明日から岐阜県土岐市で重水素実験、中性子にご用心

 いよいよ明日(2017年3月7日)から、核融合科学研究所が、大型ヘリカル装置(LHD)で重水素実験を開始します。現場に集められた多数の発電装置を使って、太陽よりはるかに高温のプラズマを作り出すのですが、核融研によれば、「 プラズマの性能を向上させることが目的で、核融合反応を起す実験ではありません」とのこと。(重水素実験の目的 – 核融合科学研究所以下同じ)

 ところが、実際は「使用した重水素ガスの最大でも1万分の1の割合で核融合反応が起こり、放射性物質(トリチウム)と放射線(中性子)が発生します」と、割合はどうでも、この実験はトリチウムと中性子を発生させる「核融合実験」だついうことをちゃんと認めているのです。また、この実験によって施設は「放射化」するため、電離則(電離放射線障害防止規則)対象施設となり、そこで働く人々は、それなりの「被ばく防止対策が」必要な被ばく労働者になるわけ。でも、周辺住民にはそのような配慮などなく、それどころか、まともな説明会さえ行われていません。

 また、実験で使う重水素は「 水素の同位体、天然にも存在し、無害 」とありますが、これはウソ。重水素は水(軽水)の同位体、日常的に重水素に暴露していたり、摂取すると、水の分子と置き換わって毒性を発揮し、神経系や肝臓に悪影響を及ぼし、細胞レベルでは、細胞分裂や細胞膜に影響し、不妊をもたらすそう。http://www.pbs.org/wgbh/nova/hydro/water.html 歴史的にも「闇」の濃い物質で、無害だなんてとても言えません。

 トリチウムも水の同位体で、こちらは放射性物質ですが、核融合研は、ガス化したものは大気中に排出し、水分はアイソトープ協会に処理を委託するそうですが、その処理法については関与しないとのこと。

「発生するトリチウムは僅か(21回のプラズマ生成で4百万分の1グラム、放射性物質として扱う必要がない)ですが、トリチウム除去装置を通し、重水素と一緒に水の形で回収し、日本アイソトープ協会に処理を依頼します」

「除去しきれなかった分は、研究所の管理値(0.0002ベクレル/cc、法令*3の25分の1)以下であることを確認して、排気塔から放出します。その影響は、研究所の門衛所のところにずっと立っていても、体内に元々あるトリチウムの15分の1以下です」

 最も危険だと思われる中性子については;

中性子は、建物の2m厚のコンクリート壁で遮へいして1千万分の1に減衰させるため、外部へ漏えいすることはありません。 なお、トリチウムと中性子が発生するのはプラズマがついている時だけで、プラズマが消えると即座に発生は止まります」

「プラズマとは、希薄な気体が高温になった状態です。真空状態で生成されるため、原理的に爆発することはなく、装置が損傷すると空気が入って即座に消えてしまいます。高温ですが、希薄なので、周りの壁を溶かす力はなく、簡単に、瞬時にプラズマを消すことができます」

 私の取材に対しても、炉内で発生する核種は外には漏れない、中性子で炉壁が劣化することはない、と「核による金属の脆化」を決して認めようとしませんでした。さらに突っ込むと、「それは科学ではない」だから手に負えない。

 でもね、同じ科学者であり、ノーベル賞学者の小柴昌俊さん(素粒子物理学)は、2001年、朝日新聞の「論壇」に、「核融合炉の誘致は危険で無駄」という投稿をされているんですよ。以下はその一部。

(核融合が)もし実現すれば、核分裂反応からエネルギーを取り出す普通の原子力発電と比べ安全対策が容易で放射性廃棄物も格段に少ないといわれている。しかし、物理学を学んできた筆者から見ると、核融合発電には致命的ともいえる欠陥がある。この欠陥が国民に十分に知らされないまま、誘致の方向が決まろうとしていることに強い憤りを感じる。重水素と三重水素を融合させようというのがイータ一計画だが、そのとき高速中性子が大量に出る。これら高速中性子は減速されないまま真空容器の壁を直撃する。この際起こる壁の放射線損傷は、われわれの経験したことのない強烈なものになることは疑いない。普通の原発であれば、飛び出た中性子は周りにある減速剤によって減速されるから、こうした問題は起こらない。

かつて、イータ一計画関係者に、壁の放射線損傷をどうするのか尋ねたことがある、すると、6ヵ月で取り換えられるように壁も設計されているという返事が返ってきた。それなら、これによる稼働率の大幅な低下、コスト上昇はどうするのか、それより何よりそんなに大量に出る放射性廃棄物をどう処理するのか問いただしたが、ついに納得のいく返事を得られなかった。この計画の最初の主唱者であった米国が、この十年近くの経済の好況にもかかわらず、いちはやく撤退してしまった理由はこの辺にあったのではなかろうか。新しいエネルギー源を核融合に求めようというなら、壁を損傷する高遠中性子が出ない別の反応を取り上げるべきだろう。例えば、ヘリウム3と重水素、あるいは重水素と水素二個の三体反応などがありうる。これらの実現には更に高い温度と密度を必要とするから、発想を大きく転換してかからなければならないだろう。どちらにしても、イーターをいま造ることは単なる税金の無駄遣いにしかならないのではないか。国民のお金を使うのに、消費型と投資型とがある。投資型がすべて無駄遣いであるというつもりはない。将来に向けて必要な投資は、しなければならない。ただ、巨額になることが多いのだから、その計画の弱点も含めて国民に知らしめてから判断を仰ぐべきだと思う。=投稿」

 

 かくて、「致命的欠陥」をかかえたまま、明日から実験が始まるわけ。近隣の方、特にお子さんが小さい場合、避難も視野に入れておかれた方がいいかも。自治体は止めてくれないから。2017.3.6

 

 

 

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/