責任追及、やめて

 7月7日、原子力学会がこういう声明を出しましたとさ、ご存知でしたか?
 福島第一原子力発電所事故「事故調査・検討委員会」の調査における個人の責任追及に偏らない調査を求める声明 
 
 東電福島第一原発事故に関する事故調査・検証委員会が事故原因の調査を進めている。多くの被災者に対する責任はもとより、我が国がこのような重大事故を起こしてしまったことに対する国際的責任を果たすには、事故原因の徹底的解明は不可欠である。
 
そのためには事故対策に当った政府並びに東京電力の関係者の正確で詳細な証言が必須となる。しかし、これまで、我が国の重大事故の調査においては、本来組織の問題として取り上げられるべきことまでが個人の責任に帰せられることをおそれて、しばしば関係者の正確な証言が得られないことがあった。今回、もしそのような理由から十分な原因究明が行われないこととなれば、重要な技術情報を得る機会を失うこととなる。
 今回の事故調査においては現場で運転、連絡調整に従事した関係者はもとより、事故炉の設計・建設・審査・検査等に関与した個人に対する責任追及を目的としないという立場を明確にすることが必要である。この点については、既に畑村洋太郎委員長が就任時の抱負として「責任追及は目的としない」方針を示しているところである。

 日本原子力学会としては、この方針に則り、結果だけみて直接関与した個人の責任を追及するのではなく設置者のみならず規制当局等も含めた組織要因、背景要因などについても明らかにされ、関係者間で共有されて再発防止に活かされることが重要と考える。今後の調査において、事故関係者からの証言聴取が、国際的に整合性を持った手法で、実効性を最大限高めるべく進められることを求める。http://www.caa.go.jp/safety/pdf/100820kentoukai_3.pdf (強調筆者。文章は大意を変えないよう編集してあります。)
 つまり、「責任を果たすには、個人の責任追及はダメ」ってことですから、開いた口がふさがりません。この厚顔無恥あればこそ、コントロール不能な地獄の施設を、「安全」って売りこんで来れたわけです。でも、免責したからって、「原因」が明らかになるわけじゃなし、逆に無責任な学者が増え、科学の暴走はもっとひどくなるでしょう。さらに、この声明は、原発事故の「再発防止」を主張していますが、国民の多くが望んでいるのは、「再発防止」ではなく、「原発廃止」のはず。そこを無視しているのがいかにもずるい。
 それ以上にひどいと思うのは、彼らは事実上、原発という巨大産業システムの関係者すべて――メーカー、コンサル、推進派の首長、議員、行政職員、銀行――の個人責任も免除せよと言っているという点です。東大・京大を頂点とする日本の「学界」を支えるのは、実はこういう無責任、無恥なセンセイたち・・・倫理観のない「学者」の、社会へ及ぼす害は、どこかできちんと検証が必要です。2011.8.25

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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