パレスチナ、ハマスの「奇襲攻撃」、ウソじゃない?

 2023年10月7日の、「パレスチナ抵抗勢力によるイスラエルへの奇襲」のニュース、どこかに違和感を覚えながら、報道を読み漁っていました。何に違和感があるのかといえば、主要メディアが一斉に同じ色の報道を始めたこと。例えば:「ハマスがイスラエルに大規模攻撃 前例のない侵入」 BBC News JapanというBBCの日本語版記事。…両国間には何回も流血の惨事が起きていましたが、仕掛け側は常にイスラエル、パレスチナはそれに反撃するパターンだったのに、これではパレスチナが常習的に攻撃しているかのようなイメージを与え、「イスラエルの反撃やむなし」となるのでは。

 これに対し、オルタメディアは,一斉にイスラエルの長年にわたるパレスチナ封鎖、アパルトヘイト政策を非難。多くのジャーナリストはこの、「パレスチナ蜂起」に心を動かされ、「ターニングポイント」を期待しているようです。↓はGlobal Researchの記事Yesterday Has Been Unprecedented. Palestine Is Fighting to Dismantle the Barrier Between Gaza and 1948の一部。

「私は今朝、新しい時代の幕開けに目覚めた。1973年の戦争から50周年の今日、ガザのパレスチナの抵抗勢力はイスラエル人入植者を空と陸から攻撃し、少なくとも40人を殺し、多くの兵士と市民を人質にした。ガザと1948年の間のバリアフェンスは解体された。(中略)イスラエル政権は今日、パレスチナ人に対する宣戦布告を行ったが、イスラエルが70年以上もの間、パレスチナに対して言語に絶する残虐行為を行い、200万人以上のパレスチナ人を投獄し、ガザに対する残忍な封鎖と包囲を続けてきたことを忘れてはならない。いかなる檻も楯突かれることはない。パレスチナ人はイスラエルへの大規模攻撃で占領終結を要求する・・・。

 欧米の「まともな」ジャーナリストがいかにパレスチナ問題に心を痛めているかを示す記事ですが、感情的過ぎてまったく分析につながっていない。特に、このハマスの初期攻撃の「成功」を無邪気に評価しているのは問題です。他にも、「ハマスがイスラエルを出し抜いた」「イスラエルの防衛線を突破」などとする記事が多く、なんとイスラエル側も「情報ネットワークの失敗」「攻撃を察知することができなかった」などと発表していますが・・・ウソじゃない?

 根をもたない占領国として建国以来、イスラエルは圧倒的な軍事力と情報収集能力、監視システムに頼って生き延びてきた国です。撃墜率90%を誇り、世界最強といわれる近距離ミサイル防衛システム「アイアン・ドーム」は、ハマスの拠点であるガザと隣国ヨルダンのヒズボラに向けたもので、↓はハマスのロケット弾を片っ端から打ち落とす様子。ハマスのロケット砲はそれをいくつか潜り抜けたというのですが・・・こういうもので守らなければ生き残れない国は、果たして存在意義があるのか。

 南部領内に侵入したハマスの戦闘員がイスラエル軍幹部や市民らを、反撃の「盾」として人質に取ったして、いろんな動画が流れていますが、これは、この地域の歴史を知らない人にとっては完全に「テロ行為」に映るでしょう。

 これに対し、イスラエルのネタニヤフ首相は翌8日、宣戦布告を発表、「反対派の地域を不毛の地にしてやる」と、公然とパレスチナに対する無差別大規模攻撃を展開、すでに両軍合わせて2000人以上の死亡が伝えられています。…ずっと戦争状態にあったのに、改めての「宣戦布告」は、これを機会にイスラエルの喉元に突き刺さったホネであるパレスチナの完全抹消を狙っているのでしょう。イスラエルは、今年に入ってから、その下準備として何回も挑発行為を続けていました。

 たとえば5月、タイムズ・オブ・イスラエル紙は、「パレスチナ抹消obliteration of Palestine」を主張する記事を掲載(後に削除)し、多くのパレスチナ人の怒りを買っています。そして、5月には今回の作戦名ともなったムスリムの聖地、アル・アクサ寺院をイスラエル軍が急襲し、多数の信者を殺し、400名を逮捕するという事件を起こしていますstorming the Al-Aqsa Mosque overnight(画像要注意)。今回も、ガザ地区の電気や水道の供給を止め、「闇の中で虐殺事件を行っている」との訴えもあり、パレスチナ人は生存の危機に置かれています。

 これらはすべて予想、ではなく、計画されていたのではというのが山本の感。イスラエルには、米CIAに次ぐ規模の巨大情報機関、モサドがあります。モサドのネットワークは膨大で、CIAやM5など海外情報機関とも連携し、パレスチナだけでなく、シリア、エジプト、イランなど敵対国の過激派や指導者の動向も正確に把握し、的確な暗殺指令を出したり、心理作戦を実行したり、プロパガンダやサボタージュを行う能力でも知られています。そのモサドが、隣接するパレスチナが5000発ものロケット弾やミサイルを備蓄していたのに全く気付かなかったというのは信じられない。パレスチナは陸も海岸線も完全に封鎖されていて、封鎖戦にはカメラやモニターなど各種機器が備え付けられ、兵士も頻繁にパトロールし、それこそあり一匹逃がさない体制なのです。

 そこまでしていても、パレスチナ側の同時侵攻に気づかず、起こるにまかせていたとしたら、それは、「パレスチナ人による同時多発テロ」を待っていたとしかいえません。・・・そう、これは2011.9.11の悪夢の再現だと思われます。アメリカ政府が911に向けて多方面の準備をしていたことがわかったのは、何年も後のことでした。アフガニスタン侵攻は911以前に実行されていたのですが、すべてが「テロとの戦い」というウソの下で正当化され、今も事実は闇の中。

 ハマス側は、今、何らかの行動を起こさなければ状況が悪化すると考え、奇襲を実行したのかもしれません。しかし、その「初期の」成功は、侵入に気づかないフリをしたイスラエル側の協力の成果で、いわば罠にはまったのかもしれません。イスラエルには「大イスラエル」建国という、長年にわたる大目的があり、そのため、周辺国との「国交正常化」が進んでおり、ここで反対勢力を叩き潰せば、大イスラエル実現の夢に一歩近づくのです。その占領者の夢を実現させないために、パレスチナへの連帯を表明する声はまだ少なく、市民の動きもありません。でも、戦争も水物。いったん、被抑圧者がたちあがれば情勢がどうなるかはわからない。ささやかですが、山本もパレスチナの住民に連帯を表明します。2023.10.13

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/