆除されました。駆除されたクマは体長が146.5センチメートル。体重97キログラムのメスで年齢は7-8歳と推定されます。市は5月上旬から南区北ノ沢地区の住宅街などに出没していた4頭の親子のうちの母グマの可能性が高いとしています。
駆除されたのはこの子連れの母グマと思われる 2023年7月1日21時41分無人撮影カメラ
市によると3頭の子グマは現場から姿を消しており、市職員とハンターが周辺を捜索しましたが行方は分からないということです。市は箱わなの設置も含めて今後も継続して警戒、監視を続けるとしています。(以上、記事から)
熊森から
3頭の食べ盛りの子供たちを飢えさせないように、ヒグマのおかあさん、餌探しに一生懸命だったんだろうと思われます。
熊森が母グマ駆除のニュースを察知したのは7月8日土曜日です。土日は行政がお休みで連絡がつかないため、こういう時いつもやきもきしながら月曜を待ちます。もちろん、行政担当者の皆さんは土日でも携帯電話で連絡を取り合い、すぐ動かれていますが、守衛さんに尋ねても携帯の番号を教えてもらえません。
さっそく7月9日(月)、札幌市担当課に電話してみました。
熊森:和歌山県の猟友会の方に、猟師間には「三つ熊獲るな」(=親子グマは、獲るな)という不文律があると聞きましたが、北海道にはそのような言葉はないのですか?
札幌市:聞いたことないです。
熊森:5月の初めごろから札幌市の住宅地の横で、若い男性のユーチューバーたちがピザなどでクマを山からおびき出しておもしろおかしくキャーキャー騒いで、ただいまクマがピザを食べていますなどと餌付け動画を撮影し、再生回数を上げているという情報が熊森本部に入っています。地理的に見て、今回捕殺された母グマは、このユーチューバーが餌付けしていた親子グマですか。(熊森注:クマの嗅覚のすごさは犬どころではありません。クマは1キロ離れたところからでもおいしい匂いを嗅ぎつけて飛んでくると言われています)
札幌市:そう思われます。
熊森:この母グマを駆除する前に、このユーチューバーに餌付けをやめること、動画を下げるようにと指導すべきではなかったのですか。
札幌市:指導したのですが。(熊森:現在も、この動画は「炎上!」などとタイトルをつけて公開中)
熊森:まず、彼らを取り締まるべきです。
札幌市:警察に相談しましたが、法律に違反していることでないから取り締まれないそうです。
ならば、熊森は、世論の力に訴えるしかないと思い、北海道新聞社の読者窓口に電話してこのユーチューバーのことを知らせたところ、担当者は知らなかったと絶句されていました。
しかし、もし、マスコミがこの問題を取り上げたら、みんながどんな動画か見てみようとして、ますます再生回数が増えます。彼らの思うつぼです。ならば、かれらの周りの人たちが彼らの行為に気付いて、「他者の不幸の上に自分の幸福を築いてはならない。そういう生き方は必ず破綻する」と彼らのために諭してあげるしかないのか。
でも、ふつうは、自分たちのしたことでヒグマ一家が殺されることになったとわかったら、反省して動画を下げると思うのですが。皆さんどう思われますか。
残された子ぐまも、そのうち罠に掛ると思います。掛からなくても、母グマから冬ごもりの仕方を1回も教えてもらっていない子グマたちが生き残ることは難しいと思います。と言って、今、熊森にはこのヒグマの子供たち3頭を捕獲して放獣したり保護飼育したりする力はありません。
日本人は人間の命と野生鳥獣の命は同じように貴いという、すばらしい自然観を持っていました。だから水源の森が残り、今日の繁栄があるのです。他生物の命は物で、人間さえよければいいという今の風潮は、自然破壊への道、人類滅亡への道です。
ヒグマに対する人間の対応はこれでいいのか。胸を痛めておられる方も多いと思います。カナダなどの海外がしているように、北海道には、まず、ヒグマの放獣体制が必要です。全国の皆さんに呼び掛けたい。心の中で思っているだけではダメなんですよ。日本がもっともっとまっとうな社会になるよう、みなさん、熊森がしているようにみんなで声を上げてください。
31年前、熊森運動を開始した時の尼崎市の中学生たちの合言葉は、「声を上げなきゃ誰にも分らん、行動しなくちゃ何にも変わらん」でした。こんなクマ対応ではだめだと思う方は、まず、行政やマスコミに声を上げるところから始めてください。黙って死んだら、生まれて来た甲斐がないと熊森は思うのです。北海道のヒグマ問題の現状については、当協会顧問門崎先生の以下のフェイスブックを是非ご覧になってください。北海道野生動物研究所
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(以下、山本)クマの仔は普通、2頭と言われているから3頭の仔連れの母グマは、食糧確保のために広い範囲を動き回っていたのでしょう。だから、「餌付け」に簡単にひっかかってしまった。野生動物が目撃された場合、海外では、「そっと見守る」「介入しない」、そして「保護担当者に連絡する」というのが市民の常識です。
でも、日本にはいまだに野生動物を保護する法律がなく、行政も市民も「クマは敵」「出てきたら殺せ」と考えているのです。そういうと、「動物愛護法」「鳥獣保護法」「生物多様性基本法」「種の保存法」などがあるじゃないか・・・と思う人もいるでしょう。でも、どれも除外規定ばかりの「ザル」法。どの法律も(たとえ「保護動物」でも)、定められた場所、期間、猟の方法であれば、そして「必要な場合」であれば、殺しても罪に問われません。むしろ、法律によっては殺しを奨励している。
野生動物の扱いに対する社会の姿勢は、そのまま人間がどう扱われているかを示しています。野生動物は食物連鎖や健康な自然環境に不可欠であり、どれが欠けても、バランスの取れた生態系は保てず、それがひいては社会の健全性にもつながっていきます。だって、自分を守る能力がない動物を一方的に「管理」し、「屠殺」できるという社会が健全であるはずはないからです。しかも、殺す側は一方的屠殺であることを隠すために「駆除」と表現している。これは、殺対象動物を「害獣」と規定しているわけですが、彼らを「害獣」にしているのは人間の行為なのです。
特に、今は、役にも立たない再エネ(風発やメガソーラー)が全盛。欧米での展開が頭打ちになっているため、日本ではますます国土破壊を伴う事業が多くなるでしょう。従って、事業者も行政も、事業の邪魔になる野生動物はいなくなって欲しいー皆殺しにしてもいいーと考えているのです。そのためには野生動物への恐怖をあおる必要があり、そこに牛を連続で襲う謎のヒグマ「Oso18」-その正体とは? | Nhk北海道などの記事が登場するわけ。怖がっている市民は、本当の原因がどこにあるのかなど考えませんから。
でも、野生動物が滅びる時、ヒトの滅びも近い。すでに魚類も鳥類も昆虫類も大幅にその数を減らしていて、まともな学者は何十年も前から危機を叫んでいるのですが、その声は押しつぶされている。2023.7.20