処分場新設断念、で、次はどこに?

  政府は、 8000Bq/kg以上の放射性廃棄物 (指定廃棄物)のために新たな処分場を作るという計画をようやく断念したもよう・・・予想されたことですが。

政府、処分場新設を事実上断念へ 指定廃棄物の分散保管継続
2016
116
02:00 https://www.okinawatimes.co.jp/article.php?id=149973
 政府は
15日、東京電力福島第1原発事故で発生した指定廃棄物に関し、宮城など5県内の各市町村がごみ処理場や下水処理施設などで分散保管する方式を継続する方針を固めた。堅固なコンクリートで覆う処分場を5県に1カ所ずつ設置する計画は地元の反対が強いため、無理に調整を進めないことで事実上断念する東日本大震災から5年という節目を前に自治体が受け入れやすい現実的な対応が必要と判断した。環境省は、屋外の仮置き場を集約したり、屋根や壁を設置したりして対応する方針だが、地元からは安全面を懸念する声が強まりそうだ。(共同通信)

 だからって問題は解決したわけではないし、逆に今後はもっと見えにくくなるでしょう。 指定廃棄物の量は、昨年9月時点で約16万6千トン(うち福島県分約14万トン)、上の記事の5県(宮城、茨城、栃木、群馬、千葉)の分は約2万5
千トン(環境省 http://shiteihaiki.env.go.jp/radiological_contaminated_waste
/designated_waste/) 。
 しかし、政府が「最終処分地の候補地」に指定した地域では、どこも住民が強く反発しているため、次に打てる手は・・・「だまし」と「金目の解決」くらいしかないでしょう。もちろん、それに飛びつく地域も出てくるはずで、受け入れ交渉全体が、水面下に潜ることになる。反対住民たちは、すでにそういうことを経験しています。
 …住民は15日、反発、戸惑い、安堵など複雑な思いを交錯させた。「この3、4年は何だったのか」。登米市石越町にある一時保管施設近くに住む工藤初夫行政区長68は、保管が長引く状況にいら立ちを隠さない。「国、県、市を信頼して(汚染稲わらを)置くことに了承した。最初と言っていることが違うのではないか」と困惑した表情を浮かべた。栗原市の市民グ
ループ「放射能から子どもたちを守る栗原ネットワーク」の鈴木健三代表72は「分散保管を続ける方式が(自治体や住民に)了解される可能性があるのか」と批判。「処分場が(栗原に)来ないからいいという問題ではない。一時保管する周辺住民が負担をかぶるのは歓迎できない」と指摘した
<指定廃処分場>断念に一時保管地の住民困惑 (2016116)

 原発を導入するような国、ましてや事故を起こしたような政府を「信頼」したというのが大きな間違いなんですけどね。311以後は、ウソも隠蔽も業者寄りの態度も隠さなくなってきているから、今後も平気で裏工作を展開するでしょう。で、狙われるのは、九州でも北海道でも関係なく、民度が低かったり(「反対」を言い出せない)、高齢化が進んでいたり、大きな鉱山跡地があったり、企業城下町だったり、といった「弱いところ」。

 私の主張は、福島県内に無人区を作り、そこで指定廃棄物を一括処分・永久管理すべきというもの。現在、福島県分の14万トンは、富岡町のエコテックでの処理が決まっていますが(フクシマエコテッククリーンセンター 埋立処分計画案 … – 環境省)、他県の指定廃棄物だってフクイチ事故によって発生したものだから、それも受け入れてしかるべきでしょう。そうしないと、指定廃棄物は全土を「漂流」することになります。その一部はーー昨年の滋賀県の汚染チップ騒ぎが示すようにーー素知らぬ顔で公共事業に使われ、一部は一般のごみに混ぜられて焼却され、証拠隠滅がはかられるでしょう。だって、環境省の測定法では、煙突から出る放射能は測定できないし、環境省が最も好きな処理法は「減容化」なので。
 これに関する本ブログの記事:
樗木博一さんの動画紹介~国のインチキ測定法ではセシウムを検出できない … (2014/11/23) –
環境省の公害犯罪・・・独自測定を拒否する! | WONDERFUL …2013/08/24)

2016.1.17

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/