平穏な地域を乱す再エネ事業

 昨日の続き。TBSはシーテックの方から署に出向いていた、と報道していたので、ん?と思いました。普通、呼ばれもしないのに警察にのこのこ出向くはず、ないじゃない。

岐阜県警、風力発電計画めぐり反対派住民の個人情報を漏えい  24日13:37)http://news.tbs.co.jp/20140724/newseye/tbs_newseye2257819.html  

   (前略)シーテックによりますと、去年8月から先月まで4回にわたり、担当者が概要説明のため岐阜県警大垣署を訪問、警察側から建設に反対する住民ら6人の氏名や年齢、職業などを聞いたうえ、連携を警戒するようアドバイスされたということです。シーテックはこれらの個人情報を社内文書に記録していて、「情報は有益だったが、当社から情報提供を促したわけではない」と話しています…

 で、調べると、中日新聞がこの件を追っていました。長いけど、リアル。実名入り。驚いたのは、この事業で42ヘクタールの森林が裸にされること(一部は残すでしょうが)ただでさえ山の多い岐阜県、自然災害が懸念されるし、自治会らの反対はごく当たり前ですが、警察はその反対を「治安を乱す」ととらえていたのです。(強調山本)

岐阜県警、個人情報漏えい 風力発電めぐり

 岐阜県大垣市上石津町と関ケ原町の山林で中部電力子会社のシーテック(名古屋市)が計画している風力発電事業をめぐり、大垣署が、事業に反対する地元住民や市民運動家、法律事務所関係者の学歴、病歴などの個人情報をシーテックに漏らしていたことが、同社への取材で分かった。県警は、妥当な情報伝達だったかどうかを調べる。

 シーテックの環境影響評価方法書によると、2015年度から山林42ヘクタールに高さ120~130メートルの風力発電施設を16基建てる計画。大垣市上石津町の上鍛治屋自治会は健康や生態系に影響が出る恐れがあると反対しており、事業中止を求める嘆願書を5月に県と市に提出した。シーテックによると、大垣署から昨年夏に中電岐阜支店を介して事業の情報提供を求める依頼があり、今年6月まで4回会合をした。そのやりとりを残したメモによると、1回目は昨年8月7日。担当の社員が大垣署を訪れて警備課の署員らと面会した。

 署員らは「自然破壊につながることに敏感に反対する人物」などとして上鍛治屋自治会を含む地元住民や市民運動家の個人名を挙げ「大垣市内にいる」「60歳を過ぎている」「東大を中退」といった個人情報を把握していると説明した。「平穏な大垣市を維持したいので協力を願いたい」と今後の情報交換も依頼した。その後の面会でも、署側は住民らの実名を挙げて「反対活動に本腰を入れそう」といった情報を同社に流したり、運動の広がりへの懸念を伝えたりした。

 これに対し、大垣市の市民運動家の近藤ゆり子さん(65)は「市民の安全を守るはずの警察が市民を監視する組織となり、情報を私企業の意向に沿う形で提供したことに怒りを禁じ得ない」と話した。シーテック総務部は「警察などに事業計画の説明をする中で、さまざま情報交換をすることはある」とした上で「個人情報が外に出たことは問題だった」とコメント。大垣署の牧村康弘副署長は「治安維持のために必要な情報収集はしており、必要ならば企業と共有することもあり得る。個別のケースについては答えられない」、県警の菊沢信夫警務部長は「事実関係を調査中」としている。(中日新聞) 

 どの地域でも、平穏を乱しているのは再エネ事業の方ですが、警察は100%企業の味方。住民を黙らせるために、企業に情報提供を「強要」し個人情報を違法に収集し、第三者へ提供したんだから、明らかに違法行為です。ま、警察が企業を呼びつけて「依頼」するとは、強要という意味…権力をバックにしているんだから、一企業は断れません。裏には、国(経産省)→岐阜県の圧力もあるはず。もっとも、シーテックだって「受益者」だし、国策会社、喜んでこれに応じたでしょうけどね。

   彼らの過ちは、情報を隠し通せなかった、という点のみ。実際は、あらゆる公害事業において、国・自治体・企業は、反対派市民の詳細なリストを持っています。住基ネットが導入され、いつのまにか「名寄せ」が当たり前になったこと、市民がネット社会に警戒を持たなくなったことから、国の情報収集の能力はうんとあがっているため。詳しくは、拙著『大量監視社会』大量監視社会 – 築地書館ウェブサイトを読んでください。この本は、市民運動家に向けた警鐘として書いたものです。2014.7.25

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/