放射能をめぐる二つの自治体の態度

 地元自治体の「権限」に関する、二つの対照的なニュースが入っています。

静岡県知事、浜岡原発のプルサーマル「白紙」 導入には了承必要

2014/4/7
21:13
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF0700K_X00C14A4PP8000/


 静岡県の川勝平太知事は7日の記者会見で、中部電力が浜岡原子力発電所4号機(静岡県御前崎市)で計画する「プルサーマル発電」について「白紙に戻っている」と述べ、同発電を導入する際には、再び県や地元自治体の了承を得る必要があるとの認識を示した。同発電は使用済み核燃料などから取り出したプルトニウムをウランと混ぜ、本来はウランだけを燃料とする通常の原発で燃やして発電する。浜岡原発4号機については、石川嘉延前知事と御前崎市など地元自治体が2008年、計画を了承した。ただ中部電は2月に4号機の安全審査を原子力規制委員会に申請したばかりで、再稼働のめどは立っていない。川勝知事はまた、中部電が東日本大震災後に着工時期を未定とした6号機の新設計画についても「白紙で無期限延期に近い」との認識を示した。

 OKを出してしまった地元自治体に代わって、広域自治体の長が「のー」を宣言するという珍しいケース(似た事例が新潟県)。川勝氏はがれき広域処理の「絆」チーム(=汚染拡散組)、でも、まだ良識は残っていたのか。次は、地元の住民が有効に動いて、関係市町村に圧力をかけないとね。

 下は、住民より地元自治体の経済発展を優先した自治体のニュース。

避難解除地区に仮設商業施設 福島・田村市で開業

2014/4/6
23:56
http://www.nikkei.com/article/DGXNZO69480200W4A400C1CR8000/

 東京電力福島第1原子力発電所事故に伴う避難指示が1日に解除された福島県田村市の都路地区に6日、仮設の商業施設「Domo(どーも)」2店舗がオープンした。地区内の商店はいまだに大半が休業中で、さっそく多くの住民が買い物に訪れた。Domoは住民帰還を後押しするため、国や市が地元商店と協力して整備。開店前には関係者がテープカットを行い、冨塚市長が「にぎわい、絆が生まれると期待している。温かく支えて」と呼びかけた。(中略)Domoは施設を国や市が整備し、商品を地元の商店が提供する公設民営方式で、生鮮食料品や生活用品を扱う。古道店には飲食・交流のためのスペースもある。

 田村市長の方は、「どうしても帰りたい」という高齢者の声を理由に、「もう汚染はないよ~、安心して生活できる施設を整えてあげたから、帰っておいで~」だって。でも、この地区では、効果が望めないところから除染も中止されているくらいなのです。そこに帰って生活するというのは、まさに汚染地における生活実験。「絆」とは逃れられない軛のことですね。

避難指示、4月1日解除へ  福島・田村、旧警戒区域初  除染は打ち切り方針http://www.47news.jp/47topics/e/250626.php

 政府と市、住民が23日、田村市内で協議。住民からは「早く自宅に戻りたい」と避難指示解除を求める意見が出た一方、放射線量や健康への不安から反対の声も上がったが、原子力災害現地対策本部長を務める経済産業省の赤羽一嘉副大臣が「4月1日解除」を表明し、協議は終了した。協議の中で、政府は「除染で放射線量が下がった」とした上で「除染を繰り返しても効果は限定的なので、再度一律に面的に実施することはしない」と、事実上の打ち切りを表明。放射線量のモニタリングや、線量が高い場所の土壌の除去などは続けると説明した。旧警戒区域では国が除染を行うことになっており、都路地区では昨年6月、国が決めた範囲の除染は終了している。避難指示解除準備区域は、日中しか滞在できず、夜は避難先に戻らなければならないが、都路地区は昨年8月から特例として夜間も過ごすことが認められている。 政府 と市は昨年10月に「11月1日解除」を住民に提案したが、放射線への不安などから反発が強く、いったん取り下げていた。 冨塚宥瓊暻市長もこれまで「4月1日の避難指示解除が望ましい」との考えを表明していた。

■ 健康不安、今も消えず 除染効果も不透明 

 福島県田村市都路地区の避難指示が、旧警戒区域として初めて解除されることになったが、放射線量や除染、健康面への住民の不安は消えていない。「『線量が高い』と言っている人の声を、ないがしろにしないでほしい」。23日、田村市内で開かれた協議会で、都路地区の住民の一人が声を上げた。都路地区は現在、年間被ばく放射線量が20ミリシーベルト以下の「避難指示解除準備区域」に含まれる。政府は、除染の長期的な目標として、通常の被ばく限度とされる年間1ミリシーベルトを掲げているが、今回「効果があった」と住民に示した結果でも、住宅や農地、森林のいずれも年間1ミリシーベルトに当たる数値までは下がっていない。しかも「100%終了」としている森林は、国が「住宅や道路など生活圏から20メートルまで」と線引きした範囲内の結果。広大な森林全体は、除染するかどうかも含め、方針が全く決まっていない。政府は避難指示を解除する理由を「戻りたいと考えている住民の帰還を可能にするため。解除したからといって、帰還を強制するものではない」と説明した。(中略)

 住民の関心は健康不安にとどまらない。文部科学省の原子力損害賠償紛争審査会は昨年12月にまとめた指針で、精神的損害への慰謝料(1人月額10万円)を避難指示解除後1年で打ち切るとした。都路地区が初の適用になる。政府は、解除後1年以内に戻る住民に対し、1人当たり90万円を追加で支払う方針だが、それによって帰還が進むかどうかは不透明だ。(共同通信)

 強制ではないと言いつつ、一年以内に帰れば一人あたり90万円出す、と言われれば、経済的に不安定な住民はフラフラっときます。ほんとなら、避難先で安定した職業と住宅を保障しなければならないのに、カネでつるとはなんと汚い。しかも、最近の記事にはほとんど出てきませんが、田村市は産業界と政府の指定廃棄物処理計画の予定地であることを思い出さなければなりません。2014.4.10

(本ブログ参考)

除染廃棄物も燃やす、環境省の狂気 | WONDERFUL WORLD(2012年08月21日)2013年07月16日の記事 | WONDERFUL WORLD(他にもあるぞ、福島の指定廃棄物焼却炉計画)

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/