南京だより 新しい隣人③ 人のせい
さて前回は、隣人の母娘のうち、いつもは何を言っても怒鳴る母親が、珍しく下手に出たという話でした。そのわけは、翌日わかりました。
朝、彼女がねこなで声で「忙しくなければ、今日、洗濯機を使いたい」というのです。
「洗濯機? 不動産屋に相談した?」
とたんにどなり声です。
「言ったよ。そしたら今あるのを使わせてもらえ、とさ。契約書にはちゃんと洗濯機と書いてあるんだよ」
「残念だけど、この洗濯機は私が買ったものよ、だから私の契約書には書いてないの」
「でも、私らの権利は守られるべきだ」
「それは不動産屋に言いなさい。私には関係ない。だめなら自分で買うのね」
こうして私は彼女たちが私物の洗濯機を使うのを拒否しました。
お断りしておきますが、私は普段、決してこんな意地悪な人間ではありません。
この部屋に住み始めた時から洗濯機はありませんでした。以前の同室者が調達してくれた古い洗濯機は故障続きで使えず、ついにあきらめに新しいのを買ったのです。
最初は、彼らにも使わせていました。もちろんこれが私物であるということを伝えて。
ところが、彼女は一回あたり2時間ほども洗濯機にはりつき(私の部屋のバルコニールーム)、その間、大量の水を流しっぱなし。勉強どころではないので、居間に移してもらいました。でも居間にはホース接続ができず、水を手で汲まなければなりません。それで元の場所に戻すように言うと、「後で」とやってくれません。仕方なく自分で戻しました。
それでも、人間関係がよければ、なんとか共用していたでしょう。
私が腹を立てたのは、悪いことを全部人のせいにするという彼女たちの態度でした。
彼女たちと食事の支度がぶつかるので、私は最近ほとんど外食しています。家で作るのは週2回ほど、ごく簡単な料理だけ。一方、母親は毎日3回、朝から盛大に油を使っています。台所には雑巾というものがなく、使用後の汚らしさといったら。
ある日、お昼に戻り、食事でも作ろうかと台所に行ったら、床がなぜか水びたしです。
すぐに母娘の部屋のドアをたたき、「使った後、掃除しなさいよ」というと、
「あんたは何時間使った?」と聞くのです。
よく聞くと、使った時間に応じt掃除をしようといっているのでした。
「何言ってるの! 使ったつど掃除するのは当たり前だろうが」
・・・でも、この常識が、彼女たちには通じません。
娘のシャワーの後、長い髪がたくさん落ちているのを指差し、穏やかに「使ったつど掃除しましょうね」と言ったことがありました。とたんに母親が飛んできて叫びます。部屋に戻った私の耳に、「彼女に掃除させればいいんだ、これはこうして」などと聞こえました。髪を床の排水溝に流したのです。後でそれを取り除きながら、さすがにげんなりしました。善意もアドバイスも通用しない連中だということを認めざるを得なかったからです。
その日、私は「洗濯機は使わないで」と言ったのでした。
彼女の「使わせて」という言葉は、それから十日ほどたってからのこと。
これは彼女たちの「生態」のごく一部で、他の事例はきりがありません。昨日(11月21日)は、突然ヒューズが飛んで停電しました。彼女が排煙機のスイッチをいれたとたんなのですが、彼女は反対に、私が使っていた湯沸かし器のせいだというのです。幸い修理屋が、原因はやはり油がこびりついた排煙機の故障だと断言して一件落着。費用は彼女に払わせました。
こうして私の毎日は、次に何がおきるかわからない隣人との緊張関係の中で続いています。
精神的につらくないか? いいえ、期待しているところもあるのですが。
(2008.11.22)