北海道大地震、全域停電のほんとのわけは?

 9月4日上陸した台風21号の被災者、そして9月6日に北海道を襲った震度6強の地震の被災者のみなさまにお見舞い申し上げます。まだサバイバル途中の方、とにかくまず自分と家族の生命が確保できますように。

 私は愛用のPCが壊れ、データ確保にあたふたしていてフォローが遅れましたが、この二つの隣接した「災害」と、それがもたらした被害には疑問をもたずにいられません。関西(台風被害)では関空が、北海道(地震被害)では千歳空港と電力施設という、地域経済の中心的施設が壊滅的打撃を受け、今後の地域経済が落ち込むことが予想されています。ま~、関空は海上の人工地盤の上にできたもの、いつかこういうことが起こるかもしれないという指摘は以前からあったのですが、あの阪神大地震ではせいぜいクラックができただけで、比較的早く再開されたと記憶しています。

 でも北海道の全域停電には驚きました。下はNHKの報道。

 

 北海道内の全域 295万戸で停電

201896 648分 北海道電力によりますと、この地震の影響で道内の全域、およそ295万戸が停電しているということです。地震の揺れにより、道内にあるすべての火力発電所が緊急停止し、発電量と使用量のバランスが崩れたため、電気の周波数が乱れてしまったことが原因だということです。このため、北海道電力は水力発電所を稼働して、停止した火力発電所に電力を送り、火力発電所の運転を再開したいとしていますが、復旧の時期は見通せていないということです

 「周波数の乱れで停電が起きた」そうですが、日経新聞も同じような論調。、

 …今回の大規模な停電は「電力の需給バランスが崩れた」ことが原因とされる。需給バランスが崩れると、なぜこうした事態が起こるのか。北電は道内の火力発電所が地震により緊急停止したことが原因としている。震源の近くに位置し、石炭を燃料とする苫東厚真発電所(厚真町)は、6日未明に全号機が運転中だったが地震により緊急停止した。同発電所は165万キロワットの発電能力を持ち、地震発生当時は北海道の使用電力の半分を供給していた道内最大の火力発電所だ。この発電所の停止が大きく影響し、連鎖的に道内の火力発電所も停止した。https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35045160W8A900C1000000/

 

 この記事では、地震の揺れで施設が緊急停止したとありますが、その後、記者会見した菅官房長官は「設備の損壊が見つかった」・・・施設がストップした原因は、「揺れ」だったのか、それとも「損壊」だったのかはっきりしません。

 また北電は、北海道全域の電力需給を一元的に調整していたようなことが書いてあります;

 「…電力は常に需要と供給が同量にならなければ「周波数」が安定せず、最悪の場合は大規模な停電が起きる。家庭などに送られる電気はプラスとマイナスが常に入れ替わっており、その入れ替わる回数を周波数と呼ぶ。この周波数を一定に保つには電力の発電量と使用量を一致させる必要があり、これが乱れると発電機や電気を使用する機器が壊れる可能性がある。電力会社は常に需要と供給が一致するように発電能力を調整して運用している。北電は北海道全域でこうした調整をしている。今回は大規模な火力発電所が停止したことで電力の供給量が大きく減少したことから、連鎖的に発電所を停止させた。」出典:同上

 

 普通、電力は系統ごとに独立させて、広域の停電を避けるようなシステムになっていたのではなかったか? それに、どの記事を見ても、結局は石炭火力停止が停電の原因なのはあきらかです。でも、北海道の行政や市民は(一部ですが)は、なぜか石炭火力が大嫌い。で、2017年から石炭火力を停止し始めていたから、何かの拍子に厚真がダウンすると、広域の停電が起きてもすぐには復旧できないのはわかっていたはず。今回は、そのいくつかを再稼働しようとしているんだけどね。

発電所名

使用燃料

総出力

運転開始

所在地

備考

砂川発電所

石炭

25kW

19776

北海道砂川市

12号機は廃止。

奈井江発電所

石炭

35kW

19685

北海道空知郡奈井江町

20193月休止予定[1]

苫小牧発電所*

重油原油天然ガス軽油

25kW

197311

北海道苫小牧市

283DE(緊急設置電源)201710月に廃止。

伊達発電所

重油

70kW

197811

北海道伊達市

苫東厚真発電所

石炭

165kW

198010

北海道勇払郡厚真町

3号機は廃止。

知内発電所

重油、オリマルジョン

70kW

198312

北海道上磯郡知内町

石狩湾新港発電所

LNG

kW

北海道小樽市

3基(CC方式、170.82kW予定)計画中。

音別発電所

軽油

14.8kW

19785

北海道釧路市

ガスタービン発電方式。20192月に廃止予定。[1]

 

 ところで、北海道といえば、東北と並ぶ風力のメッカ。特に人口が少なく風が強い海岸地方が狙われています・・・それも宗谷岬とか原生花園など観光地だというのが悔しい。今回の地震ではその風発に何が起きたかはまったく伝えられていませんが、その電力系統が既存の電力系統と統一されていたとしたら、それが大規模停電のきっかけになったかも。

 それには前例があります。2016年、南オーストラリア州を襲った大規模停電の原因は、石炭火力ではなく、風車が春の嵐で一斉に停止したことでした。その停電の影響は今も尾を引き、風車設置による電気代アップもあって、多くの産業が続々とこの土地を脱出し(今も)、政権をゆるがす事態になっています。今回の停電の記事を読むと、北海道でおきたことも南オーストラリアでおきたこととまったく同じではないかと感じるのですけどね~~ 尚、オーストラリアの教訓は、「風車やソーラーが増えると停電が増え、電気料金はあがり、企業は逃げ出す」ということ。でも、日本にはそういう話は入っていないようですね。

 ともあれ、この地震が、北海道最大の石炭火力厚真発電所がある地域を直撃したのは、とても偶然とは思えません。関空と同様、今後の「再エネ」の動きには十分ご注意を。2018.9.6

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/