風力に「逆風」、新風車禁止(デンマーク)

 ちょっと驚きましたが、「エコ優等生」のデンマークで、いくつかの自治体が風車の建設を禁ずるという決断を下しています。

 コペンハーゲン・ポスト(英語版から翻訳)では、次のように伝えています;

 

デンマークの自治体で、陸上風車の建設をすべて禁止ー背景には市民の抵抗

2017年3月7日 CPH Post Onlineエスビャウ市の計画環境委員会は市域内においてすべての陸上風力発電所の建設を禁ずるという結論を出した。これによって、ヴィスレフなど市域三ヶ所で計画されていた計34基の風車の建設ができなくなる。同委員会のジョン・スネッカー会長は、風力発電に対する抵抗が爆発的に増えた、と述べる。「反対派は、何よりも低周波音の健康影響を不安視している」「我々の風力エネルギーは、(今後)洋上風力発電から得られるだろう」

風車より住民

 この決定に喜んだ住民の一人、エスビャウ市のローガー村に住むソレン・ウィンド氏は、「本当にホッとしたよ。政治家が住民を第一に考えてくれて」「この問題が終わってよかった」と述べる。 風車の建設を禁じたのはエスビャウ市が初めてではない。ヴェイエン市とトウナー市も風車計画を禁じている。

 

 エスビャウ はデンマーク南部、ユトランド半島の西岸、北海に面した大きな都市で、年中強い風が吹きつけることから、風車が集中しているのでしょう。この決断にいたるまで、住民たちは、デンマークの狂ったような風力への投資に苦しめられていたに違いありません。そのことを示すのが↓の記事。

 

デンマークの2015年の風力発電量 国全体の消費量の42.1%をまかなう。世界最高記録を更新。「風力で電力50%供給」という2020年の政府目標の達成十分可能に(RIEF

2016-01-25 17:23:47http://www.energinet.dk/EN/El/Nyheder/Sider/Dansk-vindstroem-slaar-igen-rekord-42-procent.aspx

 デンマークは2015年の年間電力消費量に占める風力発電の割合が42.1%となった。同国は2020年に風力で電力の半分をまかなう政府目標を立てているが、実現性が高まった。風力発電比率が4割を超える国は他にない。国有の送電事業者エナジーネット(Energinet.dk)は「世界記録」と胸を張っている。2014年の風力発電比率は、39.1%だった。15年の比率は、それをさらに3ポイント上回った。国際エネルギー機関(IEA)によると、ポルトガル24%、スペイン20.4%(いずれも2014年データ)で、デンマークの比率は、それらの風力発電比率の高い国に比べても、ほぼ倍のウエイトになる。特に大西洋からの風が安定的に吹く西部デンマーク地域では、地域全体での消費電力量よりも発電量が多く、昨年中で「ウィンド・サープラス(風力余剰)」を得た時間は年間で1460時間に及んだ。エナジーネット社の担当者は2015年に風力発電量が増えた理由として、風力発電の設備容量はやや増えたが、それよりも、「昨年は例年よりもはるかに風が強い年だった」と自然現象の影響が大きかったことをあげている。年間を通してみると、デンマーク国内の電力消費より風力発電の発電量が多かった時間が409時間に達した。(後略)

 

 でもただでさえ反対が多い風車の建設。デンマークではいったいどうやって反対派をだまらせ、電力42%を達成したのか? 実は業界は、「全村買い上げ、家屋の取壊し、エネファーム建設」という極端な手段を取っていました。これもコペンハーゲンポストの記事を訳すと;

 

 企業の極端な風車戦略:今日の町は明日のエネファーム

2015年1月16日by Philip Tees | The Copenhagen Post | January 16, 2015 | cphpost.dk

http://cphpost.dk/news/business/companys-extreme-wind-strategy-towns-today-turbines-tomorrow.html

 デンマークで風力発電を展開するスエーデンのエネルギー会社、バッテンフォールは、事業に非常に長い時間をかけているーー田舎の村をすべて買い、家屋を壊して更地にし、風車に置き換えているからだ。同社の陸上風車プロジェクトの責任者Mette Korsagerは、ビジネス・ニュースペーパー誌の取材に対し、この戦略はデンマークで2018ー19までに250MWの風車を建設するという目標達成を容易にするためだと述べた。「よくやるのは、条件が悪い場所の農場を買い上げて、農家や納屋を解体することです」「最近も、エネファームを建設するために、農村の(土地の)ほとんどを買い上げました」。

 「地域支援のため」とバッテンフォール

 事業が行われた北ユトランドのコルビーの村では、同社は20軒の不動産を取得した。この戦略にはいくつもの目的があるという。「周辺地域で不動産が売れないという問題を、(この戦略によって)解決します」「また、風車に批判的な隣人の問題も解決します。さらに、これによって、市から風車建設の同意を得やすくなります。というのは、我々が問題が起きる地域に入って、そこの人々を助けるからです」

 村消えて風車あり・・・問題を持ち込む側が「地域支援している」とは恐れ入った論理ですが、これによって、いったいいくつのデンマークの農村が消えたことか。そして、どれだけの人が風車被害に立ち向かい、声をあげて来たことか。今後、おそらくほかの都市でもエスビャウ 市の英断に倣うところが出てくるでしょう。また、業界は「陸がダメなら洋上があるさ」と考えているようですが、洋上もすぐに問題が起きてくるって。そして「風車」そのものも「頼れない技術」として淘汰されていくって。

 安岡洋上もムダな投資とならないように、早めに事業停止の決断を下すべきです。2017.3.24

 

 

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/