長崎県宇久島、4分の1がメガソーラーで埋まる

 今、住んでいる地域の四分の一がソーラーパネルで覆われたとしたら、どんなことが起きるでしょうか? 長崎県、五島列島の北端、宇久島で進行中のメガソーラー計画は、まさに島の四分の一を太陽光発電所で埋め尽くすという、日本最大規模の憲法違反の事業です(「…健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」が否定される)。最近になって。ようやくメディアが取り上げるようになったので、まずその状況↓をご覧ください。

 メガソーラーは、森林や田畑、遊休地の緑をすべて剥ぎ取り、裸地にして設置されるため、完工後、住民の目に入るのは、ソーラーの他は道路や建物ばかりになるでしょう。自然の消滅や景観破壊だけではありません。大規模な自然の改変事業によって、住民は自然災害の危険にもさらされることになります。動画では洪水の可能性が指摘されていますが、これは特に海までの距離が短い島嶼部では警戒すべきことで、洪水、濁流水や汚泥による河川や海域汚染、そして沿岸漁業は壊滅的被害をもたらすでしょう。陸地の開発が海の汚染を招き、漁業に被害を与えることは、日本各地でくり返し起きたことです。

メガソーラーは「ヒートアイランド現象」をもたらす

 その他、私たちは、メガソーラーが「気候問題を解決する」どころか、逆に周辺の気温を上昇させ、被害をもたらすことも知っておく必要があります。パネルが生み出す強い反射光と熱は、局所的な気候(マイクロクライメート)を3~4℃も上げるため、上昇気流が発生し、「ヒートアイランド」現象をもたらすのです。 「ヒートアイランド」とは、少し前までは「都市現象」でした。都市の地面はコンクリートで覆われているため、地面にこもった熱が放散できず、都市全体が熱い空気で覆われるのです。その熱い空気によって生まれた上昇気流は、上空のごく狭い範囲に雨雲を作り、それが局地的な大雨を降らせ、短時間のうちに洪水や河川・下水道の氾濫をもたらす――これが、ここ数年、都市部で頻発している典型的ヒートアイランド現象でした。それが今や、田舎でも地方都市でも起きています。共通項は、特にメガソーラーのために緑地破壊を許してしまった地域だということです。下はアメリカの事例(説明主体です)。

 止められないメガソーラー火災と環境汚染

 メガソーラーの被害はそれだけではありません。パネルやソーラーシステムに組み込まれたバッテリーの火災が、かなりの頻度で起きていますが、再エネ火災は「水」では消火できないため、自然鎮火まで何日間にもわたって燃えるに任せるしかない場合もあります。再エネ火災の恐ろしさは、材料に使われた何千種類もの化学物質、重金属類、プラスチック、ナノマテリアルが複雑な化学反応を起こし、何千種類もの有毒物質を排出すること。そのため、場合によっては広い地域の住民に避難指示や避難命令が出されることもありますが、火災が起きてしまったら「問題はない」「汚染はない」で片づけてしまうことがほとんど。昨年8月1日に起きたNYのメガソーラーは、四日間燃え続けた後、鎮火しましたが、「大気も水も大丈夫」だそうで、2022年2月のオハイオ州で起きたノーフォーク・サザンの列車脱線事故を思い出しました。https://wonderful-ww.jp/wp-admin/post.php?post=3433&action=edit

 なお、喜んでメガソーラーを「お迎え」する県や市は、ソーラーに関する知識などゼロで、このような特別の火災に対処する能力もありません。・・・それに、ソーラーには電磁波被害という問題もある。島の四分の一にパネルが敷かれれば、電磁波がどれほど増え、どんな人体影響があるのか、島民は知らされているでしょうか? アセスは行われているのでしょうか? 電磁波被害は、島から九州本土に電気を送る海底ケーブル敷設によっても起き、水産量が減る可能性もあるはずです(欧米ではクジラや甲殻類などへの被害が明らかになっています)。小さな島にこれほどの負荷と打撃を与える計画。まともな自治体なら、きちんと環境アセスを実施し、大幅な規模縮小、あるいは計画の全面的見直しを促すでしょう。ところが動画に登場する佐世保市長は、「民間業者が事業を進めているのは承知している」と寝ぼけたことを言っている。「ワシは関係ない」と言いたいのでしょうが、ひどすぎ。

 市民の負託を受けた市長には、市道や公共用地の管理者として、市民の質問や懸念に対し誠実に回答する義務がありますが、この人はそんなことさえ知らない様子。山本は現地の実情に照らして何項目もの質問状を出したのですが、県・市の担当者も首長も何も答えられず、おおむねだんまり。なぜだんまりで通すのかといえば、長崎県と佐世保市は、計画の早い段階からー市民には完全に内緒でー事業を全面的にバックアップしてきたからです。例えば:

 根拠法もなくこんな文書を勝手に取り交わし、法的手続きなしで着工したり、露骨な市道改変などを行っているのは明らかな官民癒着です。同年には逮捕者を出した賄賂事件もあり、告発状を出しましたが、現地の警察所もグルらしく、捜査しようとしなかった。・・・警察を含めた地方自治体の腐敗ぶりはすさまじいものがあります。自治体とは、司法・立法も含めた犯罪組織です。市民がそんな見方をして厳しく追及しない限り、彼らは悔い改めず、これから先も同じ犯罪を何回も繰り返すでしょう。所詮、税金の収集機関に自浄能力はないのです。

 なお、「再エネ」はすでに総崩れ段階に至っています。電力料金高騰とエネルギー不足、材料費高騰と材料不足、土地不足と資金不足、そして「再エネが十分な電力を生み出せない」という事実がバレて、世界中で中断、中止に至ったプロジェクトが増加しているのです(特に洋上風発)。宇久島の計画も、そう遠くない将来、暗礁に乗りあげ、そのすぐ次には、風雨にさらされ赤さびにまみれた大量の再エネ廃棄物をどうするかという問題が起きてくるでしょう。いえ、そうなったら、事業者も政治屋も必ず逃げます。そして廃棄物処理のつけを、納税者と現地住民に押し付けるはず。

 地元住民は、他の何をおいても、「廃棄物となった再エネ施設」の事業者による撤回を義務づける協定書くらいは結んでおかないと。撤回が遅れたら違約金を約束させ、その協定書を結ばない限り、着工を許さない、という形にすれば、事業の進行を止めることもできますよ。2024.6.23

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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