再エネ施設の撤去は、土地所有者の負担

質問:風発やソーラーなど、再エネ施設が老朽化し、破損し、使い物にならなくなったら、それを処理し、土地を回復する責任は誰にありますか? 答:土地所有者です。

  まさか、と思われるかもしれませんが、再エネ施設が不都合を起こし、事業者が二転三転などして責任の所在がわからなくなった場合、処理する責任が負わされるのは土地所有者です。オーストラリア、ニューサウスウェールズ州議会でも、まさに「再エネ処理の責任者」が議題になりました。以下、わかりにくいオージー英語のやり取りの、ホネの部分の簡訳です。

2024年2月22日NSW州議会、予算見積もりに関するSFF党の党首ボーサック議員に対する州首相クリス・ミンズ議員の答弁(議事録動画の一部)

ボーサック議員:風発やソーラーなど再エネ施設が耐用年数に達した場合、その廃止に政府はどのような対策を講じていますか?

州首相:それは土地利用変更の一環として考える必要がある。特に民間土地所有者にとってはそうです。政府は、再エネ施設の寿命後、土地修復の最終費用がいくらかを土地所有者が完全に把握できるように、計算ツールを公開した。再エネ施設に貸し出した土地から受け取る前払金は重要だが、土地所有者は全体像を知ることも重要だ。

ボルサック議員:すでに設置、運用されているプロジェクトのほとんどは、債券が支払われておらず、(撤去費用の)資金も確保されていないし、風発やソーラーの開発企業の多くも存在しない可能性がある。その場合、最終的に費用を負担しなければならないのは政府でしょうか?

ミンズ議員:いいえ。廃止・修復費用は、価格の一部であり、土地所有者に支払われた料金に反映されるのがベストです。そのため政府は、土地利用者に提供できる明確な情報として、計算ツールを提供している。

ボルサック議員:ソーラー開発者には(廃止・修復費用を約束する)債券の支払いを義務付けるべきだとお考えですか?

ミンズ議員:そうは思いません。その経済性はわかりませんが、土地所有者が、土地の賃貸料だけでなく廃止費用も含めた十分な報酬を受け取っていれば債券は必要ないかもしれない。

ボルサック議員: しかし、たとえ人々が使用料を受けていても、将来に備えた積立金がなければ、適切に撤去・修復できず、多くの風発やソーラーが廃墟となって、耕作可能な土地が失われるのではないでしょうか?

ミンズ議員: 重要なことは、土地の所有者が、廃止費用を含めた最終的なコストを完全に把握することです。債券は、伝統的に土地集約型の採掘事業に発行されてきましたが、風発やソーラー事業は、例えば露天掘りに比べても、土地への影響はそれほど破壊的ではない。なので、これを再エネ事業に適用すべきかどうか私はわかりません。

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 意味がわかりますかね~政府は、初めから「風発やソーラーの後始末」を事業者に負わせる気はなく、「処理に関する費用積み立て」さえ義務付けていなかった。事情は日本でも同じ。再エネ施設は、だいたい借地に建設されますが、事業者は許認可を得た後、その権利をすぐ別の事業者に転売したり、「(自己)破産」したりして、責任の所在をあやふやにする例が多くみられます。こうして、事業者と行政は、「遊休地を貸し出して小銭を稼ごう」と考える無恥な土地所有者に、何百万~何千万円もかかる再エネ撤去という後処理を押し付けようとしているわけ。

なお、電力供給事業は、もともと電力九社が行うべき「公共事業」ですが、その場合、主な発電施設の土地は「買収」しなければならず、その上物に不都合がおきれば、電力事業者の責任で処理しなければなりません。しかし、借地で行う「再エネ事業」は、いろんな制限や規制から免れているだけでなく、FIT(固定価格買い取り制度)という税金から、業者を太らせる上納金を得ている。この不自然で犯罪的な仕組みが、「再エネ」を暴走させ、ウラ社会さえ呼び寄せている理由です。

山本は前記事長崎県宇久島、4分の1がメガソーラーで埋まる …(2024年6月24日)でこう書きました。

 「再エネ」はすでに総崩れ段階に至っています。電力料金高騰とエネルギー不足、材料費高騰と材料不足、土地不足と資金不足、そして「再エネが十分な電力を生み出せない」という事実がバレて、世界中で中断、中止に至ったプロジェクトが増加しているのです(特に洋上風発)。次には、風雨にさらされ赤さびにまみれた大量の再エネ廃棄物をどうするかという問題が起きてくるでしょう。いえ、そうなったら、事業者も政治屋も必ず逃げます。そして廃棄物処理のつけを、納税者と現地住民に押し付けるはず。地元住民は、他の何をおいても、「廃棄物となった再エネ施設」の事業者による撤回を義務づける協定書くらいは結んでおかないと。撤回が遅れたら違約金を約束させ、その協定書を結ばない限り、着工を許さない、という形にすれば、事業の進行を止めることもできますよ。

…実際にこんな協定書を結んでいる事例もないでしょうが、たとえ協定があったとしても、事業者が「計画倒産」でもして逃げてしまったらどうなるの?という話。そうなったら、事業に資金提供した銀行や関連企業に責任を取らせる手がありますが、それは主に法廷闘争になり、住民には重い負担がかかります・・・おまけに日本の司法は完全腐敗状態。裁判所は、ちゅうちょなく強い方を勝たせる所だと知っておきましょう。

 でも、こういう「再エネ詐欺」を知っていれば、計画中のプロジェクトはまだつぶせます。ちなみに、このニュースが流れると、オーストラリアでは風発業者との契約を破棄する土地所有者があいついだとのこと。建設中なら、すぐに「将来」を視野に入れた交渉を始めるべき。そして、すでに建設・稼働中の場合、すでに「害がなされている」のだから、「住民」と「環境」「土地所有者」の権利を盾に、その停止・撤廃を求めるべきでしょう。あきらめることはないから。2024.8.14

この記事を書いた人

山本節子

調査報道ジャーナリスト・市民運動家。「ワクチン反対市民の会・代表」。
立命館大学英米文学科卒業。中国南京大学大学院歴史科修士課程卒業。
住民運動をベースに、法令や行政文書を読み込んで、自治体などを取材するという独自のスタイルで、土地開発や環境汚染、焼却場・処分場問題に取り込み、数々の迷惑施設事業を阻止して来た。2011年以降、福島原発汚染がれきの広域処理、再エネ、ワクチン、電磁波などもカバーしているが、昨年からはコロナ問題に全力で取り組み中。市民育成も手掛けている。著書「ごみを燃やす社会」「大量監視社会」等多数。
ブログ「WONDERFUL WORLD」https://wonderful-ww.jp/