米子市長、市有地を処分場に提供することに

 伊木米子市長は、市有地を産廃処分場に提供すると発表しました。産業界の押しで市長になった以上、その「使命」を果たさざるを得ないのでしょうが、その汚名は将来にわたって残ることでしょう。

 事業センターが、公的に米子市有地を使わせてほしいと頼んだのは今年7月25日。伊木市長は8月8日にはこの件を全員協議会に報告していますが、この時は「拙速な判断は避ける」と発言しています。

 ところが、お盆明けの8月24日土曜日、市長が「市有地提供を承諾」したことが報道されました。

市有地の利用承諾へ 淀江産廃計画で米子市 | 日本海新 …

https://www.nnn.co.jp/news/190824/20190824060.html

2019/08/25 · 鳥取県米子市淀江町小波で計画される産業廃棄物管理型最終処分場を巡り、事業者の県環境管理事業センター(広田一恭理事長)から計画地内にある市有地の利用の申し入れを受けている市が、申し入れに同意する内容の回答 …

 地元住民も驚く抜き打ち的な発表。しかも市長は、8月27日に速攻でこの件を議会全員協議会で正式発表しています。

淀江産廃処分場計画 米子市市有地提供へ

 2019.8.28 日本海新聞

伊木市長「議論、十分に反映」市議会全協

 米子市淀江町小波で計画される産業廃棄物管理型最終処分場を巡り、事業者の鳥取県環境管理事業センター(広田一恭理事長)から計画地の約半分を占める市有地の利用を求められた米子市の伊木隆司市長は27日、市議会全員協議会で利用を認めると回答する考えを正式に表明した。県知事の許可などの条件を付けたが事実上、市有地を提供する判断をした。(田子誉樹、岡野耕次)

 市は条件として①廃棄物処理法で定める手続きで県の厳正な審査により安全性が確認され、県知事の許可を受ける②センターと県が住民の理解がさらに深まるよう努力する―を示した。市は、新たな企業誘致や県内で発生する産業廃棄物を県外で処分している現状などを踏まえ、処分場設置の必要性が認められると説明。県条例に基づく手続きが十分な対応だったと判断、2重の遮水シートや逆浸透膜処理など国基準以上の対策が講じられ、安全性が認められるなどと利用承諾の理由を挙げた。伊木市長は全員協議会終了後、回答について「これまでの議会を中心に行った議論が十分に反映された結論になっている」とし、市議会の意見をまとめたうえで近く同センターへ提出したい考えを示した。センターの広田理事長は「まだ十分に理解を得られていない住民もいる。分かりやすい資料を準備するなどして、理解してもらえるよう努めたい」と述べ、平井伸治知事は「米子市議会で真摯に対応してもらっている所であり、動向を見守りたい」とのコメントを発表した。市有地を巡りセンターは7月25日、市に土地利用の要請書を提出。今月8日の市議会全員協議会で月内にも回答を得たいと要望していた。

「必要施設」「拙速判断」 賛否飛び交う全協

 米子市が事実上の市有地提供となる回答案を示したことで、市議会全員協議会では賛否の意見が飛び交った。賛成する議員は県内設置の必要性を強調。反対する議員は拙速な判断を控えるべきとの主張を展開した。戸田隆次議員(政英会)は他県の処分場を視察した結果、鳥取県環境管理事業センターの計画は3重の遮水構造や逆浸透膜による水処理など先進的な施設と評価。「この度の判断(回答)を支持したい」と賛意を示したうえで「県知事が最終責任を取ると市民へ伝えることが必要。一度くらいは市議会に出向い

て説明すべきだ」と求めた。一方、岡村英治議員(共産党)は関係6自治会のうち、建設に同意する自治会がある一方で賛否両論

あるために意見を表明できない自治会もあると指摘。「意見が出そろい、見極めたうえで判断すべき」と訴えた。また遠藤通議員(一院クラブ)は、住民が不安視する地下水への影響について学識者から市が意見を聞き取っていないと批判。「学識経験者から言葉を聞き、判断して初めて市民への説明責任が果たせる。行政にとって大事なのはこうしたプロセスだ」と主張した。(田子誉樹)

 

 記事を読むと、どうも市長側と議会主流派の間ではすでに「ゴーサイン」での暗黙の了解があるようで、今後の展開は予断を許しません。ま~、「御前崎問題」でもお伝えしたように、産廃問題には国策遂行というウラ面があり、それにはよく議員が使われるのですが。

 記事でマークした部分の解説します;

①この事業は知事が双方を代理しており、社会的に許されない。

 廃棄物処理法では事業の許可権者は知事、そして事業者も県であり、知事はいわば双方の代理です。民法の場合、双方代理は禁止されています(民法108条双方代理)。行政法には明文の規定はないものの、権力を持つ首長が一方で事業を打ち出し、一方でそれを許可することを許せば、腐敗と官民癒着は避けられず、当然「やってはいけないこと」とみなされなければなりません。知事が実際の事業者として3セクを設立し、そこに代理権を与えたのも、そのような文脈から見る必要があります。いずれにしても市民は告発、訴訟の準備をすべきでしょう。

「安全性」などないが、「危険性」は証明されている

 「安全性」とは、それまで存在しなかった汚染物質の存在を許し、その濃度が基準を「超えていない」ことを示すにすぎません。一方、処分場と周辺住民の健康被害、動植物への影響については多くの論文が発表されています。ほとんど英語だけどね。例:https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC1637771/

③「住民の理解」とは、特定の自治会長のOKがあればいい、という意味。なんたって、関係住民を「半径500以内」に住む人だけに限り、同じ自治会に入っていても住民とはみなさず、説明会にも入れないという徹底ぶり。地方自治法違反だ。

④「県条例」とは、これまでも述べてきた通り、廃棄物処理法そのものに違反している。

⑤「建設に同意する自治会」に関しては、実態を追求し(市が特定の道路を整備するなど、同意と見返りに利便を図った疑いあり)、説明しない(できない)ようなら自治会長を告発しなさい、と言っているんですけどね~、米子市民はおとなしい。

⑥地下水への影響ーー絶対にある。処分場汚染は鉱山や工場による汚染などと似ていて、まず土壌を汚染し、次に帯水層汚染、そして地下水汚染をもたらします。そのことは富山のイタイイタイ病(カドミウム汚染)、東京の六価クロム汚染であきらかにされていますが、被害が出るまで一定の年月がかかるため、健康被害や汚染との関係が明確に証明できません(そこが事業者の狙い)。

 そして、いったん汚染された土壌や地下水は、二度と元に戻りません(浄化不可能)。

 自治体の長がやるべきことは、地方自治法に基づいて住民の福祉の増進を図ること(第1条目的)であり、その住民に汚染をもたらすような事業に反対することなのです。この事業にはほかにも問題が山ほどあり、いずれも法律違反の指摘が可能です。これは、業界の代理を市長に選んでしまったという「市民の選択」がもたらしたものですが、ここで彼を引きずり下ろすなどしておかないと、米子市の環境はさらに悪化することでしょう。2019.8.28

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/