また一つ、「ごみ燃料化」事業が失敗しました。
バイオマス燃料化事業廃止 10年間の負担19億円超-白老
2018/12/15配信https://www.tomamin.co.jp/news/area2/15299/
白老町が来年3月末で事業廃止の方針を打ち出したバイオマス燃料化施設について、事業廃止に伴う国への交付金返還や起債償還、今後の新たに生じるごみ処理費用や施設維持費などを合わせた10年間の町の負担総額は19億8800万円に上り、この間の事業収支は10億6809万円の赤字になることも明らかになった。戸田安彦町長は「結果として事業は失敗」「町民に説明した上でどんな責任の取り方をするのか考えたい」と述べた。
13日の町議会定例会の一般質問で、前田博之氏(きずな)が、2009~18年度の事業の収支状況や民間事業者へ事業譲渡できなかった場合の施設解体費用、再稼働に向けた施設維持費、事業廃止に伴うごみ処理費用などについて説明を求めた。(中略)
前田氏は、多額の税金を投じたにもかかわらず事業が失敗に終わった結果責任をただした。戸田町長は「町民、議会に負担をかけた施設になった。結果として事業は失敗」と答弁。年明けに町民説明会を行い、事業廃止に至った経緯などを説明することとしており、戸田町長は「重大な責任は私にある。町民に説明した上でどんな責任の取り方をするのか考えたい」と話した。
同施設は、家庭ごみなど一般廃棄物を高温高圧処理して固形燃料化する施設として総事業費14億円を掛けて整備し、09年4月に稼働開始。年間1万1000トンの固形燃料を生産する計画だったが、原料の塩素濃度が基準を超過。品質改善に向けた機能改善工事も行ったが、生産量は目標の半分程度となり14年4月に高温高圧機を停止させ事業を縮小した。こうした状況の中、昨年5月の会計検査院による実地検査の結果、交付金で整備した高温高圧機が稼働していないことが補助目的未達成と判断され、交付金の返還を求められていることから、町は来年3月末での事業廃止方針を表明していた。
もちろん、これは決して白老町が言い出した事業ではありません。下の2008年の記事を見ると、国の「ごみ処理広域化計画」に乗り遅れた企業や学者が、実験段階にある新技術を小さな自治体に売り込んだことがわかります。おまけに施設は日本製紙の工場の中に建設するという異例・・・こりゃいったい何だ?
可燃ごみ98%燃料化 白老町がバイオマス施設を今夏建設 新技術の実証成功
20080511北海道新聞
胆振管内白老町は今夏、日本製紙白老工場内に可燃ごみの98%を固形燃料化することができる「バイオマス燃料化施設」を建設する。高温高圧でごみを処理する新技術を導入、町内で発生する可燃ごみ全量の処理が可能で、年間一万一千トンの燃料を製造し、同工場に売却する。来年四月から稼働の予定で、道も「安全性の高いバイオマス燃料化事業のモデルケース」(環境生活部循環型社会推進課)と注目している。新技術は、可燃ごみを最大三〇気圧、二三五度で加圧・加熱処理して、炭になる一歩手前の状態に変える。同町と北大、クボタ環境サービス(東京)などが連携して開発を進めていた。昨年十二月から始めた実験プラントでの実証実験では、約十五トンのごみから燃料約七トンを生成した。ペレット状にした燃料は一グラム当たり五千五百カロリー以上の熱量があり、重油や石炭より低いが、「ボイラー燃料としては高い水準」(関係者)を確保した。 可燃ごみの燃料化は、従来の製造法では工程が複雑で、発酵ガスによる爆発事故や燃料の品質が一定でないなどの問題が発生していた。新技術はごみを分子レベルで炭化状態にするため、原材料を問わず約五時間で均質な燃料ができる。発酵ガスの発生もなく、ごみに混入した不燃物などを除き、ほぼ完全に燃料化できるという。新施設は総事業費約十四億円。年間約六千五百トンのごみに木くずや廃プラスチックを加えて計一万一千トンを日本製紙にボイラー燃料として売却する。また、同社からこの燃料で生産した電力と蒸気の供給を受け、ごみの加熱・加圧工程で活用するエネルギーリサイクルも行う。 燃料の売却価格は今後の交渉次第だが、新施設の稼働により、同町の年間ごみ処理費用約三億六千万円(二〇〇六年度)は今後十五年間で八億円程度削減される見込み。さらに、最終的に埋め立て処分されるごみも、現状の四割に減るという。 白老町の飴谷長蔵町長は「循環型社会の実現を推進する取り組み。廃棄物処分場が使える期間が大幅に延びる」と利点を強調している。
かくて、ごみの全量処理も、「燃料」製造も、それを売って町の収入にすることも、すべて失敗。安全性についても、プラスチックを含めた有機ゴミを高圧高熱で処理すれば大量の有害ガスが生成されるのは常識だから、相当な環境汚染も発生していたはずです。白老町については白老町の広域参加 | WONDERFUL WORLD(2017年5月)でも書きましたが、どうもだまされやすい自治体のよう。なお、白老町に限らず、職員のレベルが低く、なのに傲慢という自治体は企業につけこまれやすいので注意しましょう。
しかも白老町にとって不幸なことに、町が参加を検討していた西いぶり広域連合のゴミ処理施設は、あいつぐ火災で瀕死の状況なのよね・・・なお、火災の様子はyutubeにもあがっています。
メルトタワー火災修繕に2790万円、分別徹底訴え【室 …
2018/08/2 4www.hokkaido-nl.jp/article/7429 西胆振地域廃棄物広域処理施設「メルトタワー21」(室蘭市石川町)で今年火災が5回相次ぎ発生した問題で、機器の修繕費が約2790万円に上ることが分かった。粗大・可燃ごみクレーンに大きな損傷を受けていたことも判明。施設を運営する西いぶり広域連合は「適切な分別を」と呼び掛けていく考えだ。広域連合と室蘭市消防本部によると、メルトタワーでは4月23日の不燃物をためる「不燃粗大ごみピット」で鎮火まで16時間を要した火災を皮切りに、5月1日に最終処分場仮置きごみ場で煙が上がった。また、6月には3回連続して火災が起きた。19日は可燃ごみを一時的にためる「貯蔵ピット」から火の手が上がり、次いで23日に不燃粗大ごみを細かくする粉砕機とそのごみを搬送するコンベヤーでぼやが発生。27日には粗大鉄の一時保管ヤードで起きた。火災の影響で、修繕費は当初の見積もりに比べ約300万円増えた。施設内の粗大・可燃ごみの両クレーンのほか、操作室のガラスやバグフィルター(ろ布)が損傷した。このほか、破砕装置、ごみピットの電動シャッター、火災報知器、屋内消火栓、プラットホーム、送風機の計11の機器類に修繕が必要な事態となった。 (後略)
火が出たのはいずれも貯蔵ピットや保管ヤードなど、そして五件の火災のうち四件までが原因不明であることを考えると、怖くて使い続けられません。これは、大量のごみを集めて巨大焼却炉で処理するという、「ごみ処理広域化」がどれほど間違った処理法であるか示しています。そして、自治体からごみ処理の権限を奪い、RDFを含めたこの広域化計画を押し付けたのは環境省と、その背後にうごめいている廃棄物業界だから、「失敗」の責任を負うべきは焼却炉メーカー、無責任学者、そして環境省ですが、裁判所は企業の味方だし、自治体側も及び腰(裏金をもらっていればなおさら)。ここは市民がしっかり事件を追究するしかないでしょう。2018.12.16