9月末、私が参加しているGAIA(http://no-burn.org)のMLに、イタリアのメンバーからこういうニュースが届きました。講演で、時々、パルマのことに触れることがありますが、まさにそのパルマを擁する地域のごみ問題のことです
「エミリア・ロマーニャ州は、古い焼却炉を閉鎖し、新しい焼却炉の建設を中断(モラトリア)することを決定した。この変化をもたらしたのは、焼却に反対を唱えて当選した新しいパルマ市の市長だ。彼は冷温前処理工程(MBT)方式のごみ処理を採用しようとし、焼却炉の段階的廃止を検討している同地に、大きな影響をもたらしている。二年ほど前、私たちの仲間が、当時のパルマ市長に対し、焼却炉を止めてほしいと手紙を出してくれるよう頼んだことを思い出す人もいるだろう。そういう活動や、ごみゼロを提唱する地域グループのおかげで、イタリアにおける焼却炉の波は引き始めているんだ!」
私が一番よく通った国がイタリア。エミリア・ロマーニャはイタリア東北部の州で、バルサミコ酢、パルメザンチーズ、パンチェッタ、ランブルスコの赤などおいしいものの産地として有名ですが、そこが脱焼却炉宣言したようなものですね。すばらしい。。
実は同地の焼却炉の隣接地では、。また、1998年ー2006年の調査によると、「平均値―高濃度に汚染された場所に住む女性から生まれた子どもたちは、先天異常の発生率が対象群と比べてかなり高かったのです。(「市の焼却炉周辺における先天異常のリスク:地図データ情報を用いて」http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2652434/
もっとも、論文そのものの結論は、主要な先天性欠損症と有害物質への暴露量との関係は見出せなかったとしています。「異常の発生は認めるが、因果関係は見出せなかった」というのは、研究費をばっさり切られたくない学者が訴え勝ちな論法。
でも、研究費が必要な学者と違って、市民は遠慮がありません。焼却炉問題はパルマ市長選の大きな争点になり、この問題だけで大きな公開討論会が開催される騒ぎになりました。以下はその討論会を目撃したBeppe Grillo’s Blogから超簡約。
「焼却炉で人が死ぬ。これは医師たちも認めている。焼却炉の周辺では腫瘍の患者が増えているという証拠が出ている。パルマのような食糧生産地で、大気や農産物の上にダイオキシンを振りまく焼却炉を建てたいなんていう市長(候補者)に、何が期待できる?」
「ヴィンセンゾ候補は、無条件でYESと答えたが、焼却炉にどんなメリットがあるのか言えず、有毒な焼却灰をどこにもって行くのかという問いにも答えられず、焼却炉なしでやっていけるという主張にも反論できなかった」
「ベルナッゾーリ候補は健康被害を否定し、施設は安全だと述べた。しかし、エミリア・ロマーニャ医師会Federazione Ordine Medici Emilia Romagna は、建設の一時停止を求めているし、MONITERという組織は、新施設を作らないようアドバイスしている。古い施設はテロリズムとしかいえないくらいなのに、彼は医師たちの深刻な懸念を無視しているのだ」
「焼却炉があると、我々はごみから逃れられなくなるし、焼却炉がなければ不要なコストも負わなければならない。
「焼却炉で失敗したピッツァロッティの原状回復のためには、オランダの企業、Multiutilityが提案している、焼却炉なしのごみ処理案を受け入れるはずだ」
「イタリアでは、レッジョ・エミリア、シシリー、ルッカ州が焼却炉なしのソリューションに向けて動いている。ヨーロッパは2020年から、リサイクルできるもの、コンポストできるものの焼却を禁止する方向だ」
資源の問題、汚染の問題、そして社会制度の問題・・・ごみの焼却処理がもたらすのは社会的な負のコストです。イタリアはそこから一歩抜け出そうとしているのか・・・・・・日本でも、これに倣う自治体が一つでも出てきてほしいもんです。2012.10.12
焼却炉よさらば(イタリア)
この記事を書いた人
山本節子
調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
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