飯館の焼却炉

 本来、絶対に燃してはいけないはずの放射性廃棄物。日本政府はその全量焼却をめざして、飯舘村にその第一号施設を完成させました。焼却によって微小化した放射性物質はバグフィルターを通り抜けて広域拡散するし、残った底灰は強い放射能を帯びるため、この焼却炉は全体が放射性障害防止法の対象となるはずですが、これが可能なのは、飯舘村に住民はいないから。

飯舘・蕨平の減容化施設 25日に火入れ式 飯舘村など6市町村の放射性物質を含む廃棄物を受け入れる同村蕨平(わらびだいら)地区の焼却減容化施設の火入れ式は25日午前11時から同所で行われる。運転開始は来月中旬の予定。廃棄物を広域集約する減容化施設の供用開始は初めてとなる。村内の除染廃棄物や解体した家屋の廃材をはじめ、福島、南相馬、伊達、国見、川俣の5市町の稲わらと牧草、福島、南相馬、国見の3市町の下水汚泥を焼却する。これにより、各市町の下水道処理施設に保管されている汚泥の処理が加速する。施設を運営する環境省によると、処理能力は1日当たり240トン。原則3年間にわたり使用し、廃棄物の残量に応じて最大で2年間延長する。焼却灰は放射性物質濃度が1キロ当たり10万ベクレル以下の場合、富岡町の管理型処分場に移送する計画。10万ベクレル超は中間貯蔵施設に搬出する。火入れ式には丸川珠代環境相らが出席する。

 この事業のモデルになったのが、福島県・鮫川村の指定廃棄物の実験焼却炉でした。これについては本ブログでも何度か触れているので、その見出しだけ見てもおおよそ見当がつくでしょう(文末に見出しをつけました)。稼動から一週間後に原因不明の爆発を起こしたにもかかわらず、さっさと「再稼働」し、周辺線量があがろうが、近隣の北茨城市で小児がんが多かろうがかまわず焼却を続け、事業は完了しています。
 飯舘村への焼却炉建設についても、土地を離れてしまった住民に発言の機会などなかったはず。村長が環境省に押し切られてYesといったのでしょうが、240t/日規模n焼却炉といえば大都市並みの大きさ。そこに、汚染廃棄物をつんだトラックがひっきりなしに通い、大気は周辺を広く汚すことでしょう。東北の汚染廃棄物焼却はここだけではないにしても、公然と指定廃棄物の広域処理を行うのは、記事にもあるとおりこれが初めて。そして、処理が完了すれば、施設は解体し、証拠隠滅がはかられることになります。
 原発(核分裂)や核融合などという技術を国の基幹エネルギーにするというのは、人々に汚染を押し付けることです(自然エネ、再エネも似たようなもんです)。東北の人々にとって、毎日、線量をはかるのは、これまで以上に重要な運動になるかもしれません。環境の変化も記録しておかれるといいと思います。2015.11.23

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この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/